選挙活動に違反はあったのか?
兵庫県知事選挙で、“斎藤知事が公職選挙法に抵触している”という指摘が相次ぐ中、知事本人が取材に応じた。
【動画】斎藤知事の『SNS戦略』PR会社へ「70万円支払った」が「抵触していない」と疑惑否定
■再選後、初めて全国知事会に出席 “公選法違反の疑惑”について記者から質問相次ぐ

再選後、初めて全国知事会に出席した、兵庫県の斎藤元彦知事。
自らほかの知事たちにあいさつ回りをした。
会議終了後、記者たちから質問が相次いだのは、斎藤知事の周辺で起こった“新たな騒動”について。
(Q.公選法違反の疑惑について、SNS全般を任せ広報のお金を払っていた?)
兵庫県 斎藤元彦知事:今回の件について、公職選挙法違反になるような事は、私はないと認識しております。ポスターの制作など、そういった制作物を依頼したのが事実でございます。
■“さいとうムーブメント”を作りだしたのは…自然発生?PR会社が企画?

問題となっているのは、圧倒的な得票数で斎藤知事を再選へと導いたとされる、SNS上の「一大ムーブメント」。
ここへきて、この「ムーブメント」をプロが企画した可能性が浮上しているのだ。
陣営によると、「公式のSNS担当」が1人いた一方、それ以外の「デジタルボランティア」は400人にまで増えたという。
斎藤知事は再選直後、「支持の広がりは自然発生だった」と述べていた。
兵庫県 斎藤元彦知事(11月17日):われわれもネット戦略として、自分たちなりにやっていたという面もありながら、やはり今回、自然発生的に出てきた、まさにSNS上の草の根ですね。SNS上でのいわゆる勝手連的な形でいろんな方に応援をしていただくと。

一方、兵庫県内のPR会社を運営する女性が、11月20日にネット上に発表したコラムによると。
PR会社代表のコラム:SNSを活用して、『斎藤知事を応援したい』、『兵庫をよくしたい』という想いをプラットフォーム化し、ムーブメントを起こす。
“斎藤知事から広報を任された”という、このPR会社の代表は、初めはプロフィール写真の撮り直しなどから始まり、「『さいとう元彦応援アカウント』を立ち上げ、斎藤知事本人のXがフォローする」ということも提案していたとコラムで明かしている。
PR会社代表のコラム:私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などを責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました。
また、選挙カーからの配信に関わっていたことも明かしている。

これについて、公職選挙法に詳しい金子弁護士は…。
公職選挙法に詳しい金子春菜弁護士:広報・SNS戦略について、そのような仕事を“会社が手がけた”という記載がありますので、一般論として業者が主体的・裁量的に選挙運動に関わる業務を行う場合において、対価が発生するとなってしまうと、公職選挙法221条の、買収罪に該当する恐れが高い。
もし、PR会社が「主体的」にSNSを手掛け、報酬が払われていれば、捜査の対象になる可能性もあるという。
■疑惑に対し、取材に応じ「公職選挙法に違反する事実はない」と繰り返す斎藤知事

疑惑に対し、斎藤知事はさきほど取材に応じた。
(Q.お金は払われているわけですね?)
兵庫県 斎藤元彦知事:そうですね。制作費として70万円ほど支払っています。
(Q.選挙カーの上に乗って、SNSを運用を任せていて、斎藤さんの仕事を直接やったのでは?)
兵庫県 斎藤元彦知事:SNSについてはあくまで、斎藤、斎藤事務所が主体的にやっていた。(PR会社の女性は)ボランティアとして、個人で参加されたと認識しています。私としましては、公職選挙法に違反する事実はないと認識しております。
(Q.ポスターの制作する人が、なぜ選挙カーに乗ってSNS配信をしていた?)
兵庫県 斎藤元彦知事:そこを含めて、いま弁護士代理人が対応を考えていますので、私としては公職選挙法に違反するような状況ではないというふうに認識しております。繰り返しになりますけども、公職選挙法に違反するような事実はない。
斎藤知事は「公職選挙法に違反する事実はない」と繰り返した。
(Q.知事ご自身の言葉で、しっかり説明するのはいつになるんですか?)
兵庫県 斎藤元彦知事:内容について代理人が、確認してもらってますので、また相談しながらどのような対応していくか考えていきたい。
(Q.ブログへの受け止めは、事前に出すと相談あった?)
兵庫県 斎藤元彦知事:私は存じてあげてないですね。いずれにしましても、公職選挙法に抵触するような事実はないと認識していますし、今後の対応は代理人弁護士と相談しながら対応やっていきます。
■食い違う両者の主張…

PR会社と斎藤知事で主張が食い違っている。
*PR会社
広報全般を任せて頂いた(運用戦略立案、アカウント立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画など)
*斎藤知事
・SNS戦略の企画立案などを依頼した事実はない
・ポスター制作などで約70万円は支払った
・代表は個人ボランティア
■企画・立案にお金を払うと買収か…

前明石市長 泉房穂氏:公職選挙法というのは、解釈が非常に割れる法律です。
それゆえ、このテーマについては総務省がガイドラインを作っています。
(ガイドラインの該当ページを読み上げます)
業者に選挙運動用ウェブサイトや、選挙運動用電子メールに掲載する文案を主体的に企画・作成させる場合、報酬を支払うことは買収になるか?という問いかけに対し、その答えが、
「業者が選挙運動の“企画立案”を行っている場合は、選挙運動の“主体”であると解され、報酬の支払いは買収となる恐れが高い。尚、助言を受ける場合も、報酬の支払いは買収となる恐れが高い」
という話ですから、まさに「企画・立案」に対してお金を払うと買収の恐れあり」というのが、総務省の見解です。
■報酬なしでも、企業の労力提供は寄付行為にあたる

[報酬の有無について(神戸学院大学 上脇教授監修)]
*報酬の支払いあり 違法
*報酬の支払いなし
・個人によるボランティア 合法
・企業として労働提供=政治資金規正法の寄付行為にあたる可能性があるので、違法にあたるかもしれない
Q:今回は、ポスター制作代70万円の支払いはしているということですが、この額についてはどうお考えですか?
前明石市長 泉房穂氏:選挙の実務の多くは、(選挙)の前後すぐに払うものだけではなく、後払いも多くあります。
ですから、この70万がすべてなのか、一部なのかの確認もいりますし、70万の詳細を確認しないとなんとも言えないですね。
一連の県知事選、すべてがそうでしたが、事実がどうだったのか割れている状況で、今回の件もそうです。
いずれにしても、何が本当で、何が誤りなのか、ひとつひとつ確認をする必要があります。
現時点では、70万円は何のためのお金だったのか、ボランティアとのことですけど、チームだったのか個人だったのか、事実の確認が必要でしょうね。
まずは事実です。
お金がいくらだったのか、次にどのように解釈したのか。
その時に、ガイドラインを参考に、法律解釈していくことになると思います。
場合によっては、手続き的には(買収罪にあたれば)連座制の適用の余地もゼロではありません。
いずれにしても、スタートは事実の認定だと思います。
少なくとも会社の方は、しっかりと説明をすべき状況にあると思います。
■選挙は「無償ボランティア」が大原則

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:そもそも選挙というのは、基本的には「無償ボランティア」というのが大原則です。一部、ポスター制作とか、うぐいす嬢とか、単純な作業についてはお金を払うことは認められていますが、基本的には無償でないといけません。
そういった中で、今回、知事側としては、否定をしている、あくまで個人ボランティアだということですが、最終的に判断するのは捜査機関ですから、今回、選挙違反があったかどうかは、捜査機関が判断していくと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2024年11月25日放送)