ペットも“被災者”

平成最悪の豪雨災害となった「平成30年7月豪雨」。
復旧へ向けさまざまな課題山積の中、犬や猫などのペット問題に直面している被災者も少なくないだろう。

被災した際に行方が分からなくなったケースや、自宅での生活が困難になり、避難所暮らしを強いられる際にどうするべきか迷うケースなどもあるだろう。
飼い主にとって大事な家族の一員であるのはもちろんだが、被災した状況で何を優先すべきか、そして避難所での集団生活の場合、衛生面やしつけ、食料の問題など、ペットが抱える課題は少なくない。また、避難所によっては、ペット不可のところもある。
 

 
 
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災害緊急ペット相談窓口を開設

SNS上ではペット同伴可能な避難所の情報や、ペット専用の義援金案内などを伝える投稿が広がっているが、こうした中、広島市のホームページに「災害緊急ペット相談窓口」開設の告知が掲載された。

具体的な相談項目としては、
・行方不明動物の相談
・飼い主不明動物の保護情報等の提供
・ペットの一時預かり先の相談
・その他ペットの飼養全般の相談

この4項目について、電話・FAX・メールで問い合わせが可能だという。

広島市動物管理センターによると、通常時においても、ペットに関する相談窓口はあるが、豪雨災害を受けて、市民により分かりやすいように「災害緊急ペット相談窓口」という名称で、ホームページに掲載したとのことだ。

広島市ホームページより
広島市ホームページより

行政も取り組んでいる被災時のペット問題。
では、ペットを飼っている人は、いざ被災した時にどう行動すればいいのか。また、普段からどういう備えをしておけばいいのか。一般財団法人ペット災害対策推進協会に聞いてみた。
 

ペットのために、今からできること

ーーペットを飼っている人が、もし被災した時のために今からできることは?

ペットに迷子札・マイクロチップ・鑑札・狂犬病予防注射済票などを装着し、飼い主の氏名や連絡先などが把握できるようにしておくことが大事です。

飼い主の名前や連絡先などが特定出来ない首輪のみの装着は、所有者明示としては不十分です。また、マイクロチップを装着した場合は、日本獣医師会などに、マイクロチップ番号と連絡先などを登録しておくことが必要です。
そして、普段から災害時に必要となる備えをしておきましょう。


ーー被災したら、まずペットを守るためにすべきことは?

発災時に、飼い主が自身の安全を確保した上で、災害の状況を見極め、より安全な避難場所を確保するため、ペットと共に同行避難をとることが、ペットを守るための第一歩です。

自治体によっては、堅牢なマンションなどでの在宅避難を推奨しているところもあるので、前もって、それぞれの自治体における避難のあり方を確認しておくことが大事です。
また、避難が必要となる災害により、ペットと同行避難する必要が生じることを想定し、平常時から、災害に備えたペット用備蓄品の確保や、避難ルートの確認、ペットの同行避難に必要なしつけや健康管理を行うことも飼い主の責務です。

これらの内容は、環境省が昨年作成した「人とペットの災害対策ガイドライン」にも記載してあります。当協会はそのガイドライン等を基に、自治体や獣医師会が動物の飼い主に対して、同行避難や避難所で他の避難者の迷惑にならないような、しつけ等に関しての講習を行っております。

 

環境省ホームページより
環境省ホームページより

ーー豪雨被害を受けて、多く寄せられている相談は?また、具体的な活動は?

被災動物救護に関しては、基本的には被災地の自治体や獣医師会で構成される「現地動物救護本部」が対応することになっております。

今回被害が大きかった広島県や岡山県では、避難所に連れてこられた動物へのペットフードやペットシートなどの配布が中心に行われていると聞いております。また、避難所に入れなかった動物の一時預かりの要請も多く寄せられ、動物病院等で預かりを行っているとも聞いております。

当協会は、これらの現地動物救護本部からの要請に基づく、ペットフードやペットシートなどをお送りする活動を行っております。


ーー動物同伴可能な避難所と不可能な避難所があるのはなぜ?

避難所には、動物嫌い・動物アレルギーの方もおられ、避難所を管理する市町村が同伴可能と認めたとしても、避難者からの反対があり、結果的に同伴できないこともあります。
また、飼育動物自体も適正なしつけ等ができておらず、鳴き声や体臭等で、避難者に迷惑をかけることもあり、これが同伴できない要因ともなっています。

ペットを飼っていない被災者は、避難所でのペットの同伴について理解を示していただくことが重要となります。しかし、前述のように、動物アレルギー・ペットの不適切な飼い方・ペットの感染症問題など、多くの課題があることから、なかなか、難しい問題だと考えています。

 

 
 

ペットのストレスを軽減させるために

避難生活では飼い主と一緒であっても、慣れない環境でペット自身がストレスを感じてしまうことは容易に想像がつく。
そこで、前述の環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」から、ペットのストレスを軽減させるためにできることをご紹介する。

【普段の備え】
発災時に飼い主がペットを連れて避難しようとしても、ペットがパニックになり、いつもと違う行動を取る可能性がある。そのため、普段からキャリーバッグなどに入ることを嫌がらないことや、犬の場合は「待て」「おいで」などのしつけをしておく必要がある。

避難所では、人や他の動物を怖がったり、むやみに吠えたりしないこと、ケージやキャリーバッグに慣れていること、決められた場所で排泄ができることなどが必要になる。これらのしつけは、他人への迷惑となる行動を防止するとともに、ペット自身のストレスも軽減することにつながる。

 
【被災時】
避難所や動物救護施設では、ペットが体調を崩し、下痢や嘔吐、食欲不振などのストレス兆候を示すことが報告されている。また、他の動物との接触が多くなることから、感染リスクも高くなる。
そして、平時とは異なった反応(攻撃行動など)を示す可能性がある。日常生活の中では問題のない接触が、咬傷やひっかき傷に繋がる可能性が高まるため、十分に注意することが必要である。

また、犬や猫などの動物がひと所で生活することは、ストレスを増大させる原因となるため、可能な限り動物を区分して飼養することが望ましい。飼い主が相互に協力して、飼養スペースの衛生管理や、ペットを適正に飼養するように促す。
そして、車中避難の場合はペットも熱中症になる恐れがあるため、十分に注意する。
 

いざというときにペットの命を守れるのは飼い主だけ。多くの課題はあるが「家族の一員であるペットに何ができるか」を普段から考えておくことも大切だ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。