森友学園に関する公文書の改ざんを指示されたことを苦に、近畿財務局の職員が自殺し、職員の妻が財務省の佐川元理財局長に損害賠償を求めている裁判で、最高裁判所は妻側の上告を棄却した。
大阪府豊中市の国有地が8億円以上値引きして売却された、いわゆる「森友学園問題」で、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さん(当時54歳)は、公文書の改ざん・破棄を指示されたことを苦に、うつ病を発症し自殺した。

妻の雅子さんは改ざんを指示したとされる佐川宣寿元理財局長に対し、損害賠償を求める裁判を起こしていた。
1審の大阪地裁(中尾彰裁判長)は、「国家賠償法上、公務員が他人に損害を与えた場合は、国が賠償すべきであり、佐川被告個人は、損害賠償の責任を負わない」として訴えを棄却。
雅子さんは控訴したが、2023年12月、大阪高裁(黒野功久裁判長)は、一審の判決を支持し、雅子さんの控訴を棄却。
また雅子さん側が、佐川元理財局長に説明や謝罪を求めていることについて、「俊夫さんが受けた苦しみなどに照らすと、説明や謝罪があって、しかるべきとも考えられるが、法的義務を課すのは難しい」として、訴えを退けていた。

雅子さんは判決を不服として最高裁判所に上告していたが、3月12日付で、最高裁判所第三小法廷(平木正洋裁判長)は上告を棄却した。
宇賀克也裁判官1人の反対意見があったということだ。

■雅子さん「佐川さんが個人責任を負わないなら、どんな公務員も負わない」
上告棄却について雅子さんは、財務省が検察に提出した、問題に関連する文書を不開示とした国の決定を取り消すよう命じた、大阪高裁の判決が確定し、国会で加藤財務相が3月4日、1カ月以内にも文書を開示する方針を示したことを踏まえ、次のようにコメントした。
赤木さんの妻・雅子さん:このタイミングでの最高裁の判断はとても悔しいですし、信じられません。財務省からの情報が出れば、事実が明らかになって、佐川さんに対して新たな主張もできたと思います。
赤木さんの妻・雅子さん:最高裁は、財務省からの情報開示を踏まえた新たな主張を判断したくないから、開示される前に、急いで上告と上告受理を認めないことにしたように見えます。最高裁の態度はとても残念です。

赤木さんの妻・雅子さん:佐川さんが個人責任を負わないなら、もうどんな公務員も個人責任を負わないことになると思います。そのようなことでは、夫と同じように、職場で追い詰められて自殺する公務員がまた出てくるでしょう。
赤木さんの妻・雅子さん:反対意見を出してくれた宇賀裁判官だけがこの問題に向き合ってくれたと思います。他の裁判官達は無責任だと思います。
赤木さんの妻・雅子さん:佐川さんは気の毒だと思います。でも、本当のことを話して欲しかったと思っています。佐川さんに対する訴訟はこれで終わりですが、佐川さんが本当のことを話してくれるように、私は働きかけを続けたいと思います。

■国は「認諾」 裁判を強制的に終了させる
雅子さんはこの裁判でもともと、佐川元理財局長以外に国も訴えていたが、2021年に国は、雅子さん側の請求をすべて認める「認諾」という手続きを取り、裁判を強制的に終結させていた。
