地域の心をつかんで50年あまり。福島県南相馬市には、きょうも変わらずに人々を出迎える食堂がある。頑固な父から受け継がれてきた味を、大切に育てていく家族の物語。
客も店も…”おいしい”が原動力
食欲をそそる音と香りが店内を満たす、お昼の時間。次々とやってくる客で席は埋まっていく。8年通う人は「肉もがっつりしてますし、タレもご飯が進む感じ。本当はもうちょっとカロリー控えないといけないんですけど、ちょっと誘惑に負けて来ちゃう感じ」と話す。
![変わらぬ味を求めて多くの人が訪れる](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/d/700mw/img_eddcb199fe704e2d2ebc4a470607ff9466111.jpg)
客の胃袋をがっちりとつかむその人は、福島県南相馬市鹿島区にある「すずき食堂」二代目の鈴木良仁さん。「お客さんに来ていただいて、おいしいって言ってもらえるのが、また明日もがんばろうとやり続けて行こうという原動力」だと話す。
![地域に愛される食堂の二代目・鈴木良仁さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/8/700mw/img_1823728dd8fd735b8f3d43f00afa4d9b78788.jpg)
家族のピンチ 二代目の思い
大忙しの厨房の奥にあるのは、8年前に亡くなった父・良次さんの写真。「すずき食堂」は昭和43年に父・良次さんが精肉店を食堂に改装し始めた店。
![昭和43年に父・良次さんが精肉店を食堂に改装](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/c/700mw/img_dcb7d7e373b3d56516ad79944b892a1372035.jpg)
高校卒業後に地元を離れ愛知県で働いていた良仁さんが、店に戻る覚悟を決めたのは「家族」のためだった。「親父の体調がよくないと、店がお休みがちだと。やはり自分を育ててもらったところだし、家族のピンチには助けないとということで」と良仁さんはいう。
![良仁さんが小学生の頃の写真 父と食堂の前で](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/c/700mw/img_4c5724df2cd47c300247895bd6b9181c86504.jpg)
順調に歩み始めた店を地震が襲う
昔からのイチオシは、こだわりの肉を特製のタレで焼き上げる「焼肉定食」。父が独学で編み出したメニューの数々を、父が亡くなった後も大切に守り続けている。その食堂を、2022年に危機が襲った。
![父から受け継いだ味を守る](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/700mw/img_75c199b8412f3b7af5525597ff8ca5eb100549.jpg)
2022年3月、福島県沖を震源とする地震が発生し、南相馬市と相馬市・新地町で「震度6強」を観測。1人が犠牲となり、100人を超えるケガ人が出たうえ、約4万棟の住宅や公共施設などが倒壊、損傷の被害を受けた。「すずき食堂」も地震の影響で断水。食器のほとんどが割れ、約2週間の休業を余儀なくされた。
![2022年の地震ではすずき食堂も被害](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/7/700mw/img_773cd8d4ea16a39d6eea1b29f9c1f99583238.jpg)
あの日の自分のように…
地震のあと、大きく変わったことが2つ。災害に対する備えをより強く意識するようになったこと、そして心強い味方が現れてくれたことだ。
![地震後、対策を強化 食器が落ちないように工夫](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/700mw/img_6716a9aa8fefc5fc31b09d1b4ec9584f91727.jpg)
「がむしゃらに頑張るしかない。帰ってきて2年、まだまだなので親父の背中を追っかけて頑張りたいと」…宮城県で働いていた息子の仁成さんが、あの日の自分のように「父の背中」を追いかけて戻ってきてくれた。
![息子の仁成さんが戻ってきた](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/700mw/img_520c01ff048e4cf5697814bb1fa8cf5a67207.jpg)
良仁さんは「息子が手伝ってくれるとなると、最初は頼りないって思っていましたけど、最近やっと、まだまだですけど頼れるなという感じにはなってきました」と話す。
![親子並んで厨房に](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/700mw/img_f7691ccda2b5f89d979f96a51e35bd5d95615.jpg)
家族ともに守り続ける
孫の裡斗くんも生まれ、新しい家族とともに店を守り続ける覚悟だ。
「多分死ぬまで続けると思うので、それまで身体を大事にして、家族みんな仲良くやっていければいいかな。まっとうに、真面目にやっていこうそれを常に考えています」と良仁さんは話した。
![孫の裡斗くんをおんぶしながら厨房に立つ良仁さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/6/700mw/img_2626fa4216b7b925d1db9c759799f21f93175.jpg)
「まっとうに、真面目に」…幾度の苦難を乗り越えて、家族がつなぐ50年以上変わらない味が、きょうも訪れる人を出迎える。
(福島テレビ)