毎年、全国で約18万人の刑法犯が検挙され、そのうち半数近くが過去に犯罪歴のある再犯者だ。一体なぜ、彼らは再び犯罪の道へと踏み込んでしまうのだろうか。社会復帰の難しさと、その壁を乗り越えようとする取り組みに迫る。
再犯の現状 - 数字が語る深刻な社会問題
再犯者の数は、1996年を境に増加し始めた。

2006年には14万9164人でピークを迎え、その後緩やかに減少していたが、2024年は前年比約6%の増加があった。

長年、元受刑者の就労支援などに取り組んできた愛媛県更生保護会の佐伯正夫理事長は、再犯が後を絶たない現状について、「再犯している人は、働いていない人、住まいが無い人だ」と受け入れ基盤がないことを指摘する。
元受刑者たちが直面する最大の課題は、まさに生活の基盤となる「仕事」と「住居」の確保だ。

元受刑者の60代女性は「出所者は住むところがない、お金がない。そうなると仕事をするとしても、まず基盤になる場所がない」と困難を語った。
松山市を中心に活動する愛媛県更生保護会は、元受刑者に住む場所を提供するなどサポートをしながら自立を促している。しかし、対応できる人数や期間には限りがあり、施設のサポートが無くなると元受刑者の更生や再就職は非常に困難だという。
社会復帰を阻む壁 - 偏見と不安の連鎖
元受刑者たちは、就職活動において様々な困難に直面する。
愛媛県更生保護会の佐伯正夫理事長は元受刑者の就職について、「やっぱり外へ出て働きたいという方は多い。けど企業側が受け入れてくれない。」と難しさを語った。

別の60代女性は、職場での経験を振り返り、「接客業に就いたんですが、私の過去を知っているお客さんが"あの人こうなんだよ"と従業員に言って、それで居づらくなって辞めたこともありました」と話した。
また、30代の女性は、「就職しても、いつかバレてしまうんじゃないかとか、社会の時事的な話題についていけなかったりするので、一般企業への就職というのは難しかった」と吐露した。

さらに危険なのは、出所直後の脆弱な精神状態だ。30代の女性は「刑務所を出てすぐに昔の仲間に会ってしまうと、ついついそっちの方が居心地がいいので、どうしてもそっちに流れてしまいます」と話した。
常に不安な気持ちを抱えて働いているうちに、再び犯罪の道に走ることも少なくない。
希望の光 - 元受刑者を受け入れる企業の挑戦
そんな中、松山市のテント製造販売会社「輝城」が、元受刑者の社会復帰に大きな役割を果たしている。栗田雅則社長は、「元受刑者」とひと括りで拒絶せず、全てを受け入れ人生の再建を後押したいと考えている。

栗田雅則社長:
「受刑者というのも軽犯罪の方なんかは、話を聞いてみると魔が差してという話が多いもんですから、会社の戦力として働いていただけるんではなかろうかという思いもありました」

従業員26人の「輝城」は2017年に障がい者雇用から始まり、2018年には元受刑者の雇用を開始。これまでに20人以上を受け入れ、現在は元受刑者4人が在籍し、テント生地の裁断や縫製などの作業に携わっている。
栗田雅則社長:
「わが社においては私および社員の抵抗感っていうのは感じとることは私はなかった。働きぶりはすごく戦力になってます」
再起への希望 - 人間性の尊重と可能性の再発見
先ほどインタビューに答えてくれた彼女らもこの会社に就職するまで社会復帰の難しさを感じ再犯を繰り返してしまったそうだが、輝城は単なる職場以上の存在で、それぞれ再起の誓いを語った。

元受刑者の60代の女性は、「今までは自立は自分一人でやらなきゃいけないと思ってましたが、ここに来て皆さんに支えてもらって、一日一日過ごしていけることの、本当の人と人との繋がりの温かさというのを身に染みて感じました。もう絶対皆さんを裏切ることは私はもうしたくありませんし、一日一日大事に過ごしていけたら」と話した。

30代の女性も、「この会社で雇っていただけて、まず一つ会社に貢献していかなければならないということと、自分自身の私生活を立て直す。今までちゃらんぽらんな生活をしていたので、きちんとした人生設計を立ててやっていきたい」と語った。
社会全体への呼びかけ - 再犯防止への道
栗田社長は、2023年に犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える保護司の委嘱も受けた。

栗田雅則社長:
「皆さんが思われるような犯罪を犯すんじゃなかろうかとか、何かするんではないかというのは、ちょっと違うかなという風に今までの元受刑者を見ると思います。可能な限り採用はしていきたいと思います」
元受刑者を偏見の目で見ずその人の過去を知り人生を未来へつなげるため、社会全体での支えが求められている。
(テレビ愛媛)