新藤義孝経済再生担当相は5日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、政府が2日に閣議決定した経済対策に関し、「新しい経済のステージに移らなければ、私たちの未来はない」と述べ、対策の意義を強調した。

新藤氏は、経済対策について「消費対策という前に(減税や給付金で)可処分所得を向上させ、生活の安心感を作ってもらう。常に可処分所得が物価を上回って、それによって消費を刺激しながら、国の経済が自分たちの力で大きくなっていく。この流れを作る。いま絶好のチャンスが来ている」と述べた。

番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)は「物価高対策は賛成だが、残念なのは、岸田政権はきちんとした物語、論理、ロジックができていない」と苦言を呈した。「物価高対策だと言っているのに、景気対策的なことをやれば、また物価がどんどん上がって、低所得者がまた苦しむではないか、という情報が氾濫している。(政府は)しっかりデータを示し、急激なインフレにはならないよと(国民を納得させるべきだ)」と主張した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
政府は物価上昇を上回る賃上げを来年までに実現するため、今回新たに経済対策を打ち出した。岸田首相は「可処分所得を伸ばして消費拡大につなげ、好循環を実現する」と言う。どのように実現するか。

新藤義孝・経済再生担当相:
日本は30年ぶりのチャンスを迎えている。株価も賃金上昇も設備投資もいずれも30年ぶりの高水準になっている。ようやく長引くデフレからGDPギャップが、ギリギリではあるが、プラスになろうとしている。このタイミングでいかに自立して持続可能な日本経済を作れるかの大きなチャンスが到来している。コロナを乗り越えて、私たちは厳しい状況をみんな経験してきた。一方で、日本の社会は構造的に本当に変化してしまった。少子高齢化、人口減少、特に生産年齢人口はどんどん下がっていく。そういう中で、新しい経済のステージに移らなければ、私たちの未来はない。まずは目の前のこの厳しい物価高に苦しんでいる皆さんに対しての素早い対応として、低所得者世帯には給付をする。そして何よりも賃金を上昇させる。自立的な経済を動かすことが重要だ。この春が勝負になると思うが、春闘で賃上げを企業の皆さんにお願いする。その大前提は業績が上がりますよと。消費が拡大して業績が上がるんだから、それはきちんと社員に還元できますよという形を示した上で賃金上昇をお願いする。名目賃金は30年ぶりの高水準だ。でも、それ以上に物価が上がっているから実質賃金が下がっている。ならば、実質賃金をプラスにできるような賃上げをしなければならない。ただ単に企業に「上げてくれ」ではなくて、上げても業績が伸びると。賃金を上げることで人手不足も解消できると。人はそもそも足りないので、省力化投資、ロボット(の導入)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)で新しい仕組みを経営に入れていかないと、会社の存続、発展は難しい。まずは賃金を上げてくれたところには減税をする。特に今までやったことのない新しい制度として、赤字でも賃金を上げた企業には減税をする。ところが、赤字であれば税金を払ってない。その企業が黒字を出すようになってから、その分を減税でお返しする。繰越控除という初めての制度だ。将来の黒字を見越して賃上げしてください、その効果が出た時にきちんと減税しますからと。そういうことで構造的な賃上げをもたらそうとしている。その上で、生産性を向上させるためには、大前提として供給力(強化)、働きやすく、きちんと賃金を得られるような、そういう労働力の強化をしなければならない。そのためにリスキリングをやろう、ジョブ型(雇用制度)を入れようということになる。それにより業績が拡大していく、生産性が向上する。日本の潜在成長率を上げていかなければならない。そのためには経済を引っ張る、世界で勝負できる先端産業をもっと大きくしていく。地域の産業、中堅・中小企業の設備投資、工場誘致などを促進する。こういうことを(経済対策に)入れている。何よりも大元にあるのは安心と安全だ。これだけ常に災害が起こり、かつてないほどの規模のものも頻発している。国土強靭化を進める。総合的な対策によって、私たちは民需主導の持続型成長をつくるための第一歩として今回の経済対策がある。

橋下徹氏(弁護士・元大阪府知事):
僕は物価高対策には賛成だが、岸田政権が残念なのはきちんとした物語、論理、ロジックができていない。国民にとって減税はありがたいと思うのに、なぜ政権の支持率上昇につながらないかといえば、そのロジックの部分、論理の部分(ができていないから)だと思う。例えば、今回の物価高対策は来年の物価高の対策なのか、今年度、今年物価高で苦しんだ人への対策なのか。というのは、報道では、来年、食品に関してはもう物価高が鈍化していると。

新藤大臣:
減税と給付金、賃上げ、ブツ切りではなくて、減税と給付金でまずは可処分所得(の向上)をお手伝いする。で、賃上げをする。次に供給力が強化され、生産性が向上する。最終的には日本経済の潜在的な成長率が高まってくる。そのストーリーが必要だ。ここを頑張れば、先にはこんなことが起こるということを私は丁寧に説明していきたい。今の物価高対策はまずは当面の物価高だ。では、物価が下がってマイナスになっていいのかと。欧米は適度な物価上昇で、それを超える賃上げが常にある。それによってGDP(国内総生産)も拡大していく。日本はそれがなくて物価も上がらないが、賃金も上がらない。なぜなら売り上げが上がらないから。結局は会社を維持するためにコストカットするしかないと。そうではなくて、(物価と賃金が)緩やかな上昇をしながら、常に可処分所得が物価を上回って、それによって消費を刺激しながら、国の経済が自分たちの力で大きくなっていく。この流れを作る。いま絶好のチャンスが来ている。

橋下氏:
今回の政府の議論で一番欠けているのは、こういう対策をやったら、さらに物価を上昇させるのではないかと。僕はこれぐらいなら急激な物価上昇にはならないと思う。でも、経済の総論から言うと、いま物価が上がっていて、物価高対策だと言ってるのに、景気対策的なことをやったら、また物価がどんどん上がっていくではないか、低所得者がまた物価高に苦しむではないかという情報が氾濫している。(政府は)しっかりデータを示し、急激にインフレにはならないよと(説明するべきだ)。

新藤大臣:
非常に丁寧に説明しなければいけないが、そういうことを言っている人は、前提として経済理論として、これはインフレの政策か、デフレの政策かと。そうなると、これはインフレを助長するよと。そのポイントだけの議論だ。いま突然にそんなことになるとは私たちは思っていない。まずはこの物価高対策、そして、可処分所得の向上、これが大事だ。消費対策という以前に可処分所得を向上させながら、生活の安心感を作ってもらう。その中から必要なものはやはり支出していこうと。でも、その大前提として賃金が構造的に上がってくるよという世の中にしないと、日本はいつまで経ってもGDPも上がらない、成長もしない、低成長のままでとりあえず現状維持では将来がない。そこを丁寧に説明したい。

松山キャスター:
中小企業全体の約7割が人手不足に陥っているというデータがある。こうした深刻な状況で構造的な賃上げは本当に実現できるのか。

新藤大臣:
これはとても重要なポイントだ。価格転嫁に成功しているけども、それは物品費、つまり物品が値上がりした分の転嫁はかなりのところ進んでるのだが、労務費、要するに賃金の上昇分を価格転嫁させてほしい、というところがとても弱い。そこをどうすれば上げられるかということを、公正取引委員会に作業させて、ガイドラインを作って公表しようと思っている。物品費と労務費の上昇分を価格に転嫁させることがとても大事だ。人手不足は本当に深刻だ。人が余っているわけではない。失業率は史上最低水準で、有効求人倍率は高止まりしている。問題は、人手不足に陥っている業種ほど、実は省人化投資が進んでいない。対策といえば、とにかく人を増やしたいと。

松山キャスター:
人が少なくても機能するように投資をするということか。

新藤大臣:
その通り。省人化の投資は全部ロボットにするのではなく、一部分どこかを合理化してDX化させることで人が少なくても企業が事業を運営できる仕組みを作らなければならない。今回の経済対策には、「カタログ式」と私が名づけた仕組みを盛り込んだ。省人化の設備や施設、ソフトを入れた場合には、その分の補助金を出すが、今までの補助金は、こういうのをやろうとすると、どれくらいの経済効果があるのかと、細かくとても面倒くさい計算をしないと申請できない、申請が難しいということがあった。そこで、この機械を買ったらいくらの補助金が出るというのをあらかじめカタログ式で提示して、簡単に申請できて、しかもすぐに補助金をもらえるようにした。例えば、配膳ロボットの導入。旅館で、客の膳を下げるは仲居さんがやるが、膳を下げて廊下に出たら、配膳ロボットに乗せて持って行かせて自動で洗ってもらう。バックヤードでの仕事はとてもたくさんある。トラックだって、荷物の積み下ろし、運搬を自動でできるような仕組みなんてやろうと思えばできる。そういうものを入れた場合には、補助金を出すから新しい設備を入れてくださいと。今の少ない人数でも仕事が維持できて業績が上がるようにしてくださいと。ならば、それは賃金に回せますよねと。こういう転換を作ろうとしている。

橋下氏:
人手不足の分野では、配置基準の規制緩和などいろいろやられているが、やはりライドシェアの導入くらいやらないと。いま免許保有者は8000万人、自動車はいま6000万台あるわけだから、これらを有効に物流にも活用するなど何かそういう太い柱がないので、いろんなことされても、それが国民に伝わってこない。

新藤大臣:
一体この経済対策でどんな効果が出るのか。新しい技術を社会実装する。単純に日本中でライドシェアができるのではなく、困っている地域がある。もうタクシーもバスもない。そういうところでは自家用有償旅客輸送(の規制)を緩和して、そこの中で乗りたい人と乗せてあげられる人をスマホでマッチングして、マイナンバーのIDと公金受け取り口座で、キャッシュレスで料金の支払いもできる。必要なときに必要な人が助け合いながら暮らしていける。ボランティアだけれども、それなりのきちんとした料金をもらう。それが新しい事業になる。

橋下氏:
宅配便などに関しても貨客混在で、人を乗せてもモノを運んでもいいではないか。それぐらい大きな話を出してもらいたい。

新藤大臣:
今回、規制緩和、規制改革36項目、税制で6項目、新しい制度を入れる。規制改革36項目は、2013年以降の経済対策で最大だ。いかに新しい経済に転換させるか。ドローンについても、今までは人が目視できないところは飛ばせなかったが、目視外飛行も緩和する。自動運転もただ単にトラックが自動で走るだけではない。自動運転で大量に24時間移動できるならば、そこで受け取った荷物を今度は小分けして地域の物流の人たちに荷物をちゃんと運んでもらえるようにする。そのためには伝票を統合しないとならない。自分の系列会社の伝票でしか受発注ができなければ、新しい人は(車が)空いてるのに入れない。だから、DXにして新しい統合した伝票を使おうと。当面、トラックを自動運転させるのだが、EV電気トラック、水素トラックなどをいよいよ(社会に)実装しようではないかと。まずは新東名高速道路でやるが、全国の高速道路で標準化すれば、業者が違っても全部つながってくる。そうすれば、日本中で、いろんな人が入ってくるが、動線そのものはひとつの標準でできる。

日曜報道THE PRIME
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今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論!「当事者の考え」が分かる!数々のコトバが「議論」を生み出す!特に「医療」「経済」「外交・安全保障」を番組「主要3テーマ」に据え、当事者との「議論」を通じて、日本の今を変えていく。
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