普段の食事で「塩分を摂りすぎているのでは」と心配になることはあるだろうか?
食塩の摂りすぎは、生活習慣病などのリスクが高まる恐れも指摘されているのだが、こうした中、食塩の使用量を“見える化”するサービスの実用化の動きが進んでいる。開発したのは、電機メーカーのシャープ株式会社と、総合容器メーカーの東洋製罐グループホールディングス株式会社、AI献立・栄養管理アプリを提供する株式会社おいしい健康の3社。
調味料IoTサービス「ソルとも」を共同開発
調味料の使用量のデータ化が可能な調味料IoTデバイスと専用アプリを組み合わせ、食塩使用量を“見える化”することで減塩調理を実現する調味料IoTサービス「ソルとも(Saltomo)」を共同で開発した。
「ソルとも」のデバイスは2種類ある。
1つめが「プッシュタイプ」。こちらは、食塩などの顆粒調味料をワンプッシュで一定量(0.3グラム)を出し、その回数から使用量を記録するタイプ。

2つ目が「トレイタイプ」。こちらはトレイ(台)の上に、醤油などの市販の液体調味料を置いて使用し、その重量差から使用量を記録できるタイプ。
どちらも、デバイスで自動記録された調味料の使用量(日付/種類/使用量など)は専用アプリで確認が可能。また、食塩使用量のデータに基づき、ユーザーに適した減塩レシピを提案してくれるという。

食塩の摂りすぎが体によくないことは分かるが、この「ソルとも」はどのような人がどのように使うことを想定しているのか? また現在はデバイスを開発したとのことだが、サービスの提供はいつ頃を予定しているのだろうか?
シャープ株式会社の担当者に聞いた。
厳格な食事療法が必要な人の使用を想定
――「ソルとも」を開発した理由は?
厚生労働省によると、健康維持のための1日の食塩摂取量の目標量は「男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満」を推奨しています。
しかし、日本人の1日当たりの食塩摂取量の平均値は10.1グラムであり、平均的な日本人の食生活で必要以上の食塩を摂取する傾向にあることが報告されています。また、食塩の摂りすぎは、生活習慣病などのリスクが高まる恐れも指摘されています。
こうした課題に着目し、東洋製罐グループホールディングス株式会社と株式会社おいしい健康は、日本の食卓の「減塩」に貢献するべく、2019年に協業を開始し、2021年に資本・業務提携契約を締結。
2020年よりシャープ株式会社も、この取り組みに参画し、3社共同で検討を進めた結果、食塩の見える化が可能な調味料IoTサービス「ソルとも」の開発に至りました。食事療法が必要とされる疾病医療においては、食塩摂取量の管理が重要とされています。
しかし、毎日の食事で、調味料の正確な計量や食塩摂取量の計算を行うことは非常にハードルが高く、十分な「減塩」を継続できないことが課題となっています。
そこで3社は、このサービスを通じて、より簡単な「減塩」への取り組みをサポートし、多くの方の健康的な食生活の促進に貢献してまいります。
――どのような人が使うことを想定している?
ヘルスケアサービスとしては、病気療養後や、健康管理のために厳格な食事療法が必要な方や、そのご家族がご自宅にて、食塩の使用量を管理する形での使用を想定しています。
また、調味料の使用状況(日付/種類/使用量など)が把握できることから、食品メーカーなどの市場調査目的での使用にも活用できると考えています。

――一般の家庭で使うことは想定していない?
まずは、ヘルスケアとしての使用を念頭に置いています。ワンプッシュで一定量の調味料が出て、使用した調味料の量が把握できることで、計量の手間を軽減し、料理の味を一定に保つことに役立つキッチンツールとしても活用できるのでは、と考えています。
課題は「多種類の調味料への対応」
――サービスの提供は、いつ頃を予定している?
2024年度中に実証実験を実施し、その結果を踏まえながらビジネス検討を行い、2025年度中に本格的なサービスを展開したいと考えています。
――実用化の課題は?
「多種類の調味料への対応」です。現状では、対応している調味料は、食塩と醤油のみです。しかし、一般的な家庭では、めんつゆ、ポン酢、ソース、顆粒だしなど、様々な食塩を含有する調味料を使用しているため、「デバイス側」と「アプリ側」で対応が必要と考えています。
・デバイス側の対応
各種顆粒調味料の形状・性質に合わせた排出機構の調整が必要です。
・アプリ側の対応
調味料を使用しているメーカーから調味料のデータを取得し、ユーザーが機器に使用する調味料を登録できるようにするなどが必要です。技術的には可能と考えています。

まずはヘルスケアとしての使用を念頭に置いていて、料理の味を一定に保つキッチンツールとしても活用できる可能性がある「ソルとも」。「多種類の調味料への対応」という現状の課題を解決し、一日でも早く実用化することを期待したい。