10月10日、埼玉県・自民党県議団の田村琢実団長が、自民党県議団が提出した、「虐待禁止条例の改正案」を取り下げることを明らかにしました。

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4日に県議会に提出された改正案は、「児童を住居 その他の場所に残したまま外出すること その他の放置をしてはならない」とし、小学校1年生から3年生だけでの登下校や子供だけで公園で遊ぶこと、そして、留守番も放置に当たり「虐待」だとしていました。

さらに、子どもだけで「おつかい」に出かけること、親が家に子どもを置いてのゴミ出しも禁止に。罰則規定は無いものの、県民が違反者を見つけた場合、速やかに通報するなどの義務もあるのです。そんな改正案が、提出からわずか1週間で、“スピード取り下げ”に。

その背景には、殺到した「反対の声」がありました。

全国で報道後 反対の声が高まる

「めざまし8」も、6日の放送で取り上げた改正案。Yahoo!のリアルタイム検索のグラフを見てみると、全国的に報道されるようになった6日を境に、「虐待禁止条例」や「埼玉県条例」などのキーワードでの投稿数が跳ね上がっているのが分かります。

10日午後11時時点での投稿数の推移
10日午後11時時点での投稿数の推移

10日までの累計投稿数は1万3006件。そのうち、98%が改正案に反対する「ネガティブな投稿」だったことが分かりました。

埼玉県にも、反対の声が殺到。これまでに県に寄せられた反対意見は1005件。賛成意見はわずか2件だったといいます。

さらに、さいたま市PTA協議会が、改正案に反対するオンライン署名を募ったところ、約10万の署名が集まりました。

埼玉県自民党県議団 田村琢実団長
埼玉県自民党県議団 田村琢実団長

多くの反対の声を受け、改正案を取り下げた自民党県議団。10日の会見で田村団長は「説明が十分ではなかった」という旨の言葉を繰り返しました。

埼玉県自民党県議団 田村琢実 団長:
私の言葉足らずにより県民の皆様もとより、全国的な不安と心配の声が広がり、多くの県民団体等より県議団に対しまして、様々なご意見を頂戴いたしました。
議案の内容等につきましては、私は瑕疵がなかったというふうに感じておりますけれども、説明が不十分であり、その不十分さが広く伝わったことによって国民や県民の皆様方にご心配や、不安が広がったと。

団長の言葉に違和感…保護者感覚との“乖離”

めざまし8のスタジオでも、田村団長の「言葉足らず」「瑕疵がなかった」という言葉に対して、疑問の声が上がりました。

金子恵美氏
金子恵美氏

金子恵美 氏:
まず「言葉足らず」どころか、瑕疵とかそれどころではなくて、趣旨がずれていて、子供の安全を守るという理念は正しいんですけども、これで虐待となったら、もう私なんかは埼玉県民だったら完全に条例に引っかかっているという話ですよね。
そういう保護者感覚と乖離(かいり)というところが、今回の条例案が反発を招いたということに気づいていないのが残念ですよね。

金子恵美 氏:
瑕疵だとか言葉足らずといっている段階で。これを、県民の皆さんのお声を聞いて政策立案したのか、自分の感覚で立案したのか、いずれにしても今の価値観には合わない。
やはりもっと受け皿、学童保育とかも含めて、放課後の居場所づくり等をしっかりと充実した上でならば、この条例の検討の余地はあると思うんですけど、そこをなくしてこの条例案というのは…、当然の反発だと思います。

若狭勝 弁護士:
そもそも論をいうと、「虐待」という言葉の捉え方が間違っていると思うんです。虐待というのは、子供への愛情がない形で放置したりすると虐待ということになり得ますけども、子供に対して愛情を注いでいる。そういう状態において、留守番をさせざるを得ないとかいうときに、虐待という言葉は絶対にあり得ないんですよ。そもそも捉え方が全然できていないというところに根本的な問題、「欠陥」が…「瑕疵」があると思いますね。

埼玉県は、待機児童の数が東京に続き全国2位。子育て支援に対する環境が整っていない中での改正案でもあったため、反発も大きかったとみられます。

パトリック・ハーラン氏
パトリック・ハーラン氏

――海外では法のあり方も違いますよね?
パトリック・ハーラン氏:

アメリカには同じように虐待を定める条例だったり、法律があるんですけども、それでもアメリカも行き過ぎだと思うんです。それに比べて、こんなに治安が良い日本が、こういう「虐待」と言い切る条例が必要かどうかというと、全くいらない。逆に親に失礼だと思うんですよ。
僕は母子家庭に育って、鍵っ子だったから、一人で留守番することが何度もあった。でも虐待された記憶は一回もないです。自分の子供も、一人で友達と登校させることができるこの日本はありがたいし、素晴らしいと思う。近くの公園で遊んでいてもらうことができるこの日本。子育てに向いている国だと思っていましたが、そういう行為が「虐待だ」と言われ始めたら、ますます育てづらい国、生みづらい国になってしまうから、撤回して当たり前ですよ。

パトリック・ハーラン氏:
むしろ、こんな反対意見が出てくることを予想していなかったという議員さん、すごいと思います。実際に、シングル家庭、共働き家庭、他にも事情を抱えている家庭で、子供に24時間つきっきりはいられない方もいらっしゃることを、想像できなかったのか。議員さんの思っている子育てと、リアルの子育てがこんなに乖離しているんだなと。

小室瑛莉子アナウンサー:
ズレているといいますか、もっと違うところでのサポートを期待したいのに、こういうものが出てくると、やはり政府と我々の声がズレているのかな?ちょっと不安に思うことはありますね。

――今回撤回されたことで、ある意味で国民の声が届いたということについては?
金子恵美 氏:

政策立案の段階で、本来多くの市民、県民、国民の声を聞いた上で政策立案ということが前提だと思うのですが…。国会・国政もそうですけども、今回のような地方議会に対しても、是非市民、県民の皆さんに注目して頂きたいと思いますし、選挙の時にはそういう行動を取ってもらいたいです。
(めざまし8 10月11日放送)