兵庫県の斎藤知事の疑惑を調べる百条委員会の「非公開」の音声データなどが、NHK党の立花党首に漏えいした問題。
提供を認めた維新の兵庫県議3人が23日、会見を開き謝罪した。一体なぜ、3人は他党の党首に渡したのか、その目的は?そして5時間半にわたる会見で語られた真意とは。
■【動画で見る】NHK党・立花氏へ非公開の音声データ漏えいの維新県議「発信力があるのは立花さん」
【記事の掲載内容について】
この記事で取り上げている、会見などで出た元県民局長の不倫などについては、あくまで立花党首や増山県議が主張したことで真偽不明な情報です。百条委員会は、斎藤知事が告発された疑惑や公益通報とは関係のない事案と判断しています。
これまで関西テレビは報道するにあたって必要のない情報と考えてきましたが、今回、2月23日の記者会見の内容をお伝えするために必要と判断し、掲載しています。
■兵庫維新3人が会見を開き謝罪 NHK党の立花氏に漏えい

維新の会 増山誠兵庫県議:ルール違反でございますので、この場を借りて謝罪させていただきたい。
維新の会 岸口実兵庫県議:軽率だったと言わざるを得ない。
維新の会 白井孝明兵庫県議:申し訳ございませんでした。
23日、会見で謝罪をした維新の増山誠県議と岸口実県議、そして白井孝明県議。
増山県議は非公開の音声データ、岸口県議はいわゆる“黒幕文書”、白井県議は情報を。
いずれも他党の党首である、NHK党の立花氏に漏えいしたのだ。
その時期は、兵庫県を二分した県知事選挙の最中だった。
■知事選への影響を考慮して「非公開とする」に賛成した岸口県議と増山県議

維新の会 増山誠兵庫県議:カラオケボックスの方でお会いをして、このデータをLINEでお送りした。
事の始まりは去年6月。
斎藤知事の疑惑が書かれた、元県民局長の告発文などについて調べる百条委員会が立ち上がり、岸口県議は副委員長、増山県議も委員を務めることに。
そして去年10月、片山元副知事への証人尋問について、知事選への影響を考慮して、「非公開とするか」議論された一幕では…。
百条委員会 奥谷謙一委員長:決をとりたいと思います。賛成の委員は挙手をお願いします。
岸口県議と増山県議は、「非公開」に賛成していた。
百条委員会 奥谷謙一委員長:議事の内容は、一切外部に漏らさないようご留意願います。
■「非公開」のやり取り 知事選が終了後に公開が決まっていた

これがその「非公開」で開催された、10月25日の委員会でのやりとり。
<去年10月25日 百条委員会>
片山安孝元副知事:倫理上、問題のあるファイルがありました。それは当該本人の…過去…にわたります…。
百条委員会 奥谷謙一委員長:証言していただかなくて結構です。プライバシー情報ということで。
片山安孝元副知事:証言させていただきます。
百条委員会 奥谷謙一委員長:証言していただかなくて結構。
この日の委員会の映像は、告発者の私的な情報に触れた部分をカットした上で、知事選が終了後に公開されることが決まっていた。
■配信番組に出演し告白 「立花氏に渡したのは私」

しかし…なぜか私的な情報の音声データが入ったまま、NHK党の立花氏がSNS上に公開。
これを漏えいさせたのが…。
司会者:ぶっちゃけ誰が流出させたのですか?
維新の会 増山誠兵庫県議:端的に申し上げますと、10月25日の片山元副知事の発言を録音して、立花氏に渡したのは、私です。
増山県議は先週、ユーチューブの配信番組に自ら打診して、出演し告白。
「密かに録音した音声データ」や「告発者の公用パソコンに、不倫の日記が保存されている」などと書いたメモを、立花氏に漏えいしたのだ。
■「告発者が不倫」は公益通報 自殺はパワハラが原因「誤解を解きたい」

非公開に賛成していたはずの増山県議。一体なぜ、音声データを漏えいしたのか。
維新の会 増山誠兵庫県議:これは公益に資する情報ではないか、この情報を県民が知らないまま、選挙に突入してしまう危機感もあって、情報提供を行った。
増山県議は、「告発者が不倫をしていたという情報を得て、公益通報の必要がある」と考え、音声データを漏えいしたと話す。
維新の会 増山誠兵庫県議:(告発者が)不適切な関係を職員と結ぶことが、人事評価や昇進に影響を及ぼす可能性があるのは、非常に県の職員として、恐ろしい状況を感じたので、公益通報として告発すべき事案ではないか。
さらに、「『告発者が自殺したのは、斎藤知事によるパワハラが原因だ』という誤解を解きたかった」と主張した。
維新の会 増山誠兵庫県議:斎藤知事のパワハラで亡くなったという風説、そういうのが広まっている状況でした。この文書の背景や、選挙において重要な情報で県民が知るべきではないかということで。
増山県議の情報漏えいを受けて、立花党首は「告発者は、不同意性交罪にあたる可能性が極めて高い」などと繰り返し発言。
■情報の根拠は…? 「証拠はない、立花氏の発言でそう思う」

会見では、増山県議が漏えいさせた情報の信ぴょう性について質問が相次いだ。
記者:根拠は何かあるんでしょうか。
維新の会 増山誠兵庫県議:不倫についてはかなりの確度で確信をして、不同意性交等については、ありうる可能性があるというふうには思って。
記者:きちんとご自身として、提供できる証拠があって、維新の県議としておっしゃってるということですね。
維新の会 増山誠兵庫県議:私の方で証拠といえる文書みたいなものは持っておりませんけれども、あくまで立花氏の発言について、私がどう思うかということでございますので、立花氏がどういったソースに基づいておっしゃっているのか分かりません。
■情報提供者に立花氏を選んだ理由 「立花さんはメディア、発信力がある」「デマは流していない」

そもそも、斎藤知事についての告発が公益通報に当たるかを調べていた百条委員会。
告発者の私生活など個人情報は、公益通報には影響しないと判断していた。
それにも関わらず、委員だった増山県議が、個人情報を立花党首に漏えいした意図が問われた。
記者:『斎藤知事のパワハラで告発者が亡くなった』というデマを打ち消すために、より強いファクトをぶつけることで、そちらに意識がいくようにしたかったのか。
維新の会 増山誠兵庫県議:何かこの情報を出したから、ピンポイントで打ち消せるというようなことではなくて、全体像を把握することによって、その認識が変わってくる可能性もある。
増山県議は、テレビや新聞などの偏向報道が行われていて、情報が握りつぶされるため、立花党首に提供したのだと主張した。
維新の会 増山誠兵庫県議:私は立花さんについては、メディアとして認識しておりまして。立花氏の発信力という点において、非常に発信力のある方ですので、この方にお伝えをすることによって、県民の皆さまが知ることができるのではないか。
記者:執行猶予中の他党の立花氏、色んな形でデマを流してることが分かっている人物に、隠れて渡した行為は、県民に知らせたいという思いと、乖離(かいり)してると思うんですが。
維新の会 増山誠兵庫県議:立花氏が多くのデマを行っているという意見にはご賛同しかねます。
■兵庫県議会第二会派の維新 なぜ自ら発信しなかったのか 「非常にプライバシーに関わるところなので」

兵庫県議会の第二会派でもある維新の会。
それほど大事な情報と考えるなら、なぜ自ら発信しなかったのかも問われた。
記者:不同意性交の疑いが考えられる情報があり、県庁の大きな問題だと認識していた。県議会などで、議論・提示しようとは思わなかったのか。
維新の会 増山誠兵庫県議:非常にプライバシーに関わるところなので、どういう形で発信するのかというのは、問題意識は持っておりましたけれども、こういう場で何か質問をしたりしようという思いはありませんでした。
記者:プライバシーに関わる情報を、立花党首には相談するのか?
維新の会 増山誠兵庫県議:公益通報という意味で、通報するべきかを相談したということですね。
記者:情報の発信力でいうと、維新には吉村代表もいるが、なぜ立花党首に頼んだのか?
維新の会 増山誠兵庫県議:私の中で発信力があるというイメージがあったのが立花さんだったので。
こうして選挙期間中、立花党首はSNS上で、真偽不明の主張を繰り返した。
■公選法違反については「そういった認識はない」

県議たちの漏えい以降、大きく変わった風向き。斎藤知事は再選した。
選挙戦で斎藤派として支援に回った増山県議は。
維新の会 増山誠兵庫県議:いやー、本当に私としては良かったなと。真実がSNSの力によって県民・有権者の皆さまに伝わっていって、当選したということは、本当に歴史的なことだと思います。
23日の会見では、斎藤知事を支援していた立花党首に情報漏洩したことで、「『2馬力選挙』に加担したのでは?」という指摘も。
記者:2馬力選挙への加担・公選法違反のでは?
維新の会 増山誠兵庫県議:公選法違反になるのであれば、立花さんの方が、何か訴追されると思いますので、私どもとしては、そういった認識はないんですね。
さらに漏えいが、選挙結果に影響を与えたのではないかという指摘には…。
記者:漏えいが選挙結果に影響を与えたのでは?
維新の会 増山誠兵庫県議:情勢に影響を与えるかどうかは、県民の皆さまがその情報を見て、どこまで重要な情報か判断すること。より多くの情報を県民の方が知って、判断した選挙の方が、正しい選挙かなと。
■真偽不明の文書を手渡した場に立ち会っていた岸口県議 竹内元県議の死亡との因果関係は?

今回、問われているのは、選挙結果に影響を及ぼした可能性だけではない。
百条委員会の委員だった竹内英明元県議が、亡くなったこととの因果関係だ。
去年、兵庫県知事選挙が告示された翌日に…。
「竹内県議が知事失職の黒幕」などと書かれた真偽不明の文書を、民間人が立花党首に渡し、立花党首はこの文書を選挙期間中にSNSで公開。
この手渡しの場に立ち会っていたのが、百条委員会の副委員長として、公平性・中立性をもって調査するはずだった岸口県議だ。
竹内元県議は、SNS上での激しい中傷などを理由に議員を辞職し、1月、死亡した。
23日の会見で、岸口県議が渡した真偽不明の文書が、人命にかかわる結果につながってしまったのではないかと問われた。
維新の会 岸口実兵庫県議:竹内元県議がお亡くなりになられましたことにつきましては、心からの哀悼の意を表したい。ただ、今回の件につきまして、私からこれが、あれが、どうでとは申し上げるつもりもありません。もうお亡くなりになられておりますので、心からの哀悼は表したいと思います。
竹内元県議の死との関連について、明言を避けた岸口県議。
岸口県議と増山県議は、百条委員会のメンバーを辞職し、増山県議は日本維新の会に離党届を提出している。
■増山県議は次期参院線にはNHK党から出馬か

そして増山県議は・・・。
記者:立花党首が次期参院選への打診をすると言っているが?
維新の会 増山誠兵庫県議:お誘いを受けていることは事実でございます。ただ、それを受けるとも受けないとも、まだ回答しておりませんし、相手方があることなのでコメントは差し控えさせていただきたい。
他党の党首に情報を漏えいした維新の県議たち。
その波紋は、今も広がっている。
(関西テレビ「newsランナー」2025年2月24日放送)