仮設の救護施設が設けられ、騒然となったのは、タイの首都バンコク近郊のスワンナプーム国際空港。激しい乱気流に巻き込まれ、緊急着陸した航空機。

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乗客は、恐怖の瞬間を「人の持ち物やクッション・ティーカップ・お皿など、あらゆるものが機内を飛び交っていました」「あっという間の出来事で、ほとんどの乗客が何もできなかった」などと語った。

タイに緊急着陸したシンガポール航空機内の様子。

客室乗務員が食事の準備などを行うギャレー内の天井は落下し、配管がむき出しの状態。床にはワインのボトルなどが散乱している。

客室の床にも大きなシミが残され、天井からは酸素マスクが下りている。

様々なものが散乱した機内に座る客室乗務員の顔には、血のようなものがついている。

“最も安全な航空会社”で…乱気流事故が発生

ロンドン発シンガポール行きの旅客機が21日、激しい乱気流に巻き込まれ、タイのスワンナプーム国際空港に緊急着陸した。

タイ当局などによると、乗客・乗員229人のうち、73歳のイギリス人男性客が死亡。心臓発作を起こしたとみられている。また、71人がけがをして、うち6人が重傷となっている。

搬送先の病院では、首にコルセットをつけた、けが人の姿が見られた。

搬送された乗客:
ものすごい音がして、いろんなものが天井から落ちてきた。水浸しになって叫び声が聞こえて、最悪だったよ。

シンガポール航空は、世界の航空会社の格付け調査で最高評価の「5つ星」を獲得するなど、最も安全な航空会社の1つとして知られている。

乱気流の原因は「積乱雲」or「晴天乱気流」?

なぜ、死者が出るほどの乱気流事故が起きたのだろうか。

事事故機は日本時間の21日午後5時過ぎ、ミャンマーの上空高度約1万1000メートル余りを飛行中に乱気流に巻き込まれ、約3分の間に1800メートル急降下していたことがわかった。

事故機はなぜ、乱気流に巻き込まれたのだろうか。

航空評論家の小林宏之さんは、「考えられることは今回2つある。1つは、積乱雲による空気の乱れ。この時期のミャンマーからタイにかけては、非常に活発な積乱雲があちらこちらに林立している」と話した。

当時の気象衛星画像を見ると、ミャンマー上空に赤く示された高く発達した積乱雲が林立。事故機は、このように大気が不安定な中を飛行した可能性がある。

そして、もう1つ考えられる現象があるという。

航空評論家 元日本航空機長・小林宏之さん:
もう1つは、晴天乱気流。予測が非常に難しい。

「晴天乱気流」には、文字通り見えない怖さがあるという。

名古屋大学宇宙地球環境研究所 付属飛翔体観測推進センター・吉村僚一特任助教:
晴天乱気流とは、文字通り晴天、つまり晴れた場所で発生するので、パイロットが目で見たり、飛行機についている気象レーダーにも映らない乱気流で、気がつかずに遭遇するケースがある。

乱気流が“最大3倍増加”の可能性も?

異常気象の影響で、今後さらに乱気流が増えることも懸念される。

海外では次のようなデータもある。AP通信が報じたイギリスのレディング大学の研究結果では、気候変動により、北大西洋の乱気流が1979年以来55%増加。今後数十年間で、2倍か3倍になる可能性があるそうだ。

座席では、シートベルトを着用するなどの対策が必要そうだ。
(「イット!」5月22日放送より)