日中、巡回パトロールに出かける警察官にとって眩しい太陽の光は交通事故の原因になったり、紫外線で目を痛めたりするため、愛媛県警察は2024年7月から業務中のサングラスの着用を認めている。

しかし、威圧感を増す可能性のあるサングラス着用についてどう周知すれば良いのか? 愛媛県の愛南警察署が編み出した奇抜な広報戦略が、今、ネットを騒がせている。
「愛南町は眩しい」驚きの投稿の真相
愛媛県警察の公式Xアカウントに2024年8月に投稿された1枚の画像。

「愛南町は眩しい!soサングラス装着します」というキャッチーな文言とともに、警察官が奇妙なポーズをとっている。この投稿は瞬く間に拡散し、投稿から約1カ月で4万近くの「いいね」を獲得。150万回近く閲覧され、通常の投稿の約1000倍もの注目を集めた。(2024年9月11日時点)
その秘密は、35年以上続く人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」にあった。警官のポーズが、同作品のキャラクターたちの決めポーズ「ジョジョ立ち」を模していたのだ。

ある東京からの観光客は「あっジョジョかな。ジョジョ立ちだ」と即座に反応した。ジョジョファンを自認する愛南町民は、このポーズを90点と評価。残りの10点については「効果音がないんですよ」と、こだわりを見せた。

「ジョジョ立ち」の特徴について、取材した青木記者は「ジョジョ立ちの特長は身体全体をダイナミックに使いつつも、指の動きなど細部まで美しく見せることにあります」と解説し、実際にポーズを披露した。
ジョジョ知らずの警官とファン上司
人口約2万人の愛南町。その治安を守る愛南警察署に、話題の「ジョジョ立ち」警察官を訪ねた。

「はい私です」と答えたのは、米山毅巡査(27)。「自動車警ら係としてパトカーに乗って愛南町を守っています」と語る彼は、指先から足の置き場まで完璧な「ジョジョ立ち」を披露した。
しかし意外なことに、「いやすみません。ジョジョ自体は読んだことありません」と率直に語った。

実はこのアイデアを思いついたのは、上司の織田麻衣子巡査部長だった。「コミックは全部集めて、アニメも全部見て、かっこいい」と熱く語る彼女は、まさに「ジョジョ」の大ファン。取材中も部下の「ジョジョ立ち」チェックに余念がなかった。

織田巡査部長は広報の狙いについて、「広報の仕事するときに、なかなか思いが伝わらない、見てもらえないっていうのが今までの経験で痛感するところで、まず伝えたいことを知ってもらうには注目してもらう。視線をこっちに向けてもらうことが大事だなと思ったのでインパクトのあることをしたいなと思って」と説明した。
署全体を巻き込む「ジョジョ」旋風
織田巡査部長の熱意は署全体に波及し、ついには16人の署員が「ジョジョ立ち」で警察官の採用を呼びかける動画まで制作された。

驚くべきことに、課長級の署員全員が出演し、副署長までもが参加。そして中央でサーベルに見立てた棒を持つ人物こそ、今回のアイデアにGOサインを出した署のトップ・村岡祥多署長だった。

村岡署長は「署員も出ておりますし、私署長が出んかった方がおかしいやろうということで引き受けました」と語り、「やはり奇抜なアイデアでインパクトもあるので、これはいいんじゃないかと思いました」とその決断の理由を説明した。
地元民から好評「今後もインパクトある広報を」
この斬新な取り組みに、地元の反応も上々だ。

ある高校生は「あんまり他の警察官がしないことをしてて印象に残るし面白いなと思いました」「なんかすごい体張ってるなと思いました」と評価。
松山市民からも「いいんじゃないですか、お巡りさん堅いだけでは面白くないからね。やっぱり庶民のお巡りさんだから、気安く声かけれられるようなだったらいいですよね」という声が聞かれた。

織田巡査部長は「今後も分かりやすくて、インパクトのある広報はしていきたい」と意気込む。
愛南警察署の挑戦は、愛媛県民の警察への理解を深める一歩となりそうだ。
(テレビ愛媛)