ベラルーシで1月、30年以上の長期政権を続けるルカシェンコ大統領が9割近い得票率で再選した。
ベラルーシは、ロシアの軍事侵攻を支持して西側諸国から厳しい制裁を受けているが、食料自給率の高さなどから、市民生活への影響は限定的とされている。

容赦ない弾圧…長期政権続くルカシェンコ大統領

ロシアによるウクライナ侵攻から、まもなく3年が経過する。
その軍事侵攻を一貫して支持し、ロシアと最も近い関係にあるのがベラルーシだ。

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いったいどんな国なのか、知られざるこの国を取材した。

ロシアの首都モスクワから飛行機で約1時間半、ロシアの西、そしてウクライナの北に隣接する人口約900万人の国がベラルーシだ。

首都ミンスクを訪れると、街には外壁に装飾を施した建物が立ち並んでいた。
愛国精神を促すためか、道路沿いや建物の上、店の前など、いたるところに国旗があった。

このベラルーシで30年以上にわたり実権を握り続けているのが、“ヨーロッパ最後の独裁者”と呼ばれるルカシェンコ大統領だ。

2025年1月に行われた大統領選挙で9割近い得票率で再選し、2月に7期目の任期をスタートさせた。

ルカシェンコ大統領は、3年前のロシアによるウクライナ侵攻をいち早く支持した。
さらに、ロシアに実質的な攻撃拠点を提供し、ベラルーシは西側諸国から厳しい制裁を受けている。

ミンスク市内のスーパーに並んでいたのは、国産のジャガイモやニンジン、キュウリなどの野菜や乳製品、そして加工肉だ。

ルカシェンコ大統領は、もともと国営の農場長出身で、就任当初から農業や畜産を重視する政策を進め、乳製品は283%、ジャガイモは111%、国全体で96%と高い食料自給率を誇る。
このため、制裁を受けても市民生活への影響はほとんど見られないという。

一方で、制裁の影響を受けたものもある。
街で見つけたのは「M」のマークならぬ「ハートマーク」のハンバーガーチェーン、その名も「Mak.by(マック・バイ)」だ。

アメリカのファストフード大手・マクドナルドが撤退し、その店の経営を地元企業が引き継ぎ、2023年にオープンした。

メニューはほぼ当時のままだが、ジャガイモをすりおろして薄く焼いたベラルーシの伝統料理「ドラニキ」が人気だ。

そんなベラルーシを率いるルカシェンコ大統領は、時に突拍子もない発言や政策で国際社会を驚かせてきた。
新型コロナウイルスが拡大していた2020年には、「ウイルスが60度で死滅する」と主張し、国民にサウナを推奨した。
さらに、「ウォッカを飲めばウイルスを消毒できる」といった発言も飛び出し、注目を集めた。

ミンスク市内には「一番」と名付けられた、「ルカシェンコ・ショップ」があった。
本人の名言をプリントしたTシャツやパーカーが販売されている。
「大統領になったのではない。生まれた時から大統領なのだ」と書かれたトレーナーもあった。

一見、盤石なように見えるルカシェンコ体制だが、その裏で野党やメディアなどに容赦ない弾圧を加え、体制を維持してきた。
前回、2020年の大統領選では、市民による抗議デモが1カ月以上続き、当局が徹底弾圧した。
5万人以上の市民が拘束されたとしている。

今回の選挙では、目立った抗議の動きはなかったが、市民の受け止めはさまざまだ。

ミンスク市民:
彼は素晴らしい。よくやっているよ。

ミンスク市民:
今の生活に満足していますが、大統領を1人しか知らないので、ほかに比べられる人がいません。

「民意を体現していない」反体制派の訴え

また、2020年の前回の大統領選以降、政権は反体制派への弾圧を強めている。

オレグ・マツケビッチさんは、治安当局から複数回にわたり家宅捜索を受け、2023年、身の危険を感じて国外へ脱出し、リトアニアへ避難した。

厳しい弾圧が続くベラルーシでは、当局の意に沿わないSNSのコメントに「いいね」を押しただけで、拘束されることがあるという。

ベラルーシ反体制派・オレグ・マツケビッチさん:
ベラルーシの国家、社会は今分裂しています。ルカシェンコ政権は、民意を体現していません。

また拘束された中には、日本人もいた。
2024年には、日本人男性2人が鉄道の関連施設を撮影したとして治安当局に拘束され、今も解放されていない。

ロシアとウクライナの停戦に向けた動きが本格化する中、一貫してプーチン政権を支持してきたベラルーシの対応について、ルカシェンコ政権の判断も注目される。
(「イット!」2月12日放送より)

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