段ボールで大量に購入したみかん。1つが腐ったことで、周りのみかんまで腐らせてしまった経験はないだろうか?

そんな中、このような柑橘類の共腐れの防止が期待できる新資材のフィルムが開発された。愛媛県水産研究所果樹研究センターみかん研究所と三井化学が共同開発したのが、「ポリオレフィン系無孔フィルム」というものだ。

現在、青果物の鮮度を保つために、ポリエチレンフィルム等に微細な穴を開けて包装内のガス濃度を調整する「微細孔フィルム」などが使われている。今回開発された「ポリオレフィン系無孔フィルム」の特徴は、穴を開けずにガス透過できること。これにより、周りの果実にカビが広がるのを防ぐことが期待されるという。

「紅まどんな」をポリオレフィン系無孔フィルムで包装(画像提供:みかん研究所)
「紅まどんな」をポリオレフィン系無孔フィルムで包装(画像提供:みかん研究所)
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みかん研究所では、包装する資材を比較する試験を実施。愛媛県特産の高級柑橘「紅まどんな」を新資材「ポリオレフィン系無孔フィルム」と既存の資材「微細孔フィルム」と新聞紙でそれぞれ包装し、約20日間室内で常温保存したという。

その結果、「果皮の赤味」は、新フィルムが他のフィルムに比べ、濃くなる傾向を確認。「食味」や「香り」の評価も他のフィルムに比べ、同程度からやや高いことを確認したとのことだ。また、「温州みかん」でも同じ試験を行っており、同様の結果が出ているという。

「紅まどんな(愛媛果試第28号)」を包装した際の包装資材の比較(画像提供:みかん研究所)
「紅まどんな(愛媛果試第28号)」を包装した際の包装資材の比較(画像提供:みかん研究所)

つまり、新資材の「ポリオレフィン系無孔フィルム」は、既存の「微細孔フィルム」と比べ食味や香りが同程度からやや高く、これに加え、穴を開けないため共腐れの防止も期待できるということだ。今後は、貯蔵・流通中の共腐れの防止が期待できるため、東南アジアなど気温の高い地域に向けた輸出果実への活用の検討も進めるという。

柑橘類の共腐れが防止できるのであれば、段ボールで大量に買う消費者にとってもありがたい。また、海外の輸出の際にも活躍できそうだ。

では、今後、このフィルムをどう活用していくのか?また、家庭で柑橘類を保存する時はどうしたらよいのか? 愛媛県のみかん研究所の研究員に詳しく話を聞いてみた。

穴を開けない状態でガス透過

――新資材のフィルムの特徴は?

青果物の鮮度保持においては、ポリエチレンフィルム等に微細な穴を開けて包装内のガス濃度を調整する「微細孔フィルム」の活用が進んでいます。今回開発したフィルムは、穴を開けない状態でガス透過できることが特徴になります。


――なぜ開発した?

食品保存用として開発されたものをかんきつへの鮮度保持に用途拡大したものです。


――どんな柑橘類に使われるの?

保存期間の延長や流通中の品質低下防止など、様々な品種での活用方法について検討しているところです。

他の青果物に応用できる可能性も

――将来的には、他の果物や野菜にも応用できる?

他の青果物への活用について検討したことはありませんが、品目によっては応用できる可能性もあると思います。


――ちなみに、家庭で柑橘類の鮮度を保つ方法は?

柑橘類の鮮度を保つには、果実の呼吸をできるだけ抑えることが重要で、その方法としては低温条件での保存が有効です。また、果実を乱雑に扱うと呼吸が活発になり、腐敗しやすくなるため、保存する際は丁寧に取り扱うことも大切です。


――最後に、これから食べて欲しい愛媛県のおすすめの柑橘類は何?

愛媛県が開発した“紅まどんな”と“甘平”は、それぞれ特徴的な食感と美味しさを持っており、ぜひ一度は食べてほしい品種です。また、この2つを掛け合わせて育成した“紅プリンセス”は、これから生産量が増えていく注目品種です。

紅まどんな(画像提供:みかん研究所)
紅まどんな(画像提供:みかん研究所)

これからの時期、みかんを食べる人も多いだろう。柑橘の保存については、低温条件での保存が有効で、短期間の保存であれば冷蔵庫、長期間の保存であれば日の当たらない涼しい場所で保存するのが良いということだ。是非とも参考にしていただきたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。