山形大学の学生たちによる「模擬裁判」が、12月1日に上演された。2023年のテーマに選んだのは、話題性のある社会問題「男性の性犯罪被害」。さまざまな取材を重ねて表現した裁判劇を、多くの市民が見届けた。
取材を重ね脚本を作成
山形大学の模擬裁判は、裁判や法律の問題を身近なこととして考えてもらおうと、人文社会科学部で学ぶ学生たちがテーマ選びから脚本作り、劇の役者までを全て自分たちで行い、毎年上演しているもの。

2023年のテーマは「男性の性犯罪被害」。高校時代に、部活動の顧問から性的被害を受けた主人公の大学生が「不同意わいせつ罪」で告訴したことから刑事裁判がスタートする。
PTSD・心的外傷後ストレス障害の苦しみ、身近な人の理解や被害者支援センターのサポートなど、被害者が抱える現状をわかりやすく伝えている。

山形大学模擬裁判実行委員会・丸田蒼委員長:
性犯罪というテーマに向けて、1年間真剣に考えてきた。その思いを少しでもたくさんの方々に見てもらいたい
山形大学の模擬裁判は1973年に始まり、2023年で51回目となる伝統ある公演だ。2022年の公演を終えた直後からテーマを考え、1年生から3年生の実行委員会のメンバー95人が、1年がかりで劇を作り上げてきた。

脚本は、警察・裁判所・検察庁・被害者支援センターなど、多くの取材を重ねて作られ、性犯罪の実情のほか、性別による偏見・周囲からの2次被害の表現にも注意を払い、公演ぎりぎりまで手直しを続けた。

シナリオ・演出担当 小笠原美桜さん:
例えば、友人に「同性愛者だ」とやゆされるシーンとかも、言葉選びを間違うと、劇全体で同性愛者を悪く言ってしまう扱いになってしまう。誤解のないように言葉を選んだ

山形大学模擬裁判実行委員会・丸田蒼委員長:
山形県警や被害支援センターに被害者の心理的葛藤だったり現状を取材する中で、今まで私たちが授業で習ったことは氷山の一角に過ぎない。まだまだ勉強しきれていない自分たちの力不足を実感し、「もっともっとがんばらないと」と、葛藤・苦労した
学生たちの1年の成果「模擬裁判」
模擬裁判では、被告人の行為に対し、被害者の「同意があったのかどうか」が争点となった。検察は「学校という閉鎖的な環境で自身の地位を利用した犯行」として懲役1年の実刑を求刑。これに対し弁護側は「抵抗しなかったことから同意が得られていた」と無罪を主張する。

検察官役:
原告の証言では、被告人からのわいせつ行為については“同意がなく”行われたものであると主張しており、当該行為は被告人が一方的に行ったものと主張している

弁護士役:
Aさんが抵抗しなかったことなどの状況から、Aさんが触れられることに抵抗できる状況下であり、“同意があった”と言える
そして…。

裁判長役:
主文、被告人を懲役1年に処する。裁判確定の日から2年間、刑の執行を猶予する
裁判長は「被告人の証言の信用性が低く、同意を得られたとは認められない」と、懲役1年執行猶予2年の有罪判決を言い渡す。学生たちが1年をかけて作り上げた裁判劇はこれで幕を下ろした。

客:
今回の公演を通して、男性性被害の実態などを知ることができていい経験になった

客:
セリフ、言葉1つ1つが、学生が話し合いを重ねて作り上げたということが伝わったので良かったと思う

山形大学模擬裁判実行委員会・丸田蒼委員長:
「模擬裁判を見て良かった」、「わたしの中で何かが変わったかもしれない」という言葉をもらったときに、こういう言葉がほしくてずっと1年間頑張ってきたので、いろんな形で支えてくれた全ての方に感謝しかない
2023年の模擬裁判は、2日間の公演に約300人が足を運び、学生たちの1年の成果を見届けた。
(さくらんぼテレビ)