「初めてバレーボール部をもったので練習メニューがわからなくて…」。教員の負担軽減のため学校の部活動を地域のスポーツクラブなどが代替する「地域移行」。指導者を育成するための研修会でその実情を取材した。

トップチームが部活指導者を育成

1月25日、広島市南区の猫田記念体育館で開かれた研修会。国が2023年度からの3年間を「改革推進期間」と位置づけ、全国各地で運動部活動の「地域移行」に向けた取り組みが進められている。

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広島県主催のこの研修会では、課題となる指導者の確保や育成を支援。トップチームから指導スキルを学ぶことができる。

一般企業に勤めながら中学校で「部活動指導員」を担う男性
一般企業に勤めながら中学校で「部活動指導員」を担う男性

集まったのは県内の中学校に勤めるバレーボール部顧問だけではない。
ノートにびっしりとメモを取る1人の男性。一般企業に勤めながら広島市立の中学校で平日と土曜日の部活動を教える「部活動指導員」だ。報酬は1時間あたり1569円+交通費。顧問の先生が忙しく部活動に立ち会えないことも多いなかで、実技指導や大会の引率、用具の点検・管理などの役割を担っている。

広島市が2022年に行ったアンケートでは、約8割の教員が「休日に部活動」を行っており、そのうちの約7割は休日の指導を「希望しない」と回答。経験がない部活動の指導に負担を感じたり、休日の大会引率など古くからあった課題が、働き方改革とともにより一層、顕在化している。

中学校の部活動顧問のホンネは…

こうした課題を解決するため、国は地域の人材を活用し、複数の学校が一つの部活動を行う「地域連携」や地域が運営するクラブ活動に部活動を代替する「地域移行」への改革を進めている。

研修会に参加した中学校のバレーボール部顧問はこの改革をどう受け止めているのだろうか。

「悩ましいところですよね。やりたい部分もあれば、休みたい部分もあれば…」
ーー部活動の顧問になると休めない?
「そうですね。休みが週1日だったり、試合が続くと3週間休みがなかったりとか」

また別の中学校のバレーボール部顧問からはこんな意見もあった。
「私は部活でしか見られない生徒の姿もあったりするので、部活をすべてなくすというのはちょっと残念かなという気はしています。だけど、私もバレー部じゃないときはすごくつらいなと思っていた時期もあったので、自分が教えられない部活だとまた違うかなと思う」

東広島市は27年度から休日指導脱却へ

一方、県内では2024年11月に、三次市で指導者不足になっている陸上種目を東京の大学生がオンラインを活用して指導する実証研究も行われている。過疎地域における部活動の地域移行は都市部以上に課題が多い。今回、三次市から参加したのは教員ではなく生徒の保護者だった。

ーー中学校にバレー部がある?
「ないんですよ。ないので経験者の保護者が生徒に教えています。小学校と中学校が一緒になってバレー好きな子が集まって、バレーの好きなお母さん方が教えている」
生徒数が少ないためにバレー部そのものがない地域もあり、参加者はそれぞれの立場で複雑な心境を抱えながら生徒のために努力を重ねている。

広島県スポーツ推進課の田口新也課長は「地域ごとに課題は異なるので、広島県以外の他の自治体の事例も参考にしながら進めていきます」と話す。

県内の事例では、東広島市が2027年度から「休日は新たな環境でのスポーツ・文化芸術活動に変わる」と発表。平日はこれまで通り学校で部活動を行い、休日は地域で活動を行っていくというわけだ。

競技団体・企業・トップチーム・保護者有志などが運営する「地域クラブ」には以下のような形態が想定される。
【学校部活動移行型】各校の部活動を地域クラブに移す。
【合同チーム型】複数の学校の生徒を集めて地域クラブ活動を行う。
【地域サークル型】すでに地域で行われている様々な活動に加わる。
【ニュースタイル型】週替わりで種目を変えるなど、これまでにない活動。

部活動の地域移行によって教員の休日指導脱却や負担軽減につながるが、気になる点もある。
まず、平日に学校の部活動に入っていても“休日の活動は希望者のみ”になるということ。それから地域クラブへの参加費は基本的に“参加者の会費”などで賄っていくということ。そして、平日の学校の部活動は当面継続だが“段階的な縮小を目指す”という点だ。
学校の部活動が当たり前の日常だった時代から、そのあり方は大きく変わろうとしている。

(テレビ新広島)

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