10月末となりながらも、秋らしさが感じられない日々が続いている。全国的に高温傾向の中、長崎では「紅葉」やコスモスといった秋の訪れに異変が起きている。
雲仙仁田峠の紅葉は全体の1割
長崎・島原半島にある国立公園「雲仙仁田峠」。

秋は山肌が赤やオレンジに染まり、紅葉が楽しめるスポットだ。山頂までのロープウェイでの紅葉見物は圧巻で、「山のサンゴ礁」と呼ばれるほど木々が色づき、訪れる人の目を楽しませる。

2023年10月25日の様子。ロープウェイから妙見岳に向かう山肌は美しい紅葉が始まっていた。

しかし今シーズンの同じ日、紅葉は全体でまだ1割ほどで緑のままの木々が多く、色づきが進んでいない。
紅葉を期待して訪れた人も「紅葉どうかなと思って来たけど、早い感じ。暑いからですねぇ」と、戸惑いを隠せない。

雲仙岳では10月に入ってからも平年より気温の高い状態が続いている。紅葉は最低気温が7度以下になることなどが条件とされるが、10月の雲仙岳の気温はそれより高いままだ。
標高1330mの山頂付近は、例年だとこの時期は日中の気温も一桁台だが、2024年10月25日は午前11時で18度。半袖姿の人も多かった。
暑さで「ツツジ」 違う秋の楽しみも
高温で、モミジやマユミなど紅葉する樹木だけでなく、他の木にも異変が見られる。

仁田峠では初夏に咲く「ツツジ」が咲いていた。雲仙ロープウェイの担当者も「通常だとツツジが咲くのは5月中旬くらいだが、あまりに暑くて間違って咲いていますね」と話す。

これだけの量のツツジが秋に咲くのはあまり見ない光景だという。
仁田峠の紅葉、2024年の見頃は11月末頃までずれ込みそうだ。一方で色づきが遅れて、期待できることもあるという。「紅葉」の見頃が「霧氷」の時期と重なる可能性がある。冷やされた水蒸気が氷となって木々や葉につく「霧氷」が、色づいた葉につくのではないかというのだ。2024年は「紅葉」と「霧氷」の共演が楽しめるかもしれない。
コスモス咲かずにイベント中止
「異変」は秋を代表する花にも影響を与えている。

諫早市高来町深海地区のフラワーゾーンは秋になると300万本のコスモスが約3haの一面に広がる。しかし、2024年は…

広い敷地にコスモスはまばらにしか咲いていない。異変は咲いているコスモスからもわかる。

例年だと花の高さは1mを超え、大人の腰の高さほどまで成長するが、2024年は成長していないのだ。30cmほどまでしか育っていないものもあり、毎年見頃の時期に開かれる「コスモス祭り」は中止となった。
コスモスは、地元住民でつくるNPO法人「拓生会」が毎年種をまいて育てている。吉田建規事務局長は「本当に悲しい限り。夏の異常な高温、それにつきるでしょうね」と肩を落とす。2024年は8月に種をまき、一度芽が出たものの雨が降らずに枯れてしまい、何とか花を咲かせようと再度9月初めにも種をまいた。

しかし雨が降らず、生育が遅れている。今育っているコスモスは11月中旬が見頃になる予定だ。「来年はぜひともきれいな花を咲かせたい」と話す。
気象庁によると、11月いっぱいは平年より気温が高い状態が続く見込みで、2024年は特に「秋」を感じる時間が短くなりそうだ。
(テレビ長崎)