厚生労働省が、「在職老齢年金制度」の見直しを検討していることが明らかになった。
現在、働きながら一定の収入がある高齢者の年金が減額される仕組みが、働く意欲をそいでいるとの指摘があるためだ。
働き損を解消する見直し案…年金給付額が4500億円増の試算も
働きながら年金を受け取っているみなさんに朗報となる。
働いて一定の収入がある方の年金を減らす、「在職老齢年金制度」に大きな動きがあった。
厚生労働省が、働く意欲をそがないよう、制度を見直す方向で調整しているという。

19日のテーマは「高齢者の働き損解消でカバーするのは?ソレってどうなの」だ。
青井実キャスター:
まずは、今回話題になっている「在職老齢年金制度」とは、どういったものなのか、確認していきます。この制度は、働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らすというもので、65歳以上で賃金と年金が、あわせて月50万円を上回る人が対象となります。
働く高齢者がどんどん増えている中、この仕組みが「働く意欲」をそいでいるとの指摘があります。具体的な例で、どういうことなのか見ていきます。

青井キャスター:
例えば、毎月の年金額が20万円で、賃金が40万円あると、合計60万円になります。そうすると、50万円を超える10万円の半額、5万円の年金が支給されなくなります。つまり年金支給額が5万円減ってしまうため、“働き損”だと感じて、働かなくなる人がいると指摘されていました。
制度の見直しで、“働き損”を解消し、働く人を増やすことで、人材不足の緩和につなげる狙いが、厚労省にはあるとみられています。
街の高齢者の皆さんに聞きました。
80代:
年金が25万円、別の収入が50万だから、あわせれば75万だね。(制度変われば)それはもちろんうれしいよ。孫にお小遣いもいっぱいあげられるし。
60代:
一番考えないといけなのは、子どもたちの代にしわ寄せがいかないようにするのが第1条件。それさえクリアできれば、「50万円の壁」がなくなることに越したことはない。

青井実キャスター:
厚労省は、年金が減らされる基準を62万円や71万円に引き上げる案と、制度そのものを廃止する案を検討中ですが、一方で、制度を廃止した場合、年金給付額が4500億円増えると試算されています。
社会保険労務士の渋田さんによると、高齢者の収入が増えることにはなるものの、問題もあると言います。
社会保険労務士・渋田貴正氏:
年金の給付額が増えるので、その分保険料をどこかから調達しないといけない。今議論されているパートタイマーの社会保険が適応されるので、現役世代にとっては、下振れ要因になる可能性がある。
「標準報酬月額」の上限引き上げも検討
青井実キャスター:
ーー今の現役世代の年金が減るかもしれないという指摘に対し、山口さんはどう思いますか?

スペシャルキャスター・山口真由氏:
少子化時代に年金の賦課方式は、ちょっと根本的に問題がある気がしますね。
青井キャスター:
あとは若い世代にとっては不公平感もありますよね。では、負担が増えるといわれる現役世代の方に聞いてきました。
20代:
制度自体はいいかなと思う。将来的に働く中で、その分取られていくわけじゃないですか。それを考えるとちょっと…ねぇ…。「困るな」っていうのが正直な感想としてあります。
40代:
所得が増えるのは年齢に関係なく必要なことで、いいことだと思う。僕らの世代が年金をいただく世代になった時は、それはそれで考えればいいんじゃないか。先のことばかり考えて今を厳しくするのは違うかなと思う。
青井キャスター:
これとは別に、厚生年金に加入している高収入の会社員に保険料をもっと負担してもらおうと、保険料を算出する元となる「標準報酬月額」の上限を、現在の65万円から10万円以上引き上げる案も検討されています。

青井キャスター:
これにより、高収入の人の保険料は増えますが、国全体の将来の年金が増え、低所得の人の年金も増えることになります。厚労省は「在職老齢年金」について、審議会や与党などとの協議を経て、2025年の通常国会に必要な法案を提出したいとしています。
(「イット!」11月19日放送より)