2月に北朝鮮が約5年ぶりに世界に向けて観光ツアーの門戸を開いたが、再開からわずか2週間後、ツアーは再び中止になった。
FNNは、最新の北朝鮮ツアーの映像と証言から、迷走する北朝鮮の実態を探った。
北朝鮮がコロナ禍以降初めて観光ツアーを再開
橋を渡るバスの車窓、その先に見えてきたのは「北朝鮮」。

これは2月に行われた観光ツアーの参加者が、中国から北朝鮮に入る際に撮影した映像。
北朝鮮を観光したピエール・エミールさんは、「(コロナ禍明け)初めてのツアーだったため、不確実なことばかり。今思えば学校の遠足みたいでした」と語る。

「どこにいるか当ててみて」と、北朝鮮の旗を持ち、興奮気味に自撮りをするTシャツ姿の男性。
北朝鮮北東部の経済特区・羅先(ラソン)を訪れたフランス人男性、ピエール・エミールさんだ。

北朝鮮は2月中旬、これまでロシアに限っていた観光客の受け入れを拡大し、新型コロナ禍以降約5年ぶりに 西側諸国からの観光も開放した。
2月末のツアーには、FNNが取材した男性のほか、ドイツ人やオーストラリア人など十数人が参加した。
彼らが北朝鮮に到着後に受けたのは、今なお続く厳重なコロナ対策だった。

ピエール・エミールさんは、「すべての持ち物を消毒するため、バッグごとに料金を支払うよう求めてきました」と話す。

ツアーの料金は、ホテル代や朝昼晩の食事代を含め、4泊5日で約11万円。
街を一望する山でハイキングをしたり、新鮮な海産物を食べたりして、北朝鮮の食や自然を楽しんだという。
ピエールさんは、宿泊先のホテルを「70年代の雰囲気のホテルでした。見栄えを良くするために5つの大きな星がついていましたが、快適さを考えれば2つ星と言えます」と評価した。
観光地だけではなく地元の学校や工場の施設見学も
行き先は観光地だけではなく、地元の学校や工場などの施設も見学。
外国語学校の生徒たちについては、流ちょうな英語に驚いたと話している。
この時、生徒に将来の夢を聞いた際の映像ではこんな答えが。

北朝鮮の生徒:
私は軍隊に入隊し国と国民を守ります。
北朝鮮の生徒:
僕も軍隊に入りたい。国と国民を守りたいから。

子どもたちが歌などを披露するステージでは、後ろのスクリーンに撃ち落とされる戦闘機や無数の弾道ミサイルの映像が流れている。

小学校の施設とみられるこの場所。
子どもたちの頭上には、「わが指導者最高」の文字が。
ツアー全体を通して、常に金一族の功績が強調されていたという。

ピエール・エミールさん:
「この学校は10年前に金正恩同士の命令で建てられました」、「このビルも特定の人々にささげて建設された」。そういった説明がたくさんあり、これらの説明はすぐ指導者につながっていきます。
観光で外貨獲得狙うも2週間で中止に
なぜ北朝鮮は、外国人観光客の受け入れを突然再開したのだろうか。

梨花女子大学・北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「国連の制裁後、北朝鮮は現金を稼げる方法が明らかに減りました。観光産業はその相当部分を外貨稼ぎの方法として活用しています」と分析する。

しかし、2月の北朝鮮観光を企画した旅行会社のウェブサイトには、「3月5日付で羅先は一時的に閉鎖されています」とお知らせが出ていた。
複数の旅行会社によると、北朝鮮側からの指示ですべてのツアーが中止になったという。

旅行会社の担当者は、「北朝鮮の中央委員会からは、なぜ観光を中止することにしたのか公式な声明は出ていません。私がこの状況について接触しているほかの人たち全員から聞いたところでは、中朝間の政治状況に起因しているようです」と語る。

一方、韓国メディアが指摘するのは、SNSの弊害だ。
北朝鮮を訪れたツアー客のSNSを通じ、内部の姿が国際社会に拡散する状況を警戒し中断された可能性があると指摘されている。
外国人観光客の受け入れを始めたものの、早くも多くの課題に直面したとみられる北朝鮮。
金総書記が力を入れる事業だけに、その扉がまた開くのか注目されている。
(「イット!」3月17日放送より)