前明石市長で弁護士の泉房穂さんと元朝日新聞地域報道部長で危機管理コンサルタントとして広報対応などを企業にアドバイスする久我誠さんに2回目となるフジテレビの会見からみえてきた「危機管理」の評価を聞いた。
泉房穂さん: 評価できる点「時間無制限」 評価できない点「反省なし」
久我誠さん:評価できる点「最後までやった」 評価できない点「説明責任果たさず」
■「前回の会見がひどすぎたので最低限の対応」

泉さんは「時間無制限」を評価しましたが、「前回の会見があまりにもひどすぎたので、今回は質問が尽きるまで対応するのは、最低限の対応」としたうえで、「内容は薄かった。時間が長いからよかったわけじゃないと」指摘した。
危機管理コンサルタントの久我さんは「前回はクローズドで、何も答えていない会見だった。この反省に立って、今回は全ての質問を受けるということで、事前に約束した上で会見を開き、約束を守ったうえで、10時間かかりましたけれども、最後まで登壇者は質問に答え続けたということでいえば、この会見を開く意味があった」とした。
一方で「トラブルが起きたことを把握して、情報を上層部に上げていったのか、どう評価して対応を決めていったのか。 ほぼ何も答えていない。ここが企業のガバナンスに関わる部分だったんですけど、今回も説明責任は果たされなかった」と厳しく指摘した。
■コンプライアンス部門と共有されないことは「あり得ない」

久我さんが特に問題視するのがトラブル把握後の対応だ。
危機管理コンサルタント 久我誠さん:基本的にコンプライアンスの担当にこの情報が伝わらないってことはあり得ない。センシティブな問題であるということは、女性の意に反したことが起こった可能性があるということですから、人権侵害の恐れがあると認識しなければいけない。コンプライアンス担当に伝えた上で判断しなければならないと思います。
(女性のプライバシーを保護しながらできることは)当然あった。 センシティブなことでどのように調査を進めていくか。どのように事実を究明していくか、こういう態度が必要だったが、そこから背を向けてしまった。そこが一番の問題だと思います。
■フジテレビのコンプライアンス部門は強い調査権限あるのに...
泉房穂さんもハラスメントの対応窓口であるコンプライアンス部署に共有されなかったことに首をかしげる。
前明石市長 泉房穂さん:こういう時のためのコンプライアンス推進室ですから。こういう時に隠してしまっては意味ありません。幹部社員・役員・社長まで報告がいっておきながら、そこからコンプライアンス推進室に報告がいかなかったことは、(情報を知っている)全員の責任が免れないと思います。
関西テレビの神崎報道デスクも取材で得たフジテレビ内のハラスメント対応体制と今回の対応の差に疑問を投げかける。
関西テレビ・神崎博報道デスク:フジテレビのコンプライアンス担当部署は、非常に強い調査権限を持っていて、やはりこれまでもハラスメント事案については、(被害を)訴えた側と訴えられた側の双方の意見を聞いた上で、かなり強い社内処分を出してきた。やはりこうした事案があって、最初にコンプライアンス部署に相談していれば、例えば室長の知見もありますし、コンプライアンス担当役員の遠藤副会長が知っていれば、対処法は変わっていたと思う。
■日枝氏不在で企業風土の問題が明らかにならず

そして専門家が会見を評価できないとした大きなポイントが社内で絶大な影響力を持つとされる日枝久取締役相談役が会見に出席せず、背景にある企業風土が明らかにならなかったことをあげる。
前明石市長 泉房穂さん:会長と社長は辞められましたけれども、フジサンケイグループの代表といわれる日枝さんは出てこないし、新社長も内部からの昇格。本当にこの状況での危機感はあるんだろうかと。一体何を反省して、どうしようとしてるのか見えにくかった。その結果、10時間を超える会見をしながらスポンサーも戻ってきていないし、不信感も続いてる。
これだけ大きな問題になってますから、代表の日枝さんは事実を知らなかったとしても、出てきてちゃんと会見すべきだったと思いますし、責任も執行部総退陣ぐらいだと私は感じてます。
報道では企業風土が問われてるわけですから、企業風土が原因でないのであれば、そうでないこともちゃんと説明すべきですから、やっぱり氷山の一角とも言われてる状況の中で 、今回の問題だけなのか、社内の慣習なのかも含めて、多くの人が納得できるような説明をする責任はあると思います。
■フジテレビの企業風土の礎を作った人物としての認識語るべき

危機管理コンサルタント 久我誠さん:日枝さんは(中居氏と女性との問題に関する)問題の事実を相談する役割は期待できないが、フジの風土の礎をつくった方ですから。この事態をどう受け止めているのか、その認識については語るべきだった。
第三者委員会は非常に厳しい調査をすると思います。これまでどのように調べてきたのか、従業員が聴取についてどのように答えていくのか。協力の姿勢については注目していきたいと思います。協力をすることによって、初めて事案の背景が浮き彫りになっていく。企業風土の問題まで調べられるのか。フジは全面的に協力できるのか。ここがポイントになってくると思います。
■フジテレビ幹部A氏の関与 週刊文春が記事訂正

また今回の問題が明るみにでる発端のひとつとなった週刊文春の記事について、週刊文春が訂正コメントを出した。
【週刊文春の訂正コメント抜粋】
X子さんは『フジ編成幹部A氏に誘われた』としていました。しかし、その後の取材により『X子さんは中居氏に誘われた』『A氏がセッティングしている会の“延長”と認識していた』ということが判明したためお詫びした上で修正を追記します。
X子さんは小誌の取材に対して、『事件はA氏がセッティングしている会の”延長”だったことは間違いありません』と証言しています。
以上の経緯からA氏が件のトラブルに関与した事実は変わらないと考えています。
■女性が「中居氏宅に行かざるを得なかった」と確信か

これについて危機管理コンサルタントの久我さんは次のように指摘する。
危機管理コンサルタント 久我誠さん:基本的には23年6月のトラブルがあった当日については、A氏の直接の関与はなかったということだと思います。ただし、『延長』という言葉を使っている通り、そういう土壌を生んでしまった。X子さんがそういう場所に行かざるを得ない状況を作ってしまった責任があるということを週刊文春は疑っていないということだと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年1月28日放送)