アメリカ大統領選の候補者を選ぶ、共和党の予備選挙で、トランプ前大統領が、破竹の5連勝。

アメリカ大統領選を取材しているキヤノングローバル戦略研究所 峯村健司主任研究員も“ガチトラ”、つまりトランプ氏がガチでふたたび大統領になる可能性が高まったとしている。

そうなると、世界はどうなってしまうのだろうか。

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“ガチトラ”になる背景には、トランプ氏の強さとともに、バイデン大統領がピンチだという背景もある。

バイデン氏が副大統領時代に「機密文書持ち出し問題」があったのだが、2月8日、特別検察官が訴追を見送ったことを発表した。その理由として「記憶力の乏しい高齢者」だと、バイデン氏の記憶力の衰えが指摘されたのだ。

峯村さんは、「有権者が不安視していた事を公の機関が“お墨付き”を与えた。バイデン離れ加速の大ダメージ」と指摘している。

アメリカの放送局、ABCなどによる世論調査では、有権者の86%が、バイデン氏について「2期目を務めるには高齢過ぎる」と答えているというデータがある。

年齢はどうしようもないことだが、バイデン氏にとっては厳しい状況だ。

「newsランナー」コメンテーターの太田昌克さんは大統領選について、民主党の関係者に取材したそうだ。

太田昌克さん:先週、サウスカロライナが非常に重要な州だと思って取材しました。というのも、2020年の選挙で民主党の予備選挙でバイデン氏とはずっと最初負け続けでした。しかし、最後のサウスカロライナでようやく1位になって、そこからホワイトハウスに行きました。それを後押ししたのは、実は、サウスカロライナの黒人票でした。そこで今回、黒人票がどう動くかなと気になって、民主党のある有力者を取材してみましたが、かなり悲観的でした。『実を言うと自分もバイデン氏にはそろそろ撤退してもらいたいと思ってるんだ…』と言っていました。

バイデン氏以外の候補者はいるのだろうか?

太田昌克さん:予備選は進んでいて、現職であるバイデン氏が勝ち続けていますが、最終的には、夏に行われる民主党大会で誰を指名するか決めます。いくら勝ち続けても、バイデン大統領が例えば『自分はそろそろ、高齢であるからバトンを次の若い世代に託したい』、『自分が持っている選挙人を全てその方にあげたい』という道義を党大会でして、それが賛同を集められたら、別の候補者を立てるということも、可能性としてはあります。

太田昌克さん:実際にいま言われているのは、例えば、カリフォルニア州の知事の方や、ミシガン州の女性の知事など、何人か実力者はいます。そこに期待をされています。やっぱり民主党というのは、チェンジを求める、ケネディ、クリントン、オバマと、ものすごく何を変えてくれるというのをエネルギーにして進んできた党なので、バイデン氏はあまりに現状維持派すぎるというのが、多くの民主党関係者のイメージ。危機感が広がっているということです。

一方の共和党は、トランプ氏が優勢ということだが、今回予備選で敗北したヘイリー氏の動向にも注目が必要だと関西テレビの神崎報道デスクは言う。

関西テレビ 神崎報道デスク:トランプ氏が5連勝し、ヘイリー氏が知事をしていた地元で負けたとなると、ヘイリー氏が撤退も考えられますが、撤退しませんでした。というのも、トランプ氏は裁判を抱えています。アメリカの議会の乱入事件というのがあり、トランプ氏が関与していたということであれば、大統領選への出馬資格がないのではないかと訴えられています。その訴えが認められるとトランプ氏は出馬できなくなりますので、そうすると、ずっと2位を走っているヘイリー氏が先頭に立つことになります。つまり撤退しないということは、裁判の行方を見越しているといえます。

■ガチトラになった世界は…

出馬できるか、不安な面も残しつつ、出馬すれば、「ガチトラ」も見えてくる状況の中、そうなった場合、世界はどうなるのだろうか。

峯村氏がズバリ!“ガチトラ”なら世界はこう変わるという予想だ。

・台湾問題
トランプ氏は過去に台湾について、「半導体を奪っていった」と批判的な発言もあり、有事の際にアメリカが台湾を助けない可能性が高まる。

・ロシアのウクライナ侵攻
トランプ氏は、ノーベル平和賞をとりたいという思惑があるため、支援を中止し、和平へ動く可能性ある。

・日本への影響
バイデン氏ほど重視しない可能性が高い。
例えば貿易赤字の解消のために圧力をかけてきたり、米軍の駐在に関する費用負担をさらに求める恐れもある。

トランプ氏のアメリカ第一主義という考え方は変わらないということだ。

太田昌克さん:もっと国内に投資をしようということで、ウクライナや海外への支援をやめようかという大統領です。特に気になるのが対日本です。岸田政権の中枢の総理外交をやっている人たちと話をすると、非常にトランプ氏に備えないといけないというマインド、“そなトラ”マインドが、日本政府内にも出てきています。今議論が分かれている所ですが、武器の輸出に関して、アメリカからライセンスをもらって生産をしている、パトリオットという迎撃弾。完成したものを日本からアメリカへ輸出することにしました。なぜかというと、アメリカに対して自分たちが発言権を持たなければいけないのだと。いつも助けてもらっているばかりではなく、こちらもパトリオットを出すことによって、発言力『てこ』を持たなくてはいけない。これも言ってみれば“そなトラ”の1つです。

■“ガチトラ”まで、まだまだ変数が多く目が離せない状況は続く

関西テレビの神崎報道デスクは「安倍前総理の時は、トランプ氏就任前にいち早くニューヨークでトランプ氏に会い、お土産をわたし、関係を築くことができた。そういう意味では日本政府も、他国に先駆け動いてはいるものの、きっかけを見つけることができず苦労している」と話した。

現実味を帯びてきている状況で、太田昌克さんは「まだ9カ月ある。バイデン氏の撤退や、トランプ氏が直接やってはいないものの支持者をあおり、国会議事堂を襲撃し、人が亡くなっていて、場合によっては有罪の可能性もある。まだ変数はあるので、本当にバイデンvsトランプとなるかはクエスチョンマーク」と言う。

11月に行われるアメリカ大統領選に向けて、今後も目が離せない状況が続きそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年2月26日放送)

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