核兵器禁止条約の3回目の締約国会議が国連本部で始まり、ノーベル平和賞を受賞した「日本被団協」事務局次長で広島の胎内被爆者、濱住治郎さん(79)が演説で「悲劇を繰り返してはいけない」と訴えた。また、会議のラクメトゥリン議長はテレビ新広島の単独インタビューで、日本がオブザーバー参加を見送ったことを残念としながら、今後の参加に期待感を示した。
「原爆は悪魔の兵器」
ニューヨークの国連本部での第3回締約国会議では「日本被団協」事務局次長で広島の胎内被爆者、濱住治郎さんが核廃絶を訴えた。

「原爆は本人の未来を奪い家族も苦しめる悪魔の兵器です。被爆による悲劇を繰り返してはなりません」
演説後、濱住さんは、ノーベル平和賞受賞の意味を改めてかみしめているようだった。

「やっぱりノーベル平和賞って大変な賞だなって思っています。世界がやっぱり見てくれてますよね、被団協、被爆者って。そういった時期だからこそこれから頑張らねばって感情を持ちました」
日本政府不参加は「情けない」
一方、条約の成立に尽力した被爆者のサーロー節子さん(93)はオブザーバー参加を見送った日本政府を改めて批判。

「どこの政府よりもこの問題を熟知しているはずの日本が顔を横にして出てこないっていうのは本当に情けないと思います」
議長は「日本が参加すれば強い宣言が出せる」
会議を前に締約国会議で議長を務めるカザフスタン外務第一次官のアカン・ラクメトゥリン氏がテレビ新広島の単独インタビューに答えた。

ラクメトゥリン氏はウクライナ侵攻などの世界情勢から「核兵器の脅威が増大している」としたうえで、今回の会議を核保有国などに対して「核軍縮への現実的な一歩を踏み出すために協力する時だという強いシグナルを送るものにしたい」と語った。
条約には現在、73の国と地域が批准しているが、核保有国や日本は参加しておらず、日本は締約国会議のオブザーバー参加も3回見送っている。
ラクメトゥリン氏は、核兵器の被害に関して日本の知識を活用することが重要だと強調した。

「もし日本がこの会議に出席していたら、(最終日に採択目指す)宣言などでより強力な文言を使うことができたかもしれない」
また、ラクメトゥリン氏は、「日本の参加が会議に貢献することは間違いない」と今後のオブザーバー参加に期待を込めた。
日本は3回連続オブザーバー参加見送り
核兵器禁止条約は2017年に国連で採択され、核兵器の開発や保有など、あらゆる活動を禁止した初の条約。ただ、核保有国やアメリカの核の傘に守られている日本は参加していない。

3回目となる締約国会議は3月7日までの5日間、批准署名国の政府やNGOの代表らが参加する。批准署名国ではない国の政府はオブザーバー参加という方法があるが、日本は今回も不参加だ。その理由は、核保有国も参加している、もう一つの条約NPT=核拡散防止条約の下で核軍縮を進めるのが望ましいという立場からだ。今回はオーストラリアとノルウェーがオブザーバー参加している。

被爆者らからは、ノーベル平和賞受賞がオブザーバー参加の最もいい機会だったが、日本はそれを逃したという批判の声が上がっている。
日本政府不在の中で行われる今回の会議では被害者支援などのための国際信託基金の設立に向けた議論などが進められる見通しだ。
(テレビ新広島)