AI(人工知能)の発展に大きく貢献した2人の学者、ジョン・ホップフィールド氏とジェフリー・ヒントン氏がノーベル物理学賞を受賞した。
“AIのゴッドファーザー”と称されるヒントン氏は、AIの危険性について警鐘を鳴らしている。

AIの「生みの親」と「育ての親」

8日の夜、ノーベル物理学賞にジョン・ホップフィールド名誉教授(91)とジェフリー・ヒントン名誉教授(76)が決まった。
「AIのゴッドファーザー」とも呼ばれるジェフリー・ヒントン名誉教授について解説する。

ノーベル物理学賞を受賞した2人
ノーベル物理学賞を受賞した2人
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遠藤玲子キャスター:
私たちの生活に欠かせない便利なサービスや、アノ人の偉業も、この2人がいなかったらなかったかもしれません。

画面を触らずにロックを外せるスマートフォンの顔認証や、留守の間に部屋をきれいにしてくれるお掃除ロボット、さらに、「令和の最強棋士」藤井聡太7冠も将棋上達のために使っているもの、それが「AI」です。

スペシャルキャスター パトリック・ハーランさん(パックン):
ほかにも、信号のタイミングや自動運転のバス、音声認識や翻訳などにも活用されています。

遠藤キャスター:
人工知能学会の会長でもある慶応大学・栗原聡教授によると、アメリカ・ブリンストン大学のジョン・ホップフィールド名誉教授は、AIのもととなる技術を確立した、いわば「生みの親」だと言います。

もう1人が、AIのゴッドファーザーであるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授で、その技術を使い、実用化へ近づけた「育ての親」だということです。

スペシャルキャスター パトリック・ハーランさん:
AIにくわしい人の中では有名ですが、アメリカでもまだ有名ではありません。

ホップフィールド氏とヒントン氏が確立した技術
ホップフィールド氏とヒントン氏が確立した技術

遠藤キャスター:
例えば、多くの画像の中からAIを使って犬を判別するとします。ホップフィールド名誉教授は、人間の脳にヒントを得て、コンピューターに犬の特徴を連想させ、記憶させる技術を確立しました。

そして、ヒントン名誉教授がその技術を使い、実際の画像から犬の特徴を自動で見つけ出し、犬と判別する仕組みを作りました。

生活を便利に変えたAIの発明ですが、ノーベル賞発表の際のインタビューで、ヒントン名誉教授はAIの危険性について警鐘を鳴らしました。

AIの危険性に警鐘を鳴らすヒントン教授
AIの危険性に警鐘を鳴らすヒントン教授

ノーベル物理学賞・ヒントン教授:
AIが莫大(ばくだい)な利益、生産性の大幅な向上、人々のより良い生活につながることを期待しています。医療分野ではそうなると確信しています。私が心配しているのは、人間よりも賢いものが登場したときに、AIが悪いことにもつながるかもしれないということです。人間がそれらを制御できるかどうかは、誰にも分かりません。

人工知能学会会長 慶応大学・栗原聡教授:
いろいろな意見があるんですが、ヒントン先生が言われていることは決して間違っておらず、その懸念はあります。いいことに使えばすごい能力を発揮するんだけれども、それを同じように悪さに使うときにも同じ効果出しちゃうんですね。

ゼレンスキー大統領のフェイク動画も出回る

遠藤キャスター:
実はヒントン教授は、AI技術で最先端を行くGoogleに勤めていましたが2023年、突如退社しました。その理由は、AIの危険性について発言するためでした。フェイク画像などの問題も起きていますよね。

ゼレンスキー大統領のフェイク動画
ゼレンスキー大統領のフェイク動画

スペシャルキャスター パトリック・ハーランさん:
アメリカでは選挙でも、「テイラー・スウィフトさんがいかにトランプ前大統領を応援しているか」という、AIを用いたフェイク画像が広まりました。また、ウクライナのゼレンスキー氏のAIを用いたフェイク動画も出回りました。真実とウソの見分けがつきづらくなっています。

遠藤キャスター:
ヒントン教授は、8日の受賞発表の際にこんなことも言っています。

ノーベル物理学賞・ヒントン教授:
多くの優秀な研究者が今後20年以内に、AIが人間よりも賢くなると考えている。

遠藤キャスター:
近未来の映画でよくあった話が、もう現実になりそうだということですよね。

スペシャルキャスター パトリック・ハーランさん:
今まではAIの得意分野、不得意分野が結構分かれていました。人間にしかできないものもあったと思われていましたが、ヒントン教授が「人間だけのものがもうなくなってしまうんじゃないか」と、AIがギャグを解説できるようになった時にそう思ったそうです。ユーモアの仕組みまで分かると、この先も、われわれお笑い芸人の仕事も奪われていくんじゃないかと思います。

またヒントン教授は、受賞の報告の電話がかかってきた時に「これはAIのなりすましだろう」と本人も警戒したそうです。でも、そこでスウェーデンなまりでしゃべっているから、本物だと気づいたということです。
(「イット!」10月9日放送より)

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