国内唯一の「ホーバークラフト」は大分県の県都・大分市と大分空港のアクセス向上に向けて運航準備が進められてきた。そして2024年11月、まずは「別府湾周遊」のコースで就航した。空港を結ぶ定期便は年末までの開始を目指すという。
なぜ、大分のホーバークラフトが15年ぶりに復活したのか。1971年の最初の運航開始から、これまでの経緯をまとめた。
かつてのホーバークラフトは2009年廃止 11年後に復活の方針決定

以前のホーバークラフトは大分空港と大分市の西新地の間で、1971年に運航が始まった。
ピーク時の1990年には約44万人が利用したが、利用客は次第に減少。高速道路が整備され、車での空港へのアクセスが向上して以降、さらに低迷した。
売り上げの落ち込を受け、2009年、当時の運航会社の大分ホーバーフェリーは大分地方裁判所に民事再生手続きを申し立てたが結局、立て直しには至らずホーバーは38年の歴史に幕を閉じた。
そのホーバークラフトの復活を巡る議論が持ち上がったのが廃止から9年後の2018年。
課題となっていたのは大分空港と大分市中心部の間の移動時間だ。
大分市と空港の間には特急バスが走っているが、ホーバーでの所要時間は約30分だったのに対し、特急バスは約1時間。ビジネス客を中心にアクセス向上を求める声が上がっていた。
こうした状況を受け、県は交通事業者や自治体関係者などで作る研究会を立ち上げ、海上ルートが実現できるかの検討を開始。
高速船とホーバークラフトの2案で検討した結果、2020年に所要時間が短く既存施設を利用できるといった利点があるホーバー案が採用された。
2023年8月 ついにホーバークラフトの1番船が大分に到着

復活案の採用から約3年後の2023年8月、イギリスで製造されていたホーバークラフトの1番船「Baien(バイエン)」が大分に到着。そして、9月に納入された。
ただ、製造過程で船体の一部の部品が破損するトラブルがあり、納入は予定より約2か月遅れとなった。
操縦訓練は度重なる事故のアクシデントも
ホーバーの運航は大分第一ホーバードライブが担い、操縦訓練が2023年11月に始まった。
しかし、アクシデントが続く。まず訓練初日、空港側の発着場で1番船「Baien(バイエン)」がガードレールに衝突し、船体が損傷する事故が起きた。けが人はいなかったが、訓練は中止となった。
結局、1番船「Baien」の修理は2024年8月末までかかった。

2024年2月、大分第一ホーバードライブは2番船「Banri(バンリ)」を使って、操縦訓練を再開したが、大分空港側の発着場で3月と4月に再び事故を起こした。
さらに、7月にも大分市側の発着場で船体がスロープに接触する事故が発生。
こうした事故を受け、現在は大分空港側と大分市側の両方の発着場に、衝突に備えるクッション材を設置するなど安全対策がとられている。

そして国は2024年11月15日にホーバーの運航許可を出した。
その後、安全確認検査に合格したことを受けて、大分第一ホーバードライブは、別府湾を周遊するコースでの運航を11月30日から開始することを決めた。
この別府湾周遊コースでの運航はひとまず土日のみの1日4便で行われる。
ついに迎えた開業初日 ターミナルには長い列が

こうして迎えた開業初日。大分市のターミナルには、乗船を楽しみに待つ人の長い列が出来ていた。客を乗せたホーバークラフトが15年ぶりに別府湾へ。

30分ほどかけて16キロのコースを巡るこの周遊コース。
乗客からは「ふわっと浮いている感覚がして、でも海の上を走っているというのが不思議な感覚」「周遊なのでぐるとまわって終わりなのかなと思ったが、いろいろなホーバー挙動を実演してもらって、初めて体験することができた」などと言った声が聞かれ、独特の乗り心地を体感した様子だった。

大分市と空港を結ぶ定期便については、改めて行われる国の安全確認検査に合格した後に運航を始める予定で、大分第一ホーバードライブは年末までに就航させることを目指している。
日本で唯一となるホーバークラフト。順調にいけば、空港アクセスとしての運航も15年ぶりに復活する。
(テレビ大分)