自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家には、今日も大忙しのパパママの声が…。
バタバタの朝は、早く着替えて早くごはんを食べて…とにかく急いで支度をしてほしいもの。
「ちゃんと片づけて!」「さっさとして!」
幼稚園や保育園・小学校から帰って来ても、まだまだ遊び足りない子どもたちは家の中でも元気いっぱい。
「お片付けしないと、おもちゃ全部捨てちゃうよ!」
そして子どもたちのわがままに、とっさにこんなことを言ってしまうこともあるだろう。
「言うこと聞かない子はママ・パパは嫌いだよ!」
実はこの言葉は、全部子どもにとっての“NGワード”!でも、子どもに伝わるような言葉に「言い換え」もできるそう。育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
「あいまい系」は「名詞+動詞」に
佐藤めぐみさん:
日常の子どもへの声かけの中で、言い換えた方がいい言葉は意外と多いものです。
そこで、よく見られるタイプを「あいまい系」「有言不実行系」「問い詰め系」「おどし系」「飛躍系」の5つに分けて、紹介したいと思います。
1つ目は、「ちゃんと片づけて」「さっさとして」などが当てはまる「あいまい系」です。
「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」「さっさと」など、言語発達中の子どもたちに“大人感覚の言葉”はうまく通じません。これらの言葉は「親が意図していること」と「子どもが理解すること」にギャップが生まれるため、子どもは動けない・親はイライラする、と双方にメリットがありません。具体的な言葉で何をしてほしいのかを伝えていくのがポイントです。お子さんが理解できる「名詞+動詞」に置きかえていきましょう。
「ちゃんと片づけて」→「この箱にパズルを入れて」
「さっさとして」→「時計の針が9になったら出るからね」
「実際に行動できる範囲」で“有言実行”
2つ目は「お片付けしないと、おもちゃ全部捨てちゃうよ」などの「有言不実行系」です。
子どもに対し、大げさなことを言えば、きっと子どもが動くだろうとつい大きめなことを言ってしまうことがあります。しかし、それを実行できないのであれば、回を重ねるうちに「どうせ本当じゃない」と子どもが思うようになってしまうので要注意です。
いったんそうなってしまうと、言葉全体の重みが減ってしまい、言うことを聞かなくなるなどの困りごとが増えるので、自分が行動に起こせる範囲のことを言って、有言実行していきましょう。
「お片付けしないと、おもちゃ全部捨てちゃうよ」→「片付けられなかったものは明日まで預かるからね」
「宿題が終わらないと、お出かけには連れて行かないよ」→「宿題が終わってから、お出かけに行くよ」
「どうしてほしいか」をストレートに伝えて
3つ目は「どうしてお片付けできないの?」などの「問い詰め系」です。
叱っている場面で子どもを「なぜ?」と問い詰めても、子どもが「なぜなら○○だから」と答えることはまずありません。子どもには効果がない言葉である一方、言っているママ・パパ側はあっという間に腹が立ってきてしまいます。こういう場面での「なぜ?」の質問は状況を悪化させるだけなので、単純に子どもにどうしてほしいのかを伝えましょう。
「どうしてお片付けできないの?」→「ほら、この箱にママと一緒にブロックを入れていこう」
「おどし」は別の問題が増えるかも
4つ目は「早く寝ないと、おばけが出るよ」などの「おどし系」です。
子どもがぞっとするようなことや怖いと感じることを言って、言うことを聞かせようとするパターンです。しかし「怖くてトイレに行けない」「1人で暗い部屋に入れない」など、逆に親が困ることになりかねないので要注意です。
「早く寝ないと、おばけが出るよ」→「明かりを消すよ。もう寝る時間」「今だったらママがトントンしてあげるよ」
この言い換えワードを見て「このくらいじゃなんの効果もない」と感じる方は、親の言葉の効果がすでに落ちてしまっている可能性があります。その場合、接し方や導き方のような大枠から見直した方が、生活のリズム全体の改善につながりやすいと言えます。
傷つける「飛躍系」には注意
5つ目は、「言うこと聞かない子はママ・パパは嫌いだよ」などの「飛躍系」です。
子どもが「○○をしない」ことで悩むことは多いものですが、怒っているうちに言っていることが飛躍してしまい、子どもを傷つけるようなことを言ってしまうのがこのタイプです。
「言うことを聞かない子は嫌い」ということは、「言うことを聞く子が好き」。子どもからしたら、条件付きの愛情を突きつけられたことになってしまいますし、「悪い子」や「ダメな子」はその子全体を否定してしまっています。子どもは「ダメなこと」はたびたびしますが、=ダメな子ではないので、気をつけていきたい部分になります。
「言うこと聞かない子はママ・パパは嫌いだよ」→「○○しなさい」
「イヤなら出て行きなさい」→「○○するのはダメ」「○○だよ」
「気付いたら直す」ことが大事
――「言い換えワード」を知ってはいても、つい口に出してしまったら…親はどうしたらいいの?
「あいまい系」「有言不実行系」「問い詰め系」については、たとえ言ってしまったとしても、大ごとになるようなケースは基本的にないと思われます。なので、親が「気付いて、直す」を繰り返すことが習慣化のポイントかと思います。
一方、より深刻なのが、子どもを傷つける「飛躍系」の言葉で、次に「おどし系」です。
「飛躍系」「おどし系」の手前にいる場合は、「今起こっている目の前の行動を注意すること」を心がけましょう。
「飛躍系」「おどし系」に踏み込んでいる場合は、今後これらの言葉をNGとしていくことがとても重要です。思わず言ってしまって、その後「ごめんね」と謝ったという方は多いと思いますが、やはり言わずに制御することを目指していきたいもの。すでに言ってしまった言葉は引っ込めることはできないからです。言葉上の調節のみならず、自らのアンガーマネジメントに取り組んだり、育児全体の見直しをしていくことも有効だと思います。
「悪い子は嫌いだよ!」は、わがままを言う子どもについ言ってしまったパパママも多いのではないだろうか。
でも、実はこの言葉、子どもを深く傷つけてしまう“危険なNGワード”なのだ。
「ちゃんとして」「どうして○○できないの」といった言葉は、子どもに投げかけてしまったとしてもすぐに大きな問題になることはないそう。しかしこのような「あいまいな言葉」「親自身が行動に起こせない言葉」「論点がずれている言葉」を日常的に使っていると、子どもが言うことを聞かないのが常態化してしまい、そこから「鬼やおばけを登場させて子どもを動かす」「子どもを否定する」言葉へと発展してしまうこともあるそう。
「毎日子どもに『ちゃんとして!』と言ってしまっていた…」と落ち込む必要はないが、そこからさらに深刻な“NGワード”が飛び出すようなことになってしまわないか、今一度子どもたちに投げかけている言葉を振り返ってみるといいかもしれない。
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などなど、あなたの「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?
※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)