
早期の解散総選挙論が取り沙汰されている永田町。東京都知事選挙で小池百合子氏が圧勝し、4つの都議会議員補欠選挙も与党が全勝したことを受けて、自民党内からは「野党共闘がうまくいっていないうちに解散をするべきだ」という声も上がっている。一方で、早期の解散に警戒を強めているのが自民党と連立政権を組む公明党だ。

「まだブルペンに入っていない」
「国民の命を守ることが最大の課題であって、解散云々というのは全く国民の理解を得られない」

公明党の斉藤鉄夫幹事長は、7月6日に行われた記者会見でこのように述べ、早期解散に否定的な考えを示した。さらに山口那津男代表も「まだブルペンに入っている状況ではない」と発言するなど、早期解散には慎重な姿勢を強調している。

公明党がなぜ早期解散に慎重なのか。これには支持母体の創価学会の事情がある。創価学会は新型コロナウイルス感染防止のために集会などの活動を取りやめている。また組織の高齢化に伴い、選挙での支援に関する情報伝達のスピードが遅くなっているという課題を指摘する声もある。
そのため党関係者は「選挙準備には少なくとも半年は必要だ。もし秋の解散などになれば、とても間に合わない」と焦りを見せる。
早期解散に慎重なのに続々公認のナゼ
ただ公明党は一方で、選挙準備自体は着々と進めている。7月2日には、次期衆院選の二次公認として小選挙区で8人、比例代表で4人の擁立を決めた。
すでに一次公認で決定した東京12区の岡本三成氏に加え、神奈川6区に遠山清彦財務副大臣を新たに擁立するなど、公認候補を立てる方針の9の小選挙区の顔ぶれが揃った形だ。自民党からは「いくらなんでも(公認が)早いのではないか」と早期解散を見越したものだと警戒する声もあるが、公明党幹部は「公明党の票は自民党に入るが、自民党の票は公明党には入らない。圧倒的に自民党より準備に時間がかかる」と早めに公認を決めた事情を解説する。
また、創価学会の各地域の責任者によって構成される「方面長会議」も8日に開催し、今後の活動方針を確認した。10日から徐々に活動が再開される見通しで、選挙に向けた準備は着々と進められている。
「年末解散にお付き合いするしか…」
このように、早期解散に慎重論を唱える一方で、早期解散に備えるような動きも見せる公明党だが、その背景には党が抱える特有の事情がある。来年夏に行われる東京都議会議員選挙だ。
公明党にとって都議会議員選挙は、国政選挙並みに力を入れる特別な“本命”の選挙だ。それだけに都議選と衆議院選挙の時期が近づくと、支持母体の創価学会の負担増加になってしまい十分な支援体制が取れないため、できるだけ時期を離したいのが本音だ。

しかし今年中に解散総選挙を行わなかった場合、来年の都議会議員選挙と衆院総選挙の時期が近づく可能性が生じる。これを避けるため、年内解散に絶対反対とまでは言いづらいという事情も公明党内にはあるのだ。
ある関係者は「解散時期が後になればなるほど、政権が追い込まれていく。そうなれば、年末解散にはお付き合いするしかない」と語っている。
こうした事情を抱える中で、公明党幹部の動きも活発になっている。6月29日には、斉藤幹事長が麻生副総理と約40分間会談した。その中で斉藤氏は、今秋の解散を持論とする麻生氏に対して、「準備が間に合わない」と慎重な考えを伝えた。

翌30日には、太田昭宏前代表が安倍首相と約1時間にわたり官邸内で会談。また、7月1日には斉藤氏と菅官房長官も面会するなど、活発な動きを見せている。早期解散を巡り様々な憶測が飛び交う中で、自民党と公明党双方の駆け引きが注目される。

(フジテレビ政治部 与党担当 空閑悠)