ゲームのコントローラーと言えば、両手で持つタイプを思い浮かべるかもしれないが、「プレイステーション5」からユニークな形状の製品が登場した。

それが「Access コントローラー」。障がいや加齢などで運動範囲に制限がある人でも使いやすい“アクセシビリティコントローラー”を目指したもので、形状は“亀の甲羅”を思わせる。中央に丸くて大きなボタンがあり、周囲をさまざまなボタンがぐるりと囲む作りになっている。

特徴はカスタム性の高さで、ボタンは取り外して位置を付け替えられるほか、プレイステーションでおなじみの「○」「×」「L1」「R1」といった役割も自由に設定できる。

操作用のスティックアームは本体の横にあり、こちらもスライドで位置の調整が可能。Access コントローラーはPS5本体とUSBケーブルで接続し、ペアリングした後はワイヤレスで使用でき、PS5でプレイできるゲームすべてに対応しているという。
サイズは幅が約141mm、高さ39mm、奥行き191mm。重量は約322g。12月6日に世界同時発売されていて、日本での希望小売価格は1万2980円(税込)。通販サイトや家電量販店で取り扱っている。
開発には5年を要したといい、従来のコントローラーとは大きく異なるが、形状にはどんな意図や狙いがあるのだろう。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)の担当者に聞いた。
丸い形状やボタンの違いにも狙いがある
――Access コントローラーを開発したのはなぜ?
障がいがある方から「標準のワイヤレスコントローラーでは操作が難しい」という声を聞いており、そういった方々がどうすれば、PlayStationのゲームを楽しんでいただけるかを考えてきました。アクセシビリティの専門家の声や多くのユーザーテストを通して、一人でも多くのプレイヤーに遊んでいただけるよう、皆様のニーズに合わせることができるカスタマイズ性を大事にしたコントローラーの開発に至りました。

――丸い形状やアームが印象的だが狙いはある?
Access コントローラーは360度回転させ、自由な向きで使用できます。異なるボタンの組み合わせでも、製品としてのまとまりを保てるデザインとして円形を採用しました。スティックキャップ(スティックアームの持ち手部分)もプレイヤーのニーズにお応えできるよう、形状の異なった3種類を同梱しております。

――ボタンの形状が異なるが、ここの狙いは?
ボタンの形状は試行錯誤を重ねました。例えば「ピローボタンキャップ」は丸く膨らんでいて、指を少し動かすだけで頂点に届き、押し込みやすくなっています。また「オーバーハングボタンキャップ」はコントローラー中央にせり出しているため、手の小さい方でも押しやすいような形状をしています。
片手で操作することも可能
――実際のゲームではどのように操作するの?
使いやすい形でご使用いただきたいと思っています。製品としては平らな場所に置いて使っていただく前提で、360度回転させ、自由な向きでご使用いただけます。片手だけで操作したり、2台を左右において片手ずつで操作したりすることもできます。
製品底面には、AMPSマウント(※)や三脚に固定できるネジ穴を搭載していますので、それらに固定してご使用もいただけます。プロファイルも3つまで作成できすぐに切り替え可能で、ゲームによっても設定を変えることができるため、ご自身の使いやすい形を探していただければと思います。
※アクセシビリティ周辺機器などを機器に固定するための取り付けネジの業界規格

――開発に5年ほどかかったというが、その理由は?
SIEとして初のアクセシビリティコントローラーということもあり、ユーザーテストは通常の商品機能と比較して遥かに多くの回数を実施しています。アクセシビリティ全般に言えますが、開発してデザインして、それで完成とはせず、実際に障がいのある方に触っていただいてチェックしないといけないと思いました。コンセプト含めゼロから考えましたので、苦労もありました。

――両手で持つタイプのコントローラーとは連動できる?
Access コントローラーに、DualSenseまたはDualSense Edgeワイヤレスコントローラーを組み合わせ、単一の仮想コントローラーとして使用することができます。一人のプレイヤーが複数のデバイスを組み合わせて使用したり、サポートの方などに操作いただき、協力してプレイしたりすることも可能です。例えば、1体のキャラクターを複数で操作するようなこともできます。
これまで遊ぶことが難しかった人にも楽しんでほしい
――製品に反響のようなものは寄せられている?
開発段階のお話ですが、ユーザーテストをしていただいた方のなかに、これまでにPlayStationのゲームを遊んだことがないというお子さんがいらっしゃいました。Access コントローラーで実際にプレイしていただいたのですが「PlayStationのゲームがプレイできて楽しかった」というコメントをいただきました。
最後には直筆で手紙も送ってくださり、一人でも多くのプレイヤーの方にゲームを楽しんでいただきたいという思いが届いた瞬間でもあり、開発メンバー一同非常に感動しました。
――Access コントローラーへの期待は?
今回の製品はコントローラーを持って使用することが難しい、正確にボタンを押すことが難しい、効率的にスティックを操作するのが難しい、この3つに課題を持つプレイヤーの方々に簡単に、快適に、より長い時間ゲームを楽しんでいただければと開発しました。通常のコントローラーでは遊ぶことが難しいという方々にもご使用いただき、一人でも多くの人にゲームを楽しんでいただきたいと思います。
Access コントローラーの取り組みが広まれば、ゲーム業界の活性化にもつながりそうだ。身体的要因に悩まされることなく、すべての人がゲームを楽しめる環境が広がっていくかもしれない。