子育て世代のがん患者が、子供に病気のことを何と言って伝えるべきか?子供に詳しい病状を明かせず悩む母親や、病気のことが理解できないまま、親の病状が進んでいくことに不安を募らせ、大きなストレスになっている子供も多いという。あなたなら、子供にどのように伝えるだろうか?

突然の「ステージ3の乳がん」宣告

福岡市に住む三宅里織さん(36)。まだ幼い3人の子供の育児に追われる三宅さんは、3年前の2022年春、突然、「ステージ3の乳がん」を宣告された。「胸から出血して、ちょっと普通じゃないと思って病院に行ったら、『これは、リンパまでいってますね。転移してますね』って感じで」と当時を振り返る。自分が、がんになったという驚きと「リンパまでいってるから、初期の発見じゃない」と医師に告げられたことへの怖さがこみ上げてきた。

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当時、小学1年だった長女の華愛ちゃんは、「なんでママ病気になったの?」という悲しい気持ちと「病気になる前と生活が変わり、自分が何をしたらいいのか分からない時があり、ちょっと不安になることもあった」と振り返る。

今も悔やむ「ママ死んじゃうかも」

三宅さんは、自分の病気のことを初めて子供達に伝えた時のことを今も後悔していると話す。「『治療します』『髪が抜けます』と、家族に冷静に話さないといけないのに、自分が取り乱してしまい、『ママ死んじゃうかもしれない!』と言ってしまった」ことだ。

当然、子供たちは、『えっ!』となり、結果として、子供の不安を煽るだけになってしまった。今なら、もっと他の言い方をするのに…。「治る?と聞かれたら、『うん』とは言えないけど、『ちょっとひどい風邪だと思って、しんどいとママが言ったら、休ませてね』みたいな感じで伝える」と三宅さん。やはり、今もあの日のことを悔やんでいる。

2025年3月9日。子育て世代のがん患者を対象に、親子で病気の情報を共有し、前向きに治療に取り組んでもらおうと、九州がんセンターの医師らが、福岡市で親子向けのイベント「子育て世代のがん患者さん応援プロジェクト」を開催した。

日頃、乳がん患者を診療する九州がんセンターの田尻和歌子さんは、子供に詳しい病状を明かせず悩む母親や、病気のことが理解できないまま、母親の病状が進んでいくことに不安を募らせる子供を多く見てきたため、病気に関する親子の情報共有の重要性を実感している。

この日、三宅さんの長女・華愛ちゃんもイベントに参加し、普段、言葉では伝えにくい「今の気持ち」を、母親と共有するため、様々な表情が書かれたマグネットを作っていく。

三宅さんは、自分と同じように子育てをしながら、がんと闘う女性たちと、実体験や悩みを率直に語り合い交流する中で、「がんという病気を、自分を通して学んでいってもらえたらいい。辛くもなるが、今は元気にしているし、それを見て、子供たちに分かってもらえたらいい」と思いを新たにする。

がんのことを改めて深く知った子供たちも、普段は、うまく言えない母親への思いを手紙に綴った。

長女の華愛ちゃんが三宅さんに手渡した手紙
長女の華愛ちゃんが三宅さんに手渡した手紙

親子で病気の情報を共有して!

現在、乳がんの進行を抑えるためのホルモン療法で、薬を1日3回服用している三宅さん。薬は、あと8年間、飲み続けなくてはならない。

今後、再発することがないとは言い切れないが、それでも子供たちと外出して過ごす「がんになる前」の日常が戻ってきている。

子供たちと遊ぶ三宅さん
子供たちと遊ぶ三宅さん

「私の夢としては、子供が成人するのを見守ること。その先も見られたらやっぱり良いなと…。家族としては、家族全員で楽しく毎日過ごしていけたらいいな。子供の成長を見守って、過ごしていけたらいいなと思っています」と三宅さんは、前を向く。

三宅さんの家族写真
三宅さんの家族写真

親の不安は子供に伝わり、子供の不安が、悩める親を更に苦しめる。子供は、きちんと理解できる力を持っている。親子で病気の情報を共有し、一緒に病気を乗り越えていくことが、重要である。

(テレビ西日本)

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