天台宗の寺院で50代の女性僧侶が、およそ14年にわたり性暴力を受けたと訴えていた問題で、60代の男性僧侶が、住職の「罷免」処分となったことが分かった。
一方で、被害を助長したと訴えられていた80代の大僧正は処分されなかった。

■『坊主に逆らうと地獄に落ちるぞ』尼僧が約14年間の性暴力被害訴え
四国に住む50代の尼僧・叡敦(えいちょう)さんは、2009年からおよそ14年間にわたって、四国にある天台宗の寺の60代の男性僧侶から性暴力などを受けたと訴えている。
叡敦さんによると、男性僧侶は自らを「観音様の身代わり」といい、叡敦さんを寺に住まわせたうえ、「坊主に逆らうと地獄に落ちるぞ」などと脅して性暴力や恫喝を繰り返していたということだ。
男性僧侶とされる音声:仏さんはエッチはしてくれんよ。エッチで悩んでいる人がおったら、代わりにお前がエッチしてやらないかんと。

■「加害僧侶」取材には「答えられない」 警察に被害申告も不起訴処分に
関西テレビが去年3月、男性僧侶に電話で取材したところ、次のような回答に終始した。
(Q.性暴力はあったのか?)
男性僧侶:宗務庁にお伝えください。
(Q.答えることはできない?)
男性僧侶:答えることはしないようにと(言われている。)私も天台宗に属している地方の寺なので本庁の指示はまもらないといけない。
叡敦さんは2019年、男性僧侶の暴行について警察に告訴したものの、僧侶は不起訴になっている。

■80代大僧正「公になったら困る」など被害の訴え取り合わず
叡敦さんは、親戚で関西に住む80代の大僧正から、この男性僧侶を紹介されていたため、大僧正に被害を相談したが、「公になったら困る」などと、取り合ってもらえなかったという。
関西の寺の大僧正(80代):今でも私は、彼を(男性僧侶)、このことがあったのを信じられん気持ち。
叡敦さんは、男性僧侶と大僧正について、僧籍をはく奪するよう宗派に申し立てていた。

■男性僧侶について住職を「罷免」 大僧正は処分せず
そして3月28日までに、宗派の裁判所にあたる審理局は、審議した結果、60代の男性僧侶について、僧籍のはく奪はしないものの、住職を「罷免」する処分としたことが分かった。
一方で、80代の大僧正については、処分しないことに決まったということだ。
天台宗は処分について、「まだ不服申し立て期間のため、詳細は答えられない」としている。

■叡敦さんの代理人弁護士「処分は軽きに失する」
叡敦さんの代理人弁護士は、「結果は大変残念です。大阿闍梨(80代の大僧正のこと)について不当なのは言うまでもありませんが、加害僧侶(男性僧侶)の『罷免』も、住職としての地位を失うだけであり、他の寺の住職になったり、住職としてでなければ僧侶として今の寺で働き続けることも可能な処分であり、軽きに失する」とコメントしている。
(関西テレビ 2025年3月28日)