福島県の帰還困難区域に指定されている酒造店に男2人が侵入。
思い出や歴史が詰まった大切なお酒を無断で持ち出す様子を防犯カメラがとらえていた。
被災の酒蔵で瓶を持って歩く男
画面に現れた2人の男。
瓶を1本ずつ持ち、敷地内を歩いている。
これは福島県にある酒造店の防犯カメラがとらえた映像。
5月15日、SNSに投稿された。

画面の奥に向かって歩く2人の男。
途中で1人が足の裏を気にする素振りを見せている。
2人が歩いているのは、酒造店の私有地。
無断で侵入していた。

被害に遭ったのは、創業300年以上の歴史がある冨沢酒造店。
福島・双葉町にある冨沢酒造店は、2011年の東日本大震災で被災した。

酒蔵は、福島第一原発から約3.6kmのところにあり、帰還困難区域に指定されていることから、現在も帰ることはできない。

株式会社冨沢酒造店フェイスブックより:
この酒蔵は、私たちの酒が眠っている、墓場の様に思ってます。思い出も、歴史も、全て残してきています。
震災で割れずに残っていた貴重な酒
当時、一時帰宅で持ち帰ることができたのは、定められた袋1枚分だけ。
冨沢さん一家は、酒造りの命ともいえる酵母と道具だけは特別に持ち出す許可が出た。
しかし…、

冨沢さん(2011年6月):
…酒瓶ぐちゃぐちゃです。

冨沢さん(2011年6月):
お酒ってもう、子どもみたいなものだったので、やっぱり造るのにかなり手塩にかけてますので、うちは機械はできるだけ使わないでっていう。そういう造り方は長々と伝えられてきた造り方なんです。
全部これは、先祖の気持ちが入っているもの。

割れずに残っていた貴重な酒。
それでも持ち出すことができたのは、一部だけだった。
つまり、防犯カメラに映っていた男たちが手にしていたあの瓶。それは…、

株式会社冨沢酒造店フェイスブックより:
この方達の持っているお酒は、2011年の2月に瓶詰めしたものです。どんな思いで残していったのかわからないのでしょう。
今もなお、あとを絶たないという心無い侵入者には、こう訴える。

株式会社冨沢酒造店フェイスブックより:
貴方にとっては戦利品なのでしょうが、これは私たちの後悔と思い出の詰まったお酒です。
冨沢さんは、警察に被害届を提出。
酒蔵は、老朽化が進み危険でもあるため、立ち入らないよう呼びかけている。
(「イット!」5月17日放送より)