東京・中野区に、子どもと保護者向けサービスを集約した「こどもでぱーと」が開業する。ビル1つに習い事や小児科、親子カフェなど、共働き世帯のニーズに対応したワンストップ型で、送迎や相談対応も備える。質の高い幼児教育が就労支援にもつながり、将来的な収入安定や社会的効果も見込めると、専門家は指摘している。
育児と教育を支える「こどもでぱーと」誕生
一つのビルで子育てが変わる。子どもと保護者のための「こどもでぱーと」がオープンする。

24日、報道陣に公開されたのは、4月1日に東京・中野区にオープンする子育てサービスに特化した施設「こどもでぱーと」だ。

山下あす奈記者:
中に入ると内装には木が使われ、案内も子どもの目線の高さになっています。

地上9階建てのこちらの施設は、テナント全てが親子向けだ。

英会話教室をはじめ、進学個別指導塾の学習塾や運動教室など、子ども向けの習い事のテナントが揃う。

通信教育大手、ベネッセコーポレーションの調査によると、小学生が通う有料の習い事の数は、「1つ」が45、2%に対し、「2つ」が33.9%、「3つ」が15.1%、「4つ以上」が5.7%と「2つ以上行っている」という回答は54.7%と、半数以上だった。
そんな習い事が当たり前となっている今、新たな子育て施設を作った狙いについて、ヒューリック・西浦三郎会長は次のように話す。

ヒューリック・西浦三郎会長:
今30代後半から40代前半の夫婦の75%はダブルインカム、つまり共稼ぎ。(子ども)1人に対する、色んな意味での注力がもっと進むのではないか。
ずばり、ターゲットは共働き世帯。

「こどもでぱーと」には、親世代にうれしい、女性専用マシンピラティススタジオもある。

ほかにも小児科クリニックや、子育てで楽しめる親子カフェも今後、併設される予定だ。

もちろん「安心」「安全」にも配慮している。子ども達を見守るコンシェルジュを配置し、子育て相談のサービスも提供するだけではなく、自宅や学校からの送迎サービスで、両親の負担を軽減する。

ヒューリック 子ども教育事業室・大久保立樹さん:
悩みを抱える親御さんのいろんな課題を「こどもでぱーと」・不動産を通じて、課題解決できるのではないか。しっかりと親子が使うビルとして作っていきたい。

新たな子育て・教育の場としてスタートするワンストップで利用可能な「こどもでぱーと」。2029年までに首都圏を中心に、約20か所で展開していく予定だ。
子育てと教育の一体化が共働き世帯の支えに
「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
崔さんもいま子育てをされていますが、このニュースをどうご覧になりましたか。

エコノミスト・崔真淑さん:
今回の取り組みに、とても期待したいです。というのも、実際に子育てを通して感じるのは、成長とともに育児だけでなく、教育に対してどう向き合うべきか悩むようになったんです。
「こどもでぱーと」のような、育児と教育を合体させた取り組みが広がっていくのは、母としても嬉しいです。
もちろん、最近では認可保育園でも、リトミックや英語などを取り入れる園も増えています。ただ、このような保護者も楽しめる施設というのは、子育ての楽しみがより増えてありがたい限りだと思います。
そして、研究者としても私は、この取り組みには期待したいところがあります。
堤キャスター:
それは、どのような点でしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
今回のような、子育て支援と教育サービスの一体化には、大きく2つの効果があると思っています。
まず、就労支援の視点です。賃金が物価上昇に追いついてない日本においては、共働きでないと家計が回らないというケースは増えつつあります。
そうした中で、育児も教育もというのは、保護者のジレンマです。こうした悩みを解決していくれると思います。
幼児教育の質向上と経済支援が少子化対策のカギに
堤キャスター:
もう1つは、なんでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
もう1つは、幼児教育の質の向上です。昨今は、なんでも無償化が叫ばれていますが、それと同時に保育や教育の質の低下を懸念する声が、研究者から出ているんです。
今回取り組みは、質の高い幼児教育は拡充されるのではないかという期待もできると思います。
さらに、質の高い幼児教育は、海外の研究では将来の収入が安定しやすいこと、また、犯罪率低下に寄与することも言われています。
堤キャスター:
こうした施設は、少子化への影響はありますか。
エコノミスト・崔真淑さん:
確かに、子育て支援の充実は、出生率に影響することが知られています。しかし、実は日本と韓国は世界でもトップクラスの、子育て政策が充実した国なんです。
でも、超少子高齢化が加速している。実は、結婚した夫婦の一組当たりの産む子どもの数は約2人で、1980年代とほとんど変わっていないんです。
むしろ、収入の安定が得られないことで、結婚に躊躇することが増えているという影響が大きいと思います。子育て支援と、そして賃金アップの施策継続のどちらも必須だと思います。
堤キャスター:
教育への投資が注目される昨今、子どものさまざまな経験と、親の負担軽減を同時にサポートしてくれる場所が増えていくことを期待したいです。
(「Live News α」3月24日放送分より)