「対決の歴史に終止符を打つために来ました」

そう話したという北朝鮮の金正恩委員長は、27日午前9時半ごろ、65年間、朝鮮半島を分断してきた軍事境界線を越え、歴史的な1歩を刻んだ。

金委員長の発する言葉の数々に驚いたと言う人がいた。

関西で生まれ、北朝鮮への帰還事業で北朝鮮に渡り、その後2008年に脱北した金柱聖さんは、日本・韓国・北朝鮮、それぞれの国を知る人だ。

現在は作家として活動していて、先日、北朝鮮の洗脳文学の実態を書いた「跳べない蛙」という本を上梓するなど活躍を続けている。
 

「人間的な言葉遣い」に驚き

 
 
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そんな金さんは金正恩委員長の「ざっくばらんな、人間的な言葉遣い」に驚いたそうだ。

北朝鮮では、金正恩委員長は神格化されているため、ニュースや記録映画で流れる言葉は、“おことば”であり、“精神的教科書”であり、精神的な指針になるものとして見られているので、打ち解けた言葉などは省いて知らせるという。

そんな中で、生中継の映像では金委員長が「平壌の冷麺を遠くから持ってきました。遠くからと言ってはダメだよね」などとくだけて話す姿を見て、金さんは「独裁者というイメージを掴みとれないような、打ち解けて話す姿が印象的だった。北朝鮮にいる人にも見せた方がいい」と感じたそうだ。

フジテレビのニュースで同時通訳を務めた徐清香さんも「自分の言葉で話していたのが印象的だった」と話す。
決まっている文面を読み上げるようなものではなく、言葉の順番が入れ替わるなど、思ったことをそのまま言葉にしている様子が汲み取れたそうだ。

また写真撮影を、金委員長自ら文大統領を誘う様子も見られたといい、融和ムードで会談は行われている。
 

 
 

金さんは兄妹の関係にも注目していた。

金委員長の妹・与正氏が高級幹部から離れ、自由気ままに兄につきそって花束もらったり、儀仗隊の前を自由に歩く姿。

これもやはり北朝鮮では見られるようなものではなく、初めて兄弟愛が見れたという。
 

脱北した身として願うこと

 
 

「個人的には非核化も大切だと思いますが、北朝鮮の人権問題がどうなるかの答えが出て欲しいです。でも多分それは無理だと思います…」と金さんは悔しさを滲ませる。

国民にパスポートを自由に発行して、海外旅行に行ったり、自由に往来できるようになるなど、私たち日本人が当たり前のようにできることを、北朝鮮の人もできるようになって欲しいと言うのだ。

しかし金さんは今回の会談では、韓国と北朝鮮がお互いに望むものは国家経済に関わるものだと予想する。
彼らが解決したいこと、つまり韓国にとっては融和ムード作り、北朝鮮にとっては経済制裁の解除、について話し合うことが先決で、人権問題については進展はないだろうと言うのだ。


今後南北でどういう話し合いがなされていくかは決まっていないが、金さんの願いが現実のものとなるよう進んで行って欲しい。
 

プライムオンライン編集部
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