3月11日に亡くなった俳優のいしだあゆみさんは東日本大震災の前年、石巻市など宮城県内で撮影された映画「エクレール・お菓子放浪記」に出演していた。震災の翌月、いしださんの演技と舞台あいさつで見せた優しさは多くの被災者の心を打ち、「救われた」という声も多く寄せられたという。

震災の前年 石巻で撮影
東日本大震災の前年、宮城県で撮影された映画「エクレール・お菓子放浪記」。戦争を生き抜いた1人の孤児が「お菓子」を通してさまざまな希望をみる物語だ。
主人公の少年を引き取ることになった養母を演じた、いしださん。映画は石巻市にある北上川のヨシ原などを舞台に県内5つの市と町で撮影された。

根底の優しさ 演技で表現
映画のプロデューサーを務めた鳥居明夫さんは、いしださんの演技力や優しさに助けられたと振り返る。
鳥居明夫さん:いしださんの役は金を求める“ごうつくばあさん”なんですが、実はとても優しいものをもったおばあさんでした。そんな雰囲気を彼女は見事に演じていたので、映画を観た人からは『いしださんの優しさに救われました』という声がずいぶんあった。

ロケ地・石巻を思い 流した涙
東日本大震災直後の2011年4月。東京で行われた映画「エクレール・お菓子放浪記」の舞台あいさつで、いしださんは被災地への思いを涙ながらに語った。
いしだあゆみさん:エキストラで、ずいぶん石巻の方に出ていただきました。ご無事でしょうか。とても案じております。そして宮城県の方には本当に、本当にやさしくしていただきまして。こんなにきれいな宮城県が映っているということで、すごく喜んでくださったんですけれども、まさかこんな結果になるとは思いませんでした。

「エクレール・お菓子放浪記」の鳥居明夫プロデューサーは舞台に立って石巻への思いを語る、いしださんを見ていた。ぽろぽろとこぼれる涙を見ながら「石巻の方々のたくさんの笑顔が印象に残っていたんだろう」と感じたという。

被災地へ向けた優しさ
その後、石巻市で行われた試写会には、津波で亡くなったエキストラの女性の母親も来てくれた。いしださんは「娘に会いに来た」と話す女性の話にじっと耳を傾けていたという。
被災地へ向けた、いしださんの優しい思い。14年たった今も忘れられることはない。
