退職金税制の見直しが6日、参議院予算委員会で議論された。勤続20年以上に大きな控除が適用される現行制度の見直しは「サラリーマン増税」とも呼ばれていて、街からは老後資金減少への懸念の声も聞かれた。石破首相は、拙速を避けつつ慎重に制度改正を進める考えを示した。

勤続20年以上で変わる控除額が議論の的に

参議院に舞台を移した国会での議論で注目されたのが、長く働くほど優遇される退職金税制の見直しについてだ。いわゆる「サラリーマン増税」とも呼ばれている。

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6日のテーマは、「退職金税制を改正?将来設計見直しか。ソレってどうなの?」だ。

5日の参議院予算委員会では退職金税制の見直しについて、野党から質問された石破首相はこう答えた。

石破首相:
拙速な見直しはいたしませんが、慎重な上に適切な見直しをすべきだと思っております。

同時に、「退職金に対する課税のあり方に答えは出ていない」としたが、街ではこんな声が聞かれた。

街の声:
自分の今までの経験上、嫌ですね。不満の方が多いと思います。

そもそも現在の退職金の課税制度は、勤続年数が20年以下か、それ以上かで控除額が大きく変わる。

勤続43年の人が退職金2200万円を一括で受け取る場合、勤続20年までは1年あたり40万円の控除で非課税になる。一方、勤続20年を超えると控除額が毎年70万円に拡大され、大幅に優遇される。なぜ勤続20年で控除額が急に増えるのか。税理士で社労士の資格も持つ渋田さんに聞いた。

退職金の平均額
退職金の平均額

税理士法人V-spirits・渋田貴正税理士:
これは昭和の時代に作られた制度なので、当時は終身雇用が当たり前。終身雇用を前提に働いていた時代だったので、時代背景に合わせて「なるべく退職後の所得(資金)を多く残そう」と作られたのが20年という区切りです。

厚労省によれば、満勤勤続の場合、退職金の相場は大企業の大卒の水準額が平均2230万4000円、中小企業の大卒の水準額が1091万8000円だ(厚労省「令和3年賃金事情等総合調査」、東京労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」による)。

退職金を2200万円とした場合、現在の20年で控除額が変わる場合と変わらなかった場合、金額にどのくらいの差が出るのか。

今の制度の場合、退職金は課税されないため2200万円が丸々受け取れます。これに対し控除額が勤続20年以降も同じ額が続いた場合は、税金を差し引くと、約2160万円だ。今の制度と比べ、受け取れる金額に約40万円差が出ることになる(大卒から定年まで勤続43年の場合)。これがサラリーマン増税とも呼ばれる理由だ。

「慎重に、しかし適切に見直しをするべきだと思う」とした石破首相の言葉、皆さんにはどう聞こえたのか。

街の声:
税金かければいいと思ってるんですかね。もうちょっとぜいたく税ではないが、取れるところはもうちょっと考えればあるんじゃないかと、知識がないなりに僕は思ってしまいます。

街の声:
退職金は老後のお金になるわけなので、そこを削られると不安な部分も多いと思います。それ(退職金)に頼る部分も大きいと思うので、そこが減るってなると…ちょっと違うんじゃないか。

一方で、理解を示す声もあった。

街の声:
取られるのは嫌だが、やむを得ない部分は多少あります。取れるところから取ろうとしてるのが姑息といえば姑息。全員を納得させることはできないだろうが、バランスよく、取れるところから取ってほしい。

税理士「時代に合っていない」と指摘

青井キャスター:
この退職金控除、どう思いますか?

SPキャスターパックン:
実は、アメリカに退職金控除はないんですよ。日本の終身雇用から転職の多いジョブ型雇用に少しシフトしてるように見えますし、新NISAで老後の備えは自己責任でお願いしますということになると、この先も徐々にフェードアウトしていくかもしれませんね。

青井キャスター:
政府はなぜ、この退職金税制にメスを入れようとしているのでしょうか。

石破茂首相:
雇用の流動化というものをどう考えるか。経済のこれから先、成長にとって非常に重要なことです。

青井キャスター:
転職が以前より身近なものになった今、同じ会社に居続けることで退職金が増える現在の制度は「労働の移動の障害になっている」との指摘もあります。渋田さんもこの退職金制度は時代と合っていないのではないかと言います。

税理士法人V-spirits・渋田貴正税理士:
無理に「20年間勤めると控除額が上がるから、1個の会社に勤続しよう」みたいな。今の時代、そもそもこういうことはないと思います。

長年続いてきた退職金への税制改正が、今後どうなるか注目が集まる。
(「イット!」3月6日放送より)

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