東北を中心に、各地でクマによる被害が相次いでいます。

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10月19日、秋田県北秋田市で、クマが出没。午前6時40分頃、鷹巣小学校の目の前で、相次いで人間を襲う被害が発生しました。

被害に遭った2人はいずれも80代の女性で、1人は頭部から出血、もう1人は頭部に加え、顔面、右肩を負傷し、ドクターヘリで搬送されました。

住民を恐怖に陥れたクマ。しかし、襲撃はこれだけでは終わりませんでした。

女性らが襲われた小学校付近から直線で約700m離れた場所で、クマが女子高校生を襲撃。

悲鳴を聞いた人:
私のところの(洋菓子店の)前の通路を、若い女性がすごい「ぎゃーっ!」という声を出しながら走って行ったんですよ。今まで聞いたことのない声で若い女性が走っていったので、表へ出たらクマが出たということを別の人から聞いてびっくりして。

同じ個体かは不明ですが、クマは停留所でバスを待っていた女子高校生に襲いかかり、女子高校生は左腕をかまれ軽傷です。さらに付近にいた80代の女性も、頭部や肩を負傷したといいます。

午前11時ごろには60代の男性、さらに下校中に14歳女子中学生がクマに襲われてけがするなど、19日だけで北秋田市内では、6人がクマの被害に遭いました。

過去最悪のペース 全国で109人が被害

クマ被害は、岩手県でも。
19日午後2時ごろ、八幡平市の山林では、きのこ狩りに来ていた高齢の男女2人がクマに襲われました。

男性は、頭や手首に傷を負い、現場付近では女性の遺体が見つかりました。警察は身元の確認を進めています。

環境省によると、今年4月から9月までにクマによる被害に遭った人は、全国15の道府県で109 人。国の統計開始以来、過去最悪のペースとなっています。

なぜクマ被害が相次ぐのか?

なぜこれほどまでに、クマの出没が相次いでいるのか?

石川県立大学 環境科学科 特任教授 大井徹氏
石川県立大学 環境科学科 特任教授 大井徹氏

クマの生態に詳しい石川県立大学環境科学科特任教授・大井徹氏によると、出没が相次ぐ理由として、「どんぐりなどの餌の不作・凶作」があるといいます。
さらに、今年のクマの特徴として「餌への執着心が強く危険」であることが挙げられます。

――今年になって急に増えた理由は何かあるのでしょうか?
石川県立大学 大井徹氏:

他の要素としては、クマの分布拡大ですね。餌不足の年ではなくても、クマの分布がだんだん人里に向かって広がっているのです。それは人里にクマにとって住みやすい環境ができているからだと考えています。
(個体数が)増えているのではないかという研究者もいます。

――人里に降りてきているということは、人に慣れてしまっているということですか?
石川県立大学 大井徹氏:

そうですね、現在色々な地域で人間の生活圏とクマの生活圏が隣り合っているんですけども、そういった状況の中でクマの方が人工物とか、人の存在に慣れてきている。そういう地域もあると言われています。

遭遇しないための注意点と対処法

クマに遭遇しないために、「注意すべきクマの出没場所」を知っておく必要があります。

富山県がまとめている「ツキノワグマ出没情報地図【クマっぷ】」を見てみると、山と市街地の分かれ目に多く出没していることが分かります。

実はこれには法則性があり、クマは川に沿って出没しているといいます。川は遮るものが少なく、餌もあるため、市街地への侵入経路になりやすいのです。

――どんな川に気をつけた方がいいなどありますか?
石川県立大学 大井徹氏:

本来のクマの生息地は山ですが、山から市街地の中、あるいは集落の中を通過するように流れていく川、このような川については注意しなくてはいけません。
河川敷が広くて、藪が生い茂っている。クマの隠れ場所がたくさんあるような河川、そういう河川は注意しなくてはいけません。

――クマは人を見ると逃げるというイメージがあるのですが、どんな状況の時に襲われるのでしょうか?
石川県立大学 大井徹氏:

通常は至近距離で不意に出会うと、クマの方が人間に襲われると思って自分を守るためにまず攻撃をするんですよ。それで事故が発生します。
街中で、秋田で連続で何人も被害に遭われていますけども、これは街中に迷い込んだクマがパニックになって興奮状態になっているんです。そういった中で、やはり見るものみんな敵だということで、攻撃しているのだと考えられます。

クマ遭遇しないための対策としては、以下のものが挙げられます。

・餌になりそうな食べ物をしっかりと管理する
特に、バーベキューなどで生ゴミを近くに放置しない、袋に入れ持ち帰る。

・クマに人間の存在を知らせる
山道などを歩くときは、クマよけ鈴を身につけ、笛や声で音を出す。

万が一クマに遭遇した場合、決して背中を向けて走ってはいけません。
クマを観察し、興奮していなければゆっくりと後退して距離を取ってください。襲ってきた場合は、両腕で頭と顔を覆い、うつ伏せになって急所を守ることが大切です。

石川県立大学 大井徹氏:
決して背中を見せて走ってはいけません。犬が走るものを追いかけるのと同じように、クマの攻撃性を起こして事故に至ります。
その場所が山の中でしたら、山の中は木の根っこが出ていたり、非常に地面がラフですよね?走って逃げると転んでけがをしてしまうことになってしまいます。また、崖から落ちることになってしまうかもしれません。
クマの様子をよく見て、興奮して迫ってくる様子がなければ、後ずさりをしてゆっくりとクマから離れるということが必要です。そこが住宅地ならば、家の中、車の中に避難するということが必要だと思います。

――クマ出没警報が出ている場合、入山を控えた方がいいのでしょうか?
石川県立大学 大井徹氏:

警報が出ている地域は限定されているとは思います。なるべく控えた方がいいかと思いますけども、どうしても入る場合には複数で入ったり、あるいはクマスプレーというのが市販されています。中に唐辛子エキスが入っていますけども、これは効果があります。
使い方にちょっとトレーニングが必要ですけども、そういったものも携帯したらいいかと思います。
(めざまし8 10月20日放送)