熊本地震から7年となった2023年、県内では復興の歩みが目に見える形で進んだ。
7月に全線再開した南阿蘇鉄道のその後や、震災遺構を活用した取り組みについて取材した。

目に見える形で進む復興の歩み

2023年3月には、熊本地震で甚大な被害を受けた熊本・益城町を走る県道熊本高森線で、4車線化がスタートした。車道が広くなったのはもちろん、自転車や歩行者が通る道路も広くなった。

車道だけでなく道路も広く
車道だけでなく道路も広く
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また、同じ月には熊本地震の仮設団地の入居者がゼロになったり、益城町役場新庁舎が落成したりしたほか、“創造的復興のシンボル”熊本空港新旅客ターミナルビルが開業した。

そして7月15日には、南阿蘇鉄道が7年3カ月ぶりに全線で運転を再開。熊本地震で被災した公共交通インフラの中では最後の復旧で、これまで不通となっていた中松 - 立野間に車輪の音が戻った。

地震で大きな被害を受けて架け替えられた橋「第一白川橋梁」の上を列車が通過。

待ちに待った“列車が走る日常”。沿線には笑顔があふれた。

全線開通から5カ月「去年とは段違い」

あれから約5カ月、JR豊肥線・肥後大津駅に直通乗り入れする、南阿蘇鉄道の朝の1両編成の車両は満員。熊本市内や大津町、阿蘇市内の高校に通う高校生がほとんどだ。

南阿蘇鉄道では、全線再開と同時にJR豊肥線・肥後大津駅までの直通乗り入れも開始した。

現在は朝の時間帯に1日2往復運行していて、通学利用だけでなく、熊本方面からの観光客の需要も多く、滑り出しは好調だという。

南阿蘇鉄道・山本英明さん:
たくさんの人に乗っていただくことが、私たちにとって、とてもうれしいことであり、全線運転再開できたことの喜びの中でも、一番の喜び

立野駅前「ニコニコ饅頭」・高瀬大輔さん:
開通してからは、想像していた以上に忙しくなった。去年とは段違い(に多い)

母・清子さん:
一番忙しかった。(嫁いでから)60年のうちで…

乗客数が地震前を上回る月も

南阿蘇鉄道によると、地震前と比べて3割程度だった乗客数が、全線再開以降、大きく回復。8月と9月は地震前を上回った。

人気漫画「ONE PIECE」とのコラボ列車「サニー号トレイン」と、南鉄の名物「トロッコ列車」は連日大盛況で、外国人旅行客の回復も追い風となった。

一方で、トロッコ列車がシーズンオフとなる12月から2024年3月上旬までの間、好調に推移している乗客数を、いかに安定的に確保できるかという課題もある。観光関係者は「一年中、楽しんでもらえる高森町を発信していきたい」と話す。

高森観光推進機構・井上真希さん:
電動キックボードと電動レンタサイクルの貸し出しをして、便利で安全に高森町内を周遊してもらえるよう取り組んでいる。

「震災ミュージアムKIOKU」誕生

南阿蘇鉄道の復活と同じ日、熊本地震の教訓を語り継ぐ新たな拠点が誕生した。

「震災ミュージアムKIOKU」を「震災遺構」の中核拠点施設として、東海大学旧阿蘇キャンパスの一角に熊本県が整備した。

12月7日は、修学旅行で広島市立早稲田中学校の2年生約50人が訪問。

「KIOKU」で熊本地震について学んだあと、被災したキャンパスで地表に現れた断層などを見て回った。また、立野地区に移動し、地震で大規模な斜面崩壊が起きた現場や、崩落した旧阿蘇大橋の橋桁の一部なども見学した。

広島市立早稲田中学校・佐々木春乃さん(14):
落ちてしまった橋や崩れた山とかを見て、ネットやニュースではわからない…言葉にするのが難しいけれど、感じるものがあった

広島市立早稲田中学校・小川明音さん(14):
同じことが起きないように、世界の人たちが“自分の事”として捉えることができるようにするために重要だと思った

自分事として捉えてもらうことが大事

震災ミュージアム KIOKUスタッフ・市村孝広さん:
熊本地震について知るだけでなく、自分の地域でも災害が起こる可能性があることを県外の人にも知ってほしい

「震災遺構」の活用について専門家は、次のように話す。

熊本大学くまもと水循環 減災研究教育センター・鳥井真之特任准教授:
実際に現場を見ることによって、追体験していくことは大きなポイント。特に災害で重要なのは、“人ごとではなく自分の事”として捉えること

鳥井特任准教授は、「熊本地震の記憶だけでなく、教訓も発信し、防災意識を高めるきっかけにすることが大切だ」と話す。

熊本地震から7年8カ月、今後も起こる災害への備えのために、地震の記憶と教訓を発信し続ける責任が私たちにはある。

(テレビ熊本)

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