自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家が注目したのは、こんなお話。
「『やってみたい!』とお願いされて始めた習い事。1年も経たずに今度は『飽きちゃったからやめたい』と頼まれて困惑…」
音楽教室やスイミング、英会話…たくさんある“習い事”に興味津々な子どもたち。もしかしたら隠れた才能が見つかるかも?なんて思うパパママも多いはず。
でも、いざスクールに通ってみたらすぐに「飽きちゃったからやめたい!」と言われてタジタジ。他にも、新しく買ったおもちゃをすぐに「もう飽きた!」と放り出してしまったりと、子どもの“飽き性”っぷりに振り回された経験のあるパパママも多いのでは?
できればひとつのことを長く続けてほしい、けれどそもそも、子どもが“飽きちゃう”のには年齢や性格など、何か理由はあるのだろうか。次々いろいろなものを試してみるのがいい?それともひとつの事を我慢して続けさせたほうがいいの?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
「飽きた!」でついちゃう“あきらめグセ”に注意!
――自分から「やりたい」「欲しい」と言い出したものにすぐ飽きてしまう…これは年齢から?それとも性格から?
年齢と性格、どちらも関係していると思います。
まず年齢について。最近は習い事の低年齢化が進み、1、2歳から習い事を始めることも珍しくありませんが、この年齢だとまだ自分から「やりたい!」とお願いするというよりは、親の意向でスタートさせていることが多いと思います。
3歳過ぎあたりから徐々に本人の意向でスタートさせることが増えてくると思いますが、小さいうちは「お友だちと一緒のをやりたい」「お兄ちゃん・お姉ちゃんがやっているから」と習い事の本質以外のことが動機になっていることが多いものです。そういう場合、習い事の中身は入ってから知ることもあるでしょうから「合わない」「おもしろくない」ということは起こりやすいと思います。
次に性格についてですが、こちらの方が「やめたい」「やりたくない」という思いに影響していると思います。
まず1つはその子の“注意の向け方”の特徴で「1つのことに気持ちが行きやすいタイプ」か「色々なことに気持ちを向けるタイプ」か。2つめはその子の“物事への近づき方”の特徴で「積極的に入り込んでいくタイプ」か「消極的に観察するタイプ」か。
どちらも、前者の場合は習い事が自分に合えばハマりやすく、後者の場合は「もう行きたくない」という言葉が出やすくなると言えます。
――「習い事に飽きたからやめたい・別のことがしたい」と言われたら、どんな対応をするのが良いの?
「飽きたからやめたい」「別の○○がしたい」と子どもから言われた場合、それがクセになっていないかは検討すべき点だと思います。実際、私の相談室でも習い事の継続に関するお悩みは多く、中には習い事を転々としているケースも見られます。もちろん習い事は永遠に続けるものではなく、いつかはやめるものではありますが、“習い事めぐり状態”になっている子の中には、ちょっとしんどくなるとそこで「やめたい」になってしまう子がいます。
たしかに習い事ってはじめは楽しいんですよね。体験コースなどはとくにそうです。しかし何ごとも習い始めて少しすると「楽しい!」だけではない“山”のようなものが出てきます。うまくなるための頑張りが求められる瞬間ですが、入退会を繰り返している場合、いわゆる“いい汗をかく”前に退いてしまうのです。当然ながら「ちょっとしんどいけど超えたぞ!」という経験に乏しいため、その後の人生における踏ん張りや頑張りに影響が出やすくなってしまいます。
子どもの意向に寄り添い過ぎて入退会を繰り返してしまうと、習い事のスキルが身につかないばかりか、あきらめグセもついてしまうことがあるので、ここは気をつけていかれるといいのではと思います。始める段階でしっかり話し合い、見通しや目標を立てるということが大事だと思います。
おもちゃは「買い替える」こと自体が飽き性の原因にも
――それじゃあ「このおもちゃは飽きたから別のものが欲しい」と言われた場合の対処法は?
おもちゃに関しては、夢中になりやすいものは年齢によっても変わってくるので、継続性という点では習い事よりも移ろいやすいのは致し方ないかもしれません。ただ、飽きたからと次々におもちゃを買い与えるのも望ましい対応とは言えません。
「買い物に行くと毎回うるさくせがむようになってしまった」 「物を大事にしない」 「壊れたらまた買えばいいと思っている」、これは実際に私が聞いた親御さんたちからのお悩みです。新しいおもちゃをあげれば子どもが笑顔になるので、ついそうしたくなりますが、充足することが飽きっぽさをエスカレートさせている可能性もあるので、親の方の物への意識も振り返る必要があるかもしれません。
――自分の子どもが“飽き性”な気がする…「ひとつのものを続けてもらう」ために、パパママは何ができる?
今回のテーマの流れだと「1つのことに注意を向けるタイプ」か「複数のものに注意を向けるタイプ」かだったら、前者の方がいいように映るかもしれません。しかし、そうとも限らないのです。
たとえば、1つのことに注意を向けることが多い子は、そこから気を逸らすことが苦手だったりします。「どうしてもこれがいいの!」とこだわり、周りがあの手この手で気を引こうにもうまくいかない。親から見ると「気持ちの切り替えがヘタ」と映ったりもします。
このように、気質というのはどの場面でどのように出るかで捉えられ方が変わるので、飽きっぽい=悪と括らずに「この子の数ある特性の1つ」と受け止めて対応していくこと。そして「飽きっぽい子ならではの工夫って何ができるだろう」とその子のスタートラインに目線を合わせて対応を模索するということがとても大切になります。
親が、
・ほめる
・励ます
・並走する
というのはどの子にとってもおすすめですが、飽きっぽい子には
・目線が1つに注がれやすいように家の中をすっきりさせる
・日々の中に“ちょっと頑張る経験”を盛り込む
・ちょっぴりの“いい汗”でもいいので経験させる
・そこでできていることを「頑張っているよ」と励ます
・ポイントシールなどで継続していることを見える化する
などの工夫もできるかと思います。
今習っているものの練習(ピアノ、体操、英語など)を家庭で取り組むのは、飽きっぽさ対策のいい実践の場です。楽しいばかりではありませんが、子どもが出す負の感情を恐れずに、並走してあげてください。
子どもが「習い事に飽きた!」となってしまった時、注意したいのはそれが「飽き性」「飽きグセ」になってしまっていないかということ。
もちろん、子どもが習い事について、本当につらくてやめたい…と訴えたりしている場合などにも「絶対にやめてはいけない!」ということではない。しかしまずは「ちょっと我慢してやってみたら成功した!」という嬉しい体験を積ませたり、シールなどを使って「〇日続けて習い事に行けた」ことを可視化するなどして、「継続することの楽しさ」を覚えさせるのも大事だ。
そして、習い事と比べて、比較的簡単に捨てたり買い替えたりができるおもちゃなどに「飽きた…」という時は、すぐに捨てる・買い替えること自体が、子どもの“飽き性”を作る原因になってしまっている可能性も。習い事も、身の回りのアイテムも「飽きっぽいから仕方ないよね」とあきらめてしまわず、次々に新しいものを与えるということは避けるのが良いだろう。
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・「もういらない」と言ったから代わりに食べたおやつ。「やっぱり食べる!」と言われて大慌て…同じものを用意しても「さっきのがいい!」と泣かれて大苦戦!
・無くしたと思っていたスマホを冷蔵庫の中から発見!なんでここに入れちゃうの!?
などなど、あなたの「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?
※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)