この春からまた札幌エリアのバスが大幅に減便。
JR札幌駅のバスターミナルの整備も遅れる可能性がある中、地域の交通網をどう維持するか、課題となっている。
“札幌駅前再開発”開業の遅れが街におよぼす影響
「新幹線札幌開業の時期にかかわらず、2034年度の竣工を目指します。旧エスタと同規模の西2丁目を先行して整備し、2030年度の竣工を目指します」(JR北海道 綿貫泰之社長)
3月19日、JR北海道が明らかにしたエスタ跡地の再開発ビルの開業の遅れ。

新幹線の札幌延伸が2038年度以降となる見通しの中での表明となったが、気になるのはビル内のバスターミナルだ。
「先行開業の段階で西2丁目のバスターミナルを有効活用して、できるだけ路上から(バス停を)ビルの中に戻したい。今後、関係者と十分相談しながら検討・調整をしていきたい」(綿貫社長)

分散する“臨時バス乗り場”―利用客からは「不便」の声
路線バス用のターミナルは2030年度に先行開業するものの、都市間バス用は遅れ、2034年度以降になる可能性がある。
それまで、札幌駅周辺に分散する臨時のバス乗り場を続けなければならない。
利用者の声は―。

「不便だけどしょうがない」
「遅いと思う。(乗り場が)野ざらしで吹雪の日は本当に困る」(いずれも利用客)

今春から札幌エリアなどでバス約500便減便 ダイヤ維持が困難に
そしてバスをめぐる問題はこの春、「大規模な減便」という形でもやってくる。
札幌エリアなどの平日の路線バスは、4月のダイヤ改正であわせて約500便が減便に。
平日440便を減便する「北海道中央バス」は―。

「ダイヤが維持できなくなり苦渋の決断だった」(北海道中央バス)
バス会社は深刻な運転手不足に苦しんでいる。

課題は「交通網の維持」
一方、交通網をどう維持していくか、新たな取り組みを始めた場所もある。
北海道中央バスが4月、廃止する「厚別ふれあい循環線」。
JR厚別駅を拠点に地下鉄・新さっぽろ駅などを回る路線で、通院や買い物などで1日400人ほどが利用する。

「絶対必要ですね、我々年寄りには特に。自家用車ないですしね」(週2~3回利用する住民)
「(徒歩でJR厚別駅周辺から)地下鉄新さっぽろ駅まで17~18分かかる。疲れちゃって、もうお買い物する気にもならない。もう本当、私たち死活問題」(週3~4回利用する住民)

“観光バス会社に運行を委託”―路線維持のために住民が動く
この事態を受けて住民自らが動いた。
町内会が市の支援制度と補助金を活用し、札幌の観光バス会社に運行を委託したのだ。

「確実に地域の高齢化が進んでますよね。この路線は守らなきゃいけない気持ちになりました」(厚別中央町内会連合会 田中昭夫会長)
地元の町内会連合会の田中昭夫会長。
札幌市とともに自ら運行を引き受けてくれるバス会社を探した結果、「札幌観光バス」が1年間の実証実験として引き継いでくれることになった。

便数減少、運賃上昇、継続利用―路線維持への模索は続く
3月17日には新たなバスがお披露目。ただ、課題もある。
便数はいまより1日10便少なくなり、運賃は60円高くなる。
経費の半分を運賃でカバーできなければ、再来年から再び廃止となるため「継続した利用」が求められている。

「(Q:どのぐらい利用者がいれば採算が合う?)今の300円ですと、1日約200人。みんなであなた方の交通網を守る大事な路線ですからぜひ協力してくださいと言って、お願いするしかないのかなと思います」(田中会長)
細るバス路線。歯止めをかけるための模索が続く。
