岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡り、財源確保の議論が、「こども家庭庁」で11月9日に始まりました。

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新たな少子化対策に向けては、年間3兆円台半ばの財源が追加で必要となります。

政府は、財源を確保するために新たな「支援金制度」を創設。医療保険に上乗せして徴収し、財源を確保する方針などの案が示されています。

現役世代への負担増になりかねない、新たな支援金制度について、SNSでは「メガトン増税と言われても仕方ない」「やっていることはステルス増税」と批判の声が。

会社員(20代):
結局、出るところのお財布が変わってないから、それが根本的な解決になっているのかは、怪しいですかね。

会社員(50代):
医療保険で集めるっていうのは、ちょっとおかしいのではないかと思う。選挙民を舐めているなっていうふうに思います。

なぜ少子化対策の財源を、医療保険から徴収するのか?国民の負担はどうなるのか?専門家に詳しく話を聞きました。

専門家「これは少子化対策ではなく子育て支援策」

政府が打ち出した新たな支援策は、児童手当の拡充や、出産費用の保険適用、こども誰でも通園制度や、育児休業中の給付の増加などがあります。

政府はこの予算財源について、今ある予算を使う「既存の予算の活用」、ムダな歳出はカットする「歳出改革」社会保障費抑制、そして新たな仕組み「支援金制度」の三本柱を打ち出しました。

三つ目の柱、「支援金制度」とは、医療保険料に“上乗せ”するかたちで、国民や企業から保険料を集めて、子育て予算にあてる新たな仕組みです。

この制度について、こども家庭庁は「全世代が子育て世代を支える、新しい分かち合い・連帯の仕組み」と説明。政府は、社会保険料の医療や介護分野の保険を見直すなど、歳出改革で社会保険料の負担を減らし、この範囲内で支援金を捻出すると説明していますが、第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱 利廣氏は、この政策に疑問を投げかけます。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト・永濱 利廣氏
第一生命経済研究所 首席エコノミスト・永濱 利廣氏

永濱 利廣 氏:
そもそもこの政策って、少子化対策ではなくて、子育て支援策だと思うんです。そもそも少子化対策って、婚姻率を上げて、子育て世代を増やすということだと思うんですけど、これって結局これから結婚子育てをしようとする人には、負担が増えることになりますから、むしろ少子化に拍車をかけてしまうのではないかとすら思いますね。

――何が少子化対策で一番大切なことだと思いますか?
これは、できるだけ経済が良くなるまでは、負担は増やさずに、国債発行でも、税収の上振れでもいいと思いますので、そういうところでやっていくことが重要だと思います。

また、社会保険労務士の佐藤 正明氏も、「医療保険は病気になったときに助け合おうというのが、保険の趣旨。今回は少子化対策なのだから、税金で対応すべきだ。(社会保険の歳出改革で)プラマイゼロにはできないと思う。『国は頑張ったけど、国民への負担が大変なので、しょうがないから国債(借金)で』と国債(借金)ありきでやっていると思う」と、話します。

現役世代の負担増の可能性

日本の平均年収443万円(2021年調査 東京都内在住)で考えたとき、年間約21万円の健康保険料を支払っている現役世代。この中には、年間一律7万7112円の後期高齢者支援金も含まれています。この後期高齢者支援金で、75歳以上の医療費の約4割をまかなっている現状です。

ここに「少子化対策支援金」が追加されるとなると、現役世代の負担はさらに大きなものになるとみられます。

永濱 利廣 氏:
おそらくこれに踏み切ったのは、多分一番「消費税」というのが、まんべんなく負担を強いることが望ましいということだと思うのですが、消費税は抵抗が強いので、医療保険だと、生活保護受給者以外はほとんど負担していますから、そういったところで取りやすいところにいったのかなという印象です。

長谷川ミラ 氏:
永濱さんがおっしゃっていた、「少子化対策ではなく子育て対策」だというのはすごく納得がいくというか、なぜ我々の少子化対策を、自分たちで負担しなくてはいけないのかと。お金がないから子供が産めないと言っているのに、なぜ増税するのかなと。

橋下徹 弁護士:
国民が増税になると怒るんですけど、社会保険料になると怒らないんですよ。自分がサービスを受けるものに対しての保険料だから仕方ないと思うんですけど、実は違うところにいっぱい使われていて。僕は、所得の低い高齢者の方はしっかり支えればいいんだけども、所得のある人には現役世代と同じだけの負担を求めるべきだと思うんですけれど。
若者がもっと怒らないとこれは。

長谷川ミラ 氏:
それは唯一私たちの悪いところで、やはり成功体験がない。どうせ変わらないというところで、ずっと来てしまっている。だから=子供もいらないや、という選択になってきたり、そもそも人生に対するモチベーションが、下がってきているというのは、悪いところですよね。

国民への説明は?

国民への負担について、岸田首相は10月30日の衆院予算委で、「徹底した歳出改革を行った上で、国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す」と話しています。

――国民への説明はこれで十分なのでしょうか?
永濱 利廣 氏:

なかなか難しいと思います。トータルで3.5兆円の中で、おそらく1兆円強くらいは我々の負担に来ると思うのですが、単純に計算すると国民1人あたり、月平均1000円くらいの負担増になると思いますので、覚悟が必要になると思います。

(めざまし8 11月13日放送)