アメリカ・トランプ大統領が、日本製品に9日から最大24%の相互関税を掛けると発表し、大きな波紋を広げている。自動車や和牛、日本酒など広範囲に影響が及び、企業収益に悪影響が出る恐れがある。さらに飼料や原材料を多く輸入する日本国内でも価格高騰が進む可能性が高く、日米双方で損失が拡大しかねない状況となっている。
トランプ大統領の「相互関税」が及ぼす衝撃
トランプ大統領が発表した「相互関税」が、世界各国に衝撃を与えている。ここからは、関税に詳しい第一生命経済研究所の熊野英生さんが解説する。

青井実キャスター:
どれくらいの関税が今、掛かっているのか見ていきます。中国は34%、EU20%、インド26%など、それぞれ各国違うわけですが、今回なぜ日本は24%掛かるんですか?
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
トランプ大統領の言い分では、アメリカが日本によって46%、関税以外のもの、非課税証券を含めて46%なので、その半分の24%を掛け返すと言っています。
青井キャスター:
でも、これはちょっと理不尽なことですよね。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
これは完全な不平等条約で、理屈はよく分からないというのが実態ですね。
宮司愛海キャスター:
この24%の関税が、日本時間9日から発動されるということですが、対象品目は今決まってるんですか?

第一生命経済研究所・熊野英生さん:
まだ発表されたばかりでよく分からないですが、金額にすると自動車を除いて大体14兆円、途方もない金額に掛かるということです。
青井キャスター:
そんな中、日本からの輸出額を見ていくと、2023年の日本の輸出額は、アメリカが約20.3兆円と約2割を占めていて、日本にとって最大の貿易相手国になってるわけです。今後、相互関税が発動されれば、もちろん日本にも、大きな影響が出てくるわけですよね。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
アメリカに輸出するときは金額が高くなるので、どうしても輸出が減少する。中小企業の影響が大きいと思います。
先に影響が出そうなアメリカ側はどうなる?
青井キャスター:
日本への影響が気になりますが、まず先に影響が出そうなアメリカ側を、見ていきたいと思います。日本からアメリカへの輸出品の代表的なものを並べてみました。
例えば和牛です。相互課税発動するならば、2024年までは最大で26.4%でしたが、発動なら50.4%になります。
そしてブリもかなり多いんですが、最大3%でしたが、発動なら27%。さらに日本酒も1リットルあたり3セント上がります。そしてお茶は最大6.4%でしたが、発動なら30.4%に上がります。日本が今人気ですから、日本酒、そしてお茶も上がるということになっています。こういった状況ですが、熊野さん、どう感じますか?
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
和牛の場合は1.5倍になりますから、業者にとっては非常に大きな値上がりになるので、甚大なダメージだと思います。

宮司キャスター:
ここまでアメリカのスーパーで価格がもし上がるとなってしまうと、アメリカの方々は、日本から輸入されたものを買わないんじゃないかと思ってしまいます。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
その通りだと思いますが、不幸中の幸いにですね、和牛も日本酒もお茶も人気があります。つまり嗜好品なので、日本の商品を特に気に入ってくださるお客様が買うので、ある程度値上げは受け入れてくれるんじゃないかと考えています。
青井キャスター:
柳澤さんにも聞いていきたいと思いますが、日本企業が利益を減らして価格を調整するということになるかもしれないわけですよね。
SPキャスター柳澤秀夫さん:
大手の体力のある企業は、それができると思います。でもその体力のない中小企業だと、どうしても、値段が上がる部分を他で吸収できないということになるんですね。
青井キャスター:
この辺り、企業の対応は分かれてきそうですか?
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
分かれてきそうですね。自動車が一番そうなんですが、自動車メーカーによってはアメリカでの値上げを控える。そうするとしわ寄せ効果が日本の取引先、中小企業に及んでしまうかもしれないので、そういう間接的な効果は非常に怖いんじゃないかと思います。
青井キャスター:
今回の自動車については別ですが、どちらにしても、日本の車の産業に与える影響というのは、注目ですよね。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
周辺部門も含めて3分の1が自動車(産業)ですから、自動車向けの25%の相互関税で大ダメージを受ける可能性はあります。
日本にとっては身近な食料品が上がる
青井キャスター:
アメリカの影響を見てきましたが、日本側も見ていきたいと思います。今後、相互関税が発動された場合でも、アメリカから日本に輸入する際の関税は変わらない見通しですが、影響はありそうですか?
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
我々の生活に一体どう影響してくるのか複雑なんですが、アメリカで値上がりすると値上がりしたところから日本も買うので、値段が上がってしまう。為替が円高になっていますが、いずれアメリカのインフレで円安になると思いますから、輸入物価がこれらの商品でも上がってくる。つまり、日本にとっては身近な食料品が上がるということです。
青井キャスター:
例えば、大豆を最も多く輸入してたりとか、小麦もそうですね。この辺りの価格も上がってくる可能性があるということです。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
小麦を使ったパン、パスタなどは上がるということですね。
青井キャスター:
日本酒の影響を見ますと、これは横ばいじゃないかということです。これは日本で生産してるからということですか?
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
山田錦とか日本で作っているブランドの酒米のコストは、横ばいじゃないかと思います。
青井キャスター:
あと和牛もありますが、日本の和牛なわけですが、これも価格が上がる可能性もあるということですか?
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
ここが分かりにくいんですが、牛は日本で育てているんですが、食べる飼料はアメリカから日本が輸入しているトウモロコシなどを加工しているので、餌が上がるので和牛も上がる形になるのではと思います。
「日本が報復関税…日本が物価高に苦しむ」
青井キャスター:
生産者の目線に立ちますと、それぞれ影響が変わってくるかもしれないので、どこに関税が掛かってくるかというのは、皆さん注目をされているということですね。

第一生命経済研究所・熊野英生さん:
見えにくいところで影響があり、結果的には日本の生活コストも同時に上がっていくようなことも、時間を掛けて進んでいくんじゃないかと思いますね。
宮司キャスター:
アメリカにとっても物価が上がってしまい、日本にとっても物価が上がってしまうということで、相互に良いところがないような気もするんですが…。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
トランプ大統領が何でこういうことをしてるのかというのは、私もちょっとよく理解できないところですね。
青井キャスター:
我々も本当にそうで、誰が得なのか見えにくいですね。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
トランプ大統領は選挙民に対してアピールしているんですが、本当に選挙民のためになるかというと、反対じゃないかなと感じます。
青井キャスター:
アメリカでも、インフレになってしまう可能性もあるわけですからね。
宮司キャスター:
先程、中小企業への打撃もあると言っていましたが、例えば日本政府がきちんとその辺りに対する支援策を打ち出すとか、そういったことも必要になってくるんでしょうか。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
石破首相は、万全を期すと何でもやると言ってますから、期待したいと思いますね。
青井キャスター:
もう一つ見ていきます。
世界各国の影響ということで、日本貿易振興機構ジェトロのアジア経済研究所の試算によると、トランプ大統領の相互関税などが世界の国に適用される場合、2027年の世界のGDP0.6%減少すると試算しています。中でもアメリカは2.5%ダウンで、一方で日本は0.2%アップになっています。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
そこは見方が分かれていて、私はそれに対応するのは約0.2%か0.3%減少で、ちょっとプラスではないんじゃないかと思いますが、色々な見方ができるのではないかと思います。
青井キャスター:
日本経済に大きな打撃も出ますし、賃上げしたくてもなかなかそこに回らなかったり、そういったことも出てくる可能性もありますよね。
SPキャスター柳澤秀夫さん:
輸出関連企業は打撃を受けると、当然収益が下がってきますから、今、賃上げムードで来ていますが、これにブレーキが掛かってしまうと、我々の給料が減るということになると思うんです。あと、カナダとか中国は報復関税を打ちました。要するに貿易戦争の火ぶたを切った格好になったわけです。日本が、どういう風に対応するかということも注目しています。
青井キャスター:
日本としてはどうしていかなきゃいけないのか、どういう交渉の余地があるのか、その辺りはどうでしょうか。
第一生命経済研究所・熊野英生さん:
カードは、限られているんだと思います。日本で報復関税をやると、日本の生活者が物価高に苦しむ。かといって、それをやらないとトランプ大統領はどんどん要求してくるということで、日本政府はジレンマを感じていると思います。アメとムチのアメを使うということしか考えにくいんじゃないですかね。
他の国が、どのようにアメリカの関税網を突破して上手く交渉するかを、日本は真似して学ぶというモデルになりそうだ。
(「イット!」4月3日放送より)