殴ったり蹴ったりはしないけれど…執拗な「言葉の暴力」。 こうした「精神的DV」の被害が増えていて、国も法律を改正し、対策に乗り出した。

【動画】結婚し豹変した夫 「脳みそあんの?」「殴るぞ」人格否定する『精神的DV』 泣きながら謝り…

しかし…

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-Q.「精神的DV」と思えた?
精神的DVの被害者:全然思えてなくて。夫婦だったらよくあることなのかなって。『この人を怒らせたら大変なことになる』という、思考回路に普段からなってしまって。常に『彼が私の人生の中心』みたいな。

自分が被害者であることに気が付かないケースもある。深刻な「精神的DV」の被害を取材した。

■『お前が全部悪いんだ』精神的に追い詰められる日々

元夫から精神的DVを受けた 阪元未すずさん:家に帰るのが嫌だなと思ってました。怒られるから。あとは車に入ったら怒られる。

阪元未すずさん(40)は、5年前に夫と離婚。2人きりになると豹変する夫に耐えられなくなったからだ。

元夫から精神的DVを受けた 阪元未すずさん:入籍した日から、すごい小さいことで怒ってくるようになって。ドアをバン!って強く閉めたりとか、『お前が全部悪いんだ』、『お前が俺を怒らせてるんだ』。大きな声で『脳みそあんの?本当頭悪いよな、殴るぞ』って人格否定されて。泣きながら『ごめんなさい、私が悪かったです』と謝って、やっと許してもらえる。

夫が怒り出す理由も分からないまま、日常的に暴言を浴び、無視をされるうちに、体に異変があらわれた。

元夫から精神的DVを受けた 阪元未すずさん:違う部屋で寝てたら、トイレとかに起きてくる音がする。それを聞いたら、すごい動悸がして怖い。彼の機嫌がいい時も、『怒らせないようにしよう』という思考回路になって、『あれを言ったら怒るかな』、『こうしたら怒るかな』とか、常に『彼が私の人生の中心』になる感じ。

■お互いが「こうあるべき」で支配する・される関係に

阪元さんのように、配偶者などからの言葉や態度による暴力、いわゆる「精神的ドメスティック・バイオレンス」を受けている人は少なくない。

なぜ、精神的DVをするのか、加害者のカウンセリングを行う専門家は…

京都橘大学総合心理学部 濱田智崇准教授:(言葉の)暴力で、相手を追い詰めてしまう人は、『こうでなければならない、こうあるべき』が、非常に強い方が多い。『こうでなければならない』を、悪意なく相手に押し付けてしまいエスカレートする。

-Q.「こうあるべき」で、相手が悲しんでいても気付かない?
京都橘大学総合心理学部 濱田智崇准教授:被害者も『夫婦生活を良くするために言ってくれている』そんなふうに思ってしまって、被害者が「自分が悪いんだ」と思って、一生懸命、それを目指してやってしまう、支配する側、される側という形で、だんだん巻き込まれていってしまう。

■相談の6割が精神的DV 4月1日から申し立ての対象に

内閣府によると、寄せられる相談は、殴る蹴るといった身体的なDVよりも、精神的なDVの方が多く、実に全体の6割を占めている。しかし、これまでの法律は、主に「身体的DV」を前提とした内容となっていたため、国はDV防止法を改正し、4月1日から精神的DVも、裁判所に申し立てができる対象となった。

内閣府によると、例えば「外出しようとすると怒鳴る」「性的な画像をネットに拡散すると告げる」などが該当する可能性がある。裁判所が、心身に重大な危害を受けるおそれが大きいと判断した場合、被害者の住居や勤務先に近づくことを禁止する「接近禁止命令」などが出され、命令に違反した場合の罰則が厳しくなった。

■家計を管理され、自分が借金…経済的に追い詰めるDV

命令の対象には、経済的に追い詰めるDVも含まれる。

40代のAさんは夫に家計を管理されていて、食べ盛りの子どもたちがいるにもかかわらず、生活費として受け取っているのは、月に数万円。

夫から精神的DVを受けるAさん(40代):夫とお金のことで話した時も、『この生活ができるぐらいの給料稼いでこいや』と。そんなんできないのは分かっているのに、言うのってどうなんかなと。

周囲では「いいお父さん」と評判の夫。Aさんも、仕事をしていましたが、食費、学費などを払いきれず、最終的には、借金をして暮らしていました。

夫から精神的DVを受けるAさん(40代):本当にどうしよう、どうしようみたいな感じ。でも要るものは要るし。お金は絶対に要るし、払わないといけないものは払わないといけないし。自分でも…まさか自分がここまでなるとは。精神的にもおかしくなった。

-Q.法改正に期待したいことは?
夫から精神的DVを受けるAさん(40代):精神的DVを受けている方って、本当にたくさんいると思うので。少しでもそういう方が減っていけばいいな。そんな世の中になってほしいですけど、実際、自分が(相談が申し立て)するかって考えると、そこまでする必要はないんじゃないか。もちろん自分で、なんとかしようって思う。

-Q.家庭内のことだから?
夫から精神的DVを受けるAさん(40代):そうですね。

■精神的DVの課題は認定されるハードルが高い、当事者の状況も影響

精神的DVでも裁判所が「接近禁止」などが出せるようになるということだが、どういった課題があるのだろう。

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:精神的DVの課題としているのは、認定のハードルが高いというところ。身体的DVと違って、精神的DVは証拠が難しい。ただ証拠がないと、認定できない。例えば、精神的DVによって鬱を発症しましたという医師の診断書、こういったことを言われているという録音があると、認定されやすい。ただ実際に支配下に置かれた状況の当事者の方が、即座にそういった対応をできるかというと、なかなか難しい。実際に訴える所までいくかというところも含めて、ハードルが高いと思う。

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:経済的な搾取は、一番女性を孤立させ、自立を妨げるので、本当であれば、その人が自立をして、その状況から脱することが、一番いい。しかし、その中にいる以上は、なかなかその状況が変わらない。声を上げやすい、その声が届きやすい環境づくりを、行政も含め、もっと私たち社会も促していかなければいかない。

DVに悩んでいる方は、インターネットで「DV相談プラス」と検索すれば、電話、メール、チャットなどで、相談することができる。

ひとりで悩まずに、まずは連絡してみてはどうか。

関西テレビ
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