■GAME1の悲劇から立ち直るための重要な勝利
4月12日・13日、ウィングアリーナ刈谷で行われた「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズン」のB1リーグ第31節。シーホース三河は長崎ヴェルカをホームに迎え、GAME1は86-91で敗戦。GAME2は83-78でリベンジを果たし、CS出場へ一歩近づいた。
GAME1は、三河にとって「悲劇」と表現するしかない。前半を終えて53-28と25点リードし、改修工事を終えたウィングアリーナ刈谷を祝うような最高のゲームとなるはずだった。ところが後半に追いつかれて、ホームの大観衆の前で長崎に大逆転を許してしまう。ライアン・リッチマンHCは最大27点リードからの逆転負けについて「こんなことが起こるのかと。悪夢のような試合だった」と話す。
「2年前、NBAのウィザーズでアシスタントコーチをやっていたとき、クリッパーズとの試合で35点差から逆転負けした経験があります。27点差をひっくり返されての逆転負けは、もちろんヘッドコーチとしては初めての経験です。今シーズンは(天皇杯2次ラウンドで)FE名古屋にハーフラインからブザービーターを決められて負けた試合がありました。きのうの試合(GAME1)もそう。こうしたタフな経験から学ぶことは常にあると考えています。私は、自分がすべての事象に対する答えを持っているとは思っていません。これからもヘッドコーチとして学び、向上していくことが大切です。今週末のゲームのことは忘れないでしょう」
大逆転負けを喫して、ファンのためにもCS出場のためにもGAME2は「絶対に負けられない」とプレッシャーを感じていたはず。GAME2は前日の試合とはまったく異なり、最後まで競った展開となる。4Qは1ポゼッション差の時間帯が続き、どちらに勝利が転んでもおかしくなかった。残り1分30秒で79-78と1点リード。ここから耐え抜いて83-78で勝利をつかみとった。オフェンスリバウンドとディフェンスでファイトし、改修後のウィングアリーナ刈谷で初勝利。試合後にリッチマンHCは「自分たちにとっては重要な週末になった」と振り返る。
「(GAME2の試合前のミーティングで)感情的にきのうの悪かった点を指摘してプレッシャーをかけるのではなく、改善する点を具体的に示して、きょうのゲームで遂行することを伝えました。それに対して、選手たちが応えてくれた。きのうのようなゲームを経験した後は、あきらめたり、言い訳をしたくなったりすることがありますが、あらゆるものを跳ね返して勝利することができました。選手やスタッフを誇りに思います」
■タフな状況も「昨シーズンの経験が生きている」と西田優大
プレッシャーを跳ね返して、バウンスバックを果たした三河。GAME1で30得点、GAME2で15得点を記録した西田優大は、ショッキングなGAME1を「あまり経験した記憶のないゲーム」と振り返る。
「(GAME1は)オフェンスの意識が強すぎたかもしれません。数字を見てもわかるんですけど、後半はペイントエリアで多くの得点を許してしまいました。僕たちは、ペイントを守ることに高い意識を持ったディフェンスチーム。今になって思うことですけど、もっとハドルを組んで共通理解を確認したり、声がけしたりするなどして、ディフェンスから悪い流れを断ち切ればよかった。ただ、学びがあると言ってはいけないかもしれませんが、このタイミングできのうのようなゲームを経験できたのはよかったのかなと」
楽勝ムードから喫したまさかの大逆転負けは、自信の喪失やチームの崩壊につながりかねない。それを払拭する1勝を手にして、「昨シーズンの経験が生きている」と西田は言う。
「試合前の雰囲気は悪くなかったですよ。やり返すというか、みんなエナジーがたぎっていましたし。去年の同じような時期、強豪相手に連敗していたときのほうが、チームがバラバラになりそうな雰囲気がありました。そのときに比べるとみんな同じ目標に向かっているように感じましたし、心配はしていなかったです。僕自身、きょうのゲームは勝ち方も大きいと思います。最後は我慢して、ディフェンスで勝利を手繰り寄せることができた点がよかった。僕たちらしい勝ち方なのかなと思っています」
そのディフェンスにおいて、西田優大の貢献度は計り知れない。今シーズンは外国籍選手のハンドラーとマッチアップすることが多く、エースでありながらエースキラーとしても戦ってきた。その点について聞くと、昨シーズンに在籍した韓国人プレーヤーの名前が返ってきた。
「ダッシュ(イ デソン)の存在って大きかったんだなと感じます。外国籍選手のディフェンスを託されて、なおかつオフェンスではハンドラーもやっていましたし。(今シーズンは同じような役割を任されて)ダッシュ、すごいなって。去年の自分だったら、きっと3Qで足がつっていると思います。でも今は最後までプレーできている。戦える体になってきたと実感していますし、メンタル的にもチームを引っ張る覚悟は持っているので、もっとそういう気持ちを出してプレーしたいと思います」
GAME2、厳しい展開の中でも西田は笑顔を見せた。ミスをしても「共通理解の中で起きたミスなら、それはそれでOKだと思うので」と話す。手強い外国籍選手と対峙して「正直、楽しかった」とも言う。タフな状況でも簡単に下を向かない姿が頼もしい。次節はA東京との重要な一戦だ。「もっとチームを勝たせたい」と決意するエースが大一番で躍動する。