福島県の磐梯山の麓に、会津地方で初めてのウイスキー蒸溜所が完成した。創業者は、2022年4月、北海道・知床半島沖で起きた観光船の沈没事故で命を落とした。「世界で愛されるウイスキーを」一人の男性が抱いた志と夢は引き継がれた。

蒸溜所の名前は天鏡

「天を映す澄んだ猪苗代湖のように」との願いを込め、創業者の小池駿介さん(享年28)が名づけた「天鏡蒸溜所」
天鏡株式会社の大沼孝専務は「小池さんは非常に明るくチャレンジしていて、未来を見据えたこの蒸溜所も、日本を代表するような蒸溜所を目指して考えられておりました」と話す。

福島県を代表する猪苗代湖・別名「天鏡湖」から名付けられた
福島県を代表する猪苗代湖・別名「天鏡湖」から名付けられた
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知床 観光船沈没事故

2022年4月、北海道・知床半島沖で起きた観光船の沈没事故。犠牲者20人・行方不明6人。出張で北海道を訪れていた駿介さんは、週末を利用してこの船に乗り、帰らぬ人となった。

創業者の小池駿介さん(享年28)
創業者の小池駿介さん(享年28)

最高のウイスキーを

2019年、父・小池信介さんが率いるリオン・ドールコーポレーションに入社し、取締役に就任した駿介さん。大学生の時に留学したイギリスで、スコッチウイスキーと出逢った。

リオン・ドールコーポレーション(本社:福島県会津若松市)スーパーマーケット事業を展開
リオン・ドールコーポレーション(本社:福島県会津若松市)スーパーマーケット事業を展開

「最高のウイスキーを世界に届けたい、そして日本と世界の架け橋になりたい」と、父親とともに新たに立ち上げたウイスキーの製造事業。夢の実現に向けて、国の内外を飛び回っていた最中の事故だった。

父とともにウイスキーの製造事業を新たに立ち上げる
父とともにウイスキーの製造事業を新たに立ち上げる

情熱を注いできた事業

事業の立ち上げから駿介さんを支えてきた、蒸溜所の専務・大沼孝さん。「本場スコットランドで数十カ所の蒸溜所をめぐり、人と出会い、単身で海外との深い繋がりを作ってきた。小池駿介さんが何度も図面を書き直して、海外の仲間からアドバイスを受けながら出来上がった蒸溜所です」と話し、ウイスキー造りに情熱を注ぐ駿介さんの姿が焼き付いているという。

駿介さんが海外の仲間からアドバイスを受けながら作った蒸溜所
駿介さんが海外の仲間からアドバイスを受けながら作った蒸溜所

伝統製法と磐梯山の水

蒸溜所で使われるのは、磐梯山の麓から湧きでた水。駿介さんが学んだ本場・スコットランドの伝統的な製法を取り入れ、会津で醸した「ジャパニーズウイスキー」を世界へ届ける。

会津で醸した「ジャパニーズウイスキー」を世界へ
会津で醸した「ジャパニーズウイスキー」を世界へ

天鏡株式会社の大沼専務は「小池駿介の思い、情熱、夢を私たちが引継ぎ、オーセンティックジャパニーズウイスキー造りを目指したい」と語る。
駿介さんが見た、ウイスキーの夢。志がある限り、夢は終わらない。

天鏡株式会社専務・大沼孝さん
天鏡株式会社専務・大沼孝さん

思いに触れるウイスキー

2024年夏に販売予定の「風のウイスキー」は、駿介さんがウイスキー造りを学んだスコットランドでオーダーし、寝かせているもの。ウイスキー造りに真摯に向き合っていた駿介さんの情熱に触れることができる。

2024年夏に販売予定の「風のウイスキー」
2024年夏に販売予定の「風のウイスキー」

もともと駿介さんはお酒が苦手だったという。留学先で出逢ったスコッチウィスキーに魅せられ、虜になったそうだ。その魅力を多くの人に伝えようとウイスキー造りに真摯に向き合っていた駿介さん。天鏡蒸溜所で一から造ったウイスキーが販売されるのは11年後になるという。

天鏡蒸溜所で一から造ったウイスキーが販売されるのは11年後
天鏡蒸溜所で一から造ったウイスキーが販売されるのは11年後

そして、駿介さんの遺志をつないでいこうと、会津地方の高校生を対象にした奨学基金も設立されている。夢を実現させるという駿介さんの情熱は、次の世代の若者にも受け継がれていく。

(福島テレビ)

福島テレビ
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