東京電力・福島第一原子力発電所2号機では、11月2日に溶け落ちた燃料などが冷えて固まった燃料デブリが事故後初めて格納容器の外に取り出された。11月7日、東京電力は取り出した燃料デブリを強い放射線に耐えられるコンテナに入れる作業を行い、一連の試験的取り出しを完了させた。
取り出された燃料デブリは、直径5ミリほど、重さ3グラム以下とみられている。今後、茨城県の研究施設に運び、燃料デブリに含まれる物質から事故の詳しい状況などを分析する計画だ。
取り出した後はどうするの?
取り出した燃料デブリは、日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗研究所と原子力科学研究所、日本核燃料開発株式会社(NFD)、MHI原子力研究開発株式会社(NDC)の4つの施設で分析が行われる。
この記事の画像(6枚)研究施設はどんなところ?
調査を行う研究施設のひとつ、JAEAでは、1979年にアメリカ・スリーマイル島の原発事故で発生した燃料デブリの研究も行ってきた。
デブリの線量は極めて高く、厚さ1メートルの鉛入りガラス越しで取り扱われるなど、施設の中でも特殊な設備がある場所で実施される。
福島テレビがこれまでに実施したJAEAへの取材では、
■スリーマイル事故:溶け落ちた燃料が圧力容器のなかに留まった
■福島第一原発事故:燃料が圧力容器を突き破り格納容器の底にあるコンクリート等と混ざり合った
という点に違いがあり、研究者は「核燃料が格納容器の下に流れコンクリートと高温で反応したというのは福島第一原発事故以前には前例がない」としている。また、コンクリートなどと混ざり合うことで「デブリそのものの量が増えた」ことも考慮しなくてはならない。
JAEAでは、核燃料の主な成分であるウランに、金属やコンクリートなどを混ぜた「模擬デブリ」を使った研究を進めている。様々なパターンでこの「模擬デブリ」を作っていて、第一原発から取り出された燃料デブリがどのパターンに近いかなどを分析しながら、事故時の状況を明らかにしたい考え。
事故状況が分かるとどんなメリット?
東京電力は福島第一原発の1~3号機には合計で880トンの燃料デブリがあると推計している。
道路脇の側溝のフタのようなグレーチングにこびりついているものもあれば、原子炉本体「圧力容器」から溶け落ちた状態で固まり”つらら”のようにぶら下がっているもの、格納容器底部に固まっているものなどがあると推定されるが、取り出したデブリの内部から「当時の温度」「固まり方(ゆっくり?急激?)」などが分かることで、デブリの分布の仕方や”固さ”などの推定につなげられる可能性がある。
レーザーなどで切ることができるものなのか、細かく切り出して取り出すことが可能なのかによって、今後のデブリ取り出しの方法を考え直す必要があるため、取り出しや分析が無事に進めば、廃炉に向けての重要なデータが得られる見通し。
国と東京電力は2051年までに廃炉を完了させるとしている。
(福島テレビ)