値上げが止まらない現在、買い溜めの特売品やふるさと納税で申し込んだ大量の食品を保存するため、冷凍庫をフル活用している家庭も多いのではないだろうか。

または、ご飯や常備菜などを一度にたくさん作って冷凍保存する人もいることだろう。

暮らしに欠かせない便利な冷凍庫だが、保存していた食品に独特のにおいと風味がついてしまい、おいしく食べられなくなってしまった経験はないだろうか。

冷凍生活アドバイザー・冷凍食品開発コンサルタントの西川剛史さん
冷凍生活アドバイザー・冷凍食品開発コンサルタントの西川剛史さん
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食品のおいしさをキープしながら上手に冷凍する方法はないのだろうか?そんな疑問を、“冷凍王子”の愛称で活躍する冷凍生活アドバイザーの西川剛史さんにぶつけてみた。

独特のにおいと風味は「冷凍焼け」

――冷凍庫に食品を入れておくと、独特のにおいと味が付いてしまうことがあるが、あれは一体何?

「冷凍焼け」によって素材からにおいが出て風味が劣化してしまっている状態ですね。

「冷凍焼け」とは次のようにして起こります。冷凍庫の温度が上がることによって、冷凍した食品の表面から水分が蒸発して乾燥が進み、蒸発した水分が表面に霜として付きます。同時に、食品の表面から水分がなくなった分だけ空洞ができ空気に触れる部分が増えます。すると、空気に触れて脂質やタンパク質が酸化や劣化して、「酸化臭」という良くないにおいを出してしまうのです。水分がバリアになって食品の酸化を防いでいるんです。

ちなみに、脂質が多い食品ほど酸化臭が強くなります。


――防ぐ方法はあるの?

なるべく冷凍焼けしないようにするには、「冷凍庫の温度を低く保つこと」と「食品を空気から遮断すること」の二つが大切になります。

扉を閉めるのは「10秒以内」

――まず、冷凍庫の温度を保つためには何に気を付ければいい?

普段からできることとしては、扉の開け閉めをできるだけ減らし、開けた際はなるべく早く閉めることです。庫内の温度が上がっている時間が長いほど、水分が蒸発して乾燥が進み、その分酸化も進んでしまいます。できれば、扉は10秒以内に閉めたほうがいいでしょう。ちなみに、扉を15秒開けると元の温度に戻るまでに約2分かかり、30秒だと5分かかります。

また、料理をまとめて作って一気に冷凍する人もいると思いますが、いきなり常温のものをたくさん入れると冷凍庫の温度が一気に上がってしまいます。冷凍するときは1回の量は少なめに、ちょこちょこ冷凍する方がおすすめです。また、冷凍庫の中に凍ったものがぎっしり詰まっている方が保冷効果が高まります。

冷凍庫を長く開けていると温度が上がってしまう(画像はイメージ)
冷凍庫を長く開けていると温度が上がってしまう(画像はイメージ)

――短時間で開け閉めできるようにするポイントは?

次の4つのポイントを意識して冷凍庫を整理してみてください。

・いつ冷凍したかわからないようなものはいったん消費してしまう
・食品は透明の冷凍用保存袋に入れるなどして「見える化」する
・肉・野菜、冷凍食品などの種類ごとに置く場所を定位置化する
・使いかけの食品をまとめて置けるスペースを作る


――使っている冷蔵庫でも差が出てくる?

そうですね。最新の冷蔵庫は断熱もしっかりしていて省エネ効果も高いです。10年くらい前の冷蔵庫をお使いの方は、買い替えを検討してもいいかもしれません。また、最近人気になっている冷凍専用の「セカンド冷凍庫」を持ち、食品によって使い分けるのもおすすめです。

冷凍用保存袋とラップで乾燥を防ぐ

――では、食品を空気から遮断するにはどうすればいい?

生の食品の場合は、ラップで包んでから冷凍用保存袋(フリーザーバッグ)に入れて、空気を抜いて保存することをおすすめします。

肉を保存する際の一例
肉を保存する際の一例

肉もラップでぴったりと包んでから冷凍用保存袋へ。パックのまま冷凍するのはNGです。空気が入ってしまっているので冷凍焼けがかなり進んでしまいます。

ここで大切なポイントは、「冷凍用」の保存袋を使うことです。冷凍用保存袋は通常の保存袋に比べて厚みがあるため、丈夫なバリアとなり食品を乾燥から守る力がより強いのです。袋の厚みは0.06mm以上のものを選ぶとよいでしょう。


――ほかにも方法はあるの?

“下味冷凍”といって、液体の調味料に漬けた状態で冷凍すればより乾燥を防ぐことができます。味が染み込みやすくなったり、調理の手間を省けたりするメリットも。西京漬けや麹漬けも冷凍焼けが起きにくいです。

下味冷凍の一例(左)と、氷漬け(グレージング)の一例
下味冷凍の一例(左)と、氷漬け(グレージング)の一例

生の魚(切り身ではない一匹そのままの状態)や殻付きのエビの場合は、水と一緒に冷凍して氷漬けにしてしまうという方法もあるんですよ。

お取り寄せの冷凍肉・魚は早く消費

――ふるさと納税やお取り寄せで冷凍の肉や魚を選ぶ人もいると思うが、既に冷凍してある肉や魚はどうしたらいい?

その商品が真空パックであればいいのですが、そうではない場合、残念ながら冷凍用保存袋とラップで乾燥から守る方法は、生の場合ほど有効ではありません。食品の表面の水分が凍ってしまっているので、冷凍用保存袋やラップを密着させられないためです。

冷凍の温度を上げないように低く保つ方法は有効なのですが、せめて一週間以内で食べきるのがよいですね。

それでも一度に食べきれない場合、そのままにしているよりは、ラップを巻いてから冷凍用保存袋に入れるほうがよいでしょう。

西川さんの著書『冷凍王子の冷凍大全』(サンマーク出版)

普段何気なく使っている冷凍庫だが、使い方や冷凍の方法次第でより食品のおいしさを保てることがわかった。冷凍庫を多用する人は西川さん推奨の冷凍技を実践してみてはいかがだろうか。

冷凍食品の画像:サンマーク出版『冷凍王子の冷凍大全』より

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。