毎年のように大雨による浸水被害に悩まされている、新潟・三条市。

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市は、排水路にたまった雨水を一時的に貯めておく「調整池」を興野公園の地下に造ることを計画し、2021年11月から工事を開始しました。

25mプール7個分の雨水を貯めておける調整池の造成工事は、地下7mにまで達する大規模なものでした。

1年4カ月にわたって行われた工事。しかし、この工事がとんでもない事態を引き起こしてしまったのです。

塀や家屋にひび割れ被害…傾いてしまった家も

上から下まで、パッカリと割れてしまった塀。

塀が大きくパッカリと分かれてしまっている
塀が大きくパッカリと分かれてしまっている

最大で5cmほど離れてしまっている部分もあります。

住宅が被害に遭った男性:
びっくりしましたよ、割れてきたからね。「え~!?」っと思って。
見ていただくと分かる通り、塀が向こうに斜めになって下がってるでしょ?引っ張られて、割れて。うちの下水管まで外れちゃって。

下水管も外れて、大きな隙間が
下水管も外れて、大きな隙間が

別の住宅でも、塀の至るとこにひび割れが…。

塀にできた大きなひび割れ
塀にできた大きなひび割れ

住宅が被害に遭った女性:
ここからずっとひびが入って。ずっと下までつながってます。土台のとこまでいってますよね。向こうにもひびが入ってるんです。ここだけじゃなくて。

一カ所ではなく、複数箇所にひび割れが入っている
一カ所ではなく、複数箇所にひび割れが入っている

被害は塀だけではありません。女性が案内してくれたのは、家のお風呂場。

住宅が被害に遭った女性:
(風呂場の壁を指さして)ここなんです、ひびがずっと入っていて、目視だとこの辺まで見えるんですけど、触るとずっと下までいっているんです。

窓の角から、下までひび割れが続いている
窓の角から、下までひび割れが続いている

貯水池の工事が始まって以降、周辺の住宅に発生している“ひび割れ”。

中には家が10cm近く傾いてしまったという人も。
家の中で、ビー玉を転がしてみると、全て貯水池のある公園側の方向に転がっていきました。

ビー玉を転がしてみると、貯水池のある公園側に勢いよく転がっていく
ビー玉を転がしてみると、貯水池のある公園側に勢いよく転がっていく

住宅が被害に遭った女性:
まな板とか洗ったときに、水が公園側にどんどん流れていったりとか。あと調理していても、ザルとか置いていても、出た水がみんな公園側にたまっていくっていう。
本当だったら、洗い場の方に水が流れていくつくりになってると思うんですけど。こんなになってるの知らなくて。

調理場で水を流すと、洗い場とは逆の公園側に向かって水が流れていく
調理場で水を流すと、洗い場とは逆の公園側に向かって水が流れていく

現在、公園の周囲にある8軒の住宅で、「ひび割れ」や「傾き」などの被害が起きているといいます

「地盤の弱さ指摘されていた」市の今後の対応は?

なぜこのような被害が起きてしまったのでしょうか?
取材を進めると、この土地の脆弱性は、工事を行った市の想定を上回るものだったことが見えてきました。

30年以上地域に住んでいる男性:
あの辺(公園周辺)は全部、畑だったの。以前は、(三条市)田島大字鬼谷内。
“谷内”っていうのは、昔から沼地のことを“谷内”って言ったんです。いわゆる沼地だったんだね。

そう話すのは、この地域に30年以上住んでいる男性。
興野公園がある辺りには、かつて田んぼや畑が広がっていたといいます。

昔の興野公園付近の写真 田んぼが広がっているのが分かる
昔の興野公園付近の写真 田んぼが広がっているのが分かる

地元の人は、田んぼや沼地など地盤が弱いことに由来する「谷地(やち)」に“鬼”がつくほどという意味で、「鬼谷地」と呼んでいるのです。

では、なぜそんな場所に、調整池を造ることにしたのか。市の上下水道課に話を聞くと。

三条市建設部上下水道課 小山正幸 課長:
地形的に低い位置にあると同時に、幹線の水路の上流部に位置しているということから、浸水対策に最大の効果をもたらす位置だ、ということが結果で出まして。
地元の説明会の時にも、住民の方から地盤の弱さについて、ご指摘を頂いておりました。設計段階におきまして、ボーリング調査をいたしまして、地質の構成や特性、強度を確認しながら、工事にあたりましては十分に検討して実施したところでございます。

市は、地盤の弱さは認識しており、それに合わせた対策をしていたといいますが…。

三条市建設部上下水道課 小山正幸 課長:
局部的に軟弱層が存在したということで、そこまで把握できなかったのが現状でございます。家屋などに変異等が生じた際は、これまで同様に誠意を持って対応すると共に、工事の因果関係を調査しまして、工事に起因する被害があれば、責任を持って対応してまいりたいと考えております。

市は調査結果を行っており、工事との因果関係が認められた場合には、補償する方針ですが、住民は不安を隠せません。

住宅が被害に遭った女性(至る所にひび割れ):
見える所はいいんですけど、目で見えない所の(被害の)方が怖くって。

住宅が被害に遭った女性(家が傾いた):
この先、10年、20年後に、何か不具合が起きるのではないかという、不安とか恐怖はあります。
(めざまし8 10月18日放送)