この大きな恐竜の骨格標本が展示されているのは、4月に鹿児島県薩摩川内市の甑島にオープンしたばかりの「甑ミュージアム」です。
島で発見された多くの化石が、見る人を太古の世界へといざなってくれる新しい施設の魅力を紹介します。
薩摩半島の西、約30キロにある薩摩川内市の甑島。
南北約40キロ、周囲を断崖に覆われた島は、太古の時代に恐竜が多く生息したとされるユーラシア大陸と陸続きとなっていました。
そのため、恐竜が絶滅した白亜紀後期の約7000万年から8000万年前の地層が分布していて、多くの化石が発見されています。
その化石が展示されているのが、「甑ミュージアム」です。
館内では全長10メートルを超える強化プラスチックで作られた、大迫力のレプリカの骨格標本が並びます。
その一つ、首の長い草食恐竜・竜脚類の標本は、島で発掘された2センチ程の歯の化石から近い種類の恐竜を特定して制作されていて、圧倒的な迫力で訪れた人々を迎えます。
この長さ2センチ程の化石は、2008年に県内で初めて発見された肉食恐竜の歯で、ティラノサウルスなど獣脚類の一種です。
館内では、こうした数多くの展示物が太古の世界へといざなってくれます。
中でも2016年に上甑島で、長さ約70センチの大腿骨が発見されたハドロサウルス類は、恐竜が絶滅した白亜紀後期まで、日本に恐竜が存在したことを示す貴重な資料です。
甑ミュージアム学芸員 博士・山下大輔さん
「真ん中の上半分が、甑島で見つかって、この骨は国内で見つかっている化石では一番絶滅期に近く、注目されている」
薩摩川内支局・牧瀬大輔記者
「二階の展示スペースでは、島内で採取された岩石や海の生き物など、多様な資料が展示されています」
海を中を泳ぎ獲物を捕らえる鋭い歯が特徴的な「海ワニ」です。
甑島では2018年に海生ワニ類の歯が発見されていて、国内で唯一標本が展示されています。
甑ミュージアム・山下大輔さん
「海ワニは北米とドイツで発見されているが、日本でも化石が見つかり、当時の東アジア地域でも海ワニが泳ぎ回っていたのが分かる」
「3、2、1どうぞ」
オープン前の3月23日に開かれた施設の内覧会。
地元住民ら約200人が「甑ミュージアム」の完成を祝いました。
地元住民
「うれしいです、これで観光客も増えたり、子供も学校の授業とかで来たり、いろいろな学びになればと思う」
地元住民
「(甑島の)鹿島出身なんで、こういった名物ができて良かった。恐竜の化石とか石が並んでいて、よくあれだけ集めましたね」
甑島では2015年にミュージアムの前身となる準備室に専門の学芸員が配置され、国立科学博物館や熊本大学と合同で発掘調査を行ってきました。
施設のオープンで、今後さらに島での新しい化石の発見や新種の解明が進むことが期待されます。
甑ミュージアム・山下大輔さん
「ここが恐竜研究の最前線という気持ちで発掘作業やクリーニング、研究を行っている。博物館で大地の成り立ちを知ってもらい、野外で風景や歴史、文化に気づいてもらえれば」
太古の時代を生き、そして滅びた恐竜たちが東シナ海に浮かぶ島でその姿をみせてくれます。
開館時間は、午前9時から午後5時までで、閲覧には入場料が必要です。
詳しい情報は、「甑ミュージアム」のホームページをご確認ください。