「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性を殺害した罪に問われている元妻の裁判員裁判で、検察側は18日、無期懲役を求刑した。
■異例の裁判 「事故や自殺だと、偶然が重なりすぎている」と無期懲役を求刑

須藤早貴被告(28)は2018年、和歌山県田辺市で、元夫で資産家の野崎幸助さん(当時77歳)に覚醒剤を摂取させて殺害した罪に問われているが、初公判から一貫して無罪を主張している。
直接的な証拠がない中、検察側は異例ともいえる28人の証人尋問を実施。
その中には須藤被告に“覚醒剤”を売ったという売人も出廷した。

一方、今月に入って3回行われた被告人質問。
須藤被告は覚醒剤の売人と接触したことは認めたものの、野崎さんから頼まれて購入したと説明。自殺や事故の可能性を主張した。
しかし、18日の裁判で検察側は冒頭、「殺人事件であること、被告人が犯人であることは十分に証明された」と述べた上で…。
検察:被害者の命が奪われ、財産も奪われた結果は重大。反省の態度がなく、証拠を見て弁解を組み立てて話しているのは明らか。
このように指摘。
また、事故や自殺だとすると偶然が重なりすぎていることに触れ、「須藤被告が犯人であれば行動が自然で、犯人でなければ行動が不自然になる」とし、須藤被告に無期懲役を求刑した。
この時、須藤被告に動揺する様子はみられなかった。
■須藤被告は『検索マン』「覚醒剤をどう飲ませるか?は検索していない」と弁護側指摘

一方、弁護側は最終弁論で、何でもスマートフォンで検索する須藤被告を「検索マン」と表現し…、
弁護側:どう飲ませるか。誰もが感じる疑問を、一切検索していない。
「どのように飲ませたのかの議論をせずに、須藤被告が殺害を実行したかは議論できない」と指摘した。

そして、直接証拠が出てきていないことについて、
弁護側:うすい灰色をいくら重ねても、黒にはならない。
検察側の証拠で「間違いない」と言い切れるのか、裁判員に訴えた。
審理は18日で終わり、判決は12月12日に言い渡される。
■「かつてなかった稀有な裁判」 裁判員はどう判断するのか

検察は元妻の須藤早貴被告に無期懲役を求刑した。
直接的な証拠がない中での裁判員裁判で、番組コメンテーターの共同通信社の太田編集委員は「裁判員制度の今後に一石を投じる」と話す。
共同通信社 太田昌克編集委員:直接的な証拠がない中で、十分に状況証拠は固めたとそして、この裁判においても、裁判員の心証を決定付ける証拠を、ある程度示したという自信の表れである反面、恐らく裁判員の皆さんはわれわれのような市民ですから、プロではないから悩まれる局面が出てくるかもしれない。その個々の、おひとりおひとりの受け止め方によって、有罪、無罪の判決が左右されるということで、かつてなかった稀有な裁判になってくると思います。この結果が、裁判員制度の今後に一石を投じる可能性があると思います。
それだけ注目されている裁判なのだから、裁判員の方の負担も大変大きい。

なかなか直接証拠がなく、状況証拠を積み上げているという段階で、被告は否認しているこの裁判について、関西テレビの加藤報道デスクはこのように話す。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:今回、警察側もかなり緻密に情報、証拠を集めて、裁判に臨んでいると思います。事故死や自殺ではない理由として、検察側は『致死量を接種していて、分量を間違えたとは思えない』という主張していたり、『そもそも被告人は、証拠を見て弁解を組み立てている』と指摘していますので、そういった丁寧な主張を裁判員がどうくみ取って判断するかというところが、やっぱり注目ですね。

大変難しい判断になる。12月12日に判決が言い渡される。
(関西テレビ「newsランナー」2024年11月18日放送)