近年、「宇宙ごみ(スペースデブリ)」が問題になっている。
地球の周回軌道上にある不要な人工衛星やロケットの破片などのことだが、内閣府によると、10センチ以上だけでも3万4000個が存在するという。
この宇宙ごみを捕獲する実証実験のため、静岡大学工学部の能見公博教授の研究グループは9月7日、超小型衛星「STARS-X」を完成させた。
研究グループによると、「超小型衛星STARS-Xプロジェクト」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募する「革新的衛星技術実証3号機」の実証テーマに選定。選定されたテーマは「宇宙テザー技術を用いたデブリ捕獲の技術実証」だ。
ダミーの宇宙ごみをネットで捕獲する実験
この技術実証では、
大きさが約50センチ立法メートルの「STARS-X」が宇宙空間でテザー(ロープ・ワイヤ)を1キロメートル伸ばすこと、テザー上をロボットが移動すること、そして、衛星から放出したダミーの宇宙ごみ(デブリ)をネット(網)で捕獲する実験を行う予定だ。
JAXAによると、今は「STARS-X」の打ち上げ準備を進めている最中で、打ち上げ時期については「調整中」としている。
近年、「宇宙ごみ(スペースデブリ)」が問題になっているが、そもそも、何が問題なのか?
また、宇宙ごみに関する国際ルールは存在するのか?
まずは、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の担当者に聞いた。
宇宙ごみに関し現状ルールはなくガイドライン
――現在、宇宙ごみはどのぐらいの数、存在すると言われている?
European Space Agency(ESA=ヨーロッパ宇宙機関)の「Space debris by the numbers」(2019年1月発表)によれば、10センチ以上が3万4000個、10センチ未満が90万個以上、1センチ未満が1億3000万個と言われています。
――現在も宇宙ごみは増えつづけている?
はい。宇宙ごみ同士が衝突すると破片が出るなどして、増える傾向にあります。
――そもそも、宇宙ごみが問題になっている理由は?
宇宙ごみがISS(国際宇宙ステーション)に衝突するなど、将来の宇宙活動の妨げになると懸念されています。
――宇宙ごみに関する国際ルールは存在する?
国際的な議論は行われていますが、ルールはなく、ガイドラインが出ています。ガイドラインは「宇宙活動の安全性を保つ」「宇宙ごみが今どういう状況になっているのか共有し、共有した情報を使えるようにする」「宇宙ごみを今後増やさないこと」などです。
まずは「大気圏再突入で燃やして処分」
ダミーの宇宙ごみを捕獲する実験を行う予定の超小型衛星「STARS-X」。今後、「STARS-X」が実用化し、実際の宇宙ごみを回収した場合、そのごみはどのように処分するのか?
超小型衛星「STARS-X」を完成させた研究グループのメンバー、静岡大学工学部の能見公博教授に話を聞いた。
――「宇宙ごみの捕獲」に注目した理由は?
2009年に初号機「STARS」を打ち上げた直後から、宇宙ごみの問題が顕在化し、我々の研究が活かせると思いました。
――宇宙ごみの捕獲(回収)をすでに進めている国や団体はある?
あります。NASA(アメリカ航空宇宙局)、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)、中国などが世界的に競っています。宇宙ベンチャーもありまして、日本では「アストロスケール(東京・墨田区)」が注目されています。
――「STARS-X」が実用化し、実際の宇宙ごみを回収した場合、そのごみはどのように処分する?
まずは大気圏再突入で燃やします。そして次のステップではリサイクルで再使用します。
――「STARS-X」に関して、現状、感じている課題は?
実験を確実に実施し、その運用方法を立案することです。
増え続けているという宇宙ごみ。ダミーの宇宙ごみでの捕獲する実験が成功し、近い将来、日本の「STARS-X」が宇宙ごみを減らす存在になるかもしれない。