家族が亡くなった後の手続きは、住民票の変更や国民健康保険の資格喪失届など多岐にわたり、時間がかかるうえ、遺族に負担がかかるものだ。
こうした中で三重・津市は8月1日、死亡の届出に伴い、必要となる26種類の申請・手続きをワンストップで受け付けるサービス「おくやみ手続きサポートデスク」を始めた。
サポートデスクでは、おくやみ手続き専門の「おくやみコンシェルジュ」が常駐し、予約の電話の際に亡くなった人の必要な手続きや持ち物を案内し、来庁日には亡くなられた人の情報を印字した申請書などを準備する。
そのほか、相続手続きで必要となる戸籍謄本などの証明書の申請サポートや市役所以外の手続きについても案内やサポートを行う。
これまでは「すべての手続きを終えるのに半日かかった」ケースもあったそうだが、このサービスを利用すると、「死亡の届出に伴い、必要となる各種の申請・手続き」が来庁から終了まで約60分に短縮され、遺族の負担を軽減できるとのことだ。
津市によると、“おくやみ手続き”において「どんな手続きが必要なのか分かりづらい」「多くの書類に何度も同じことを記入する必要がある」「本庁では多くの窓口を回る必要があり、時間がかかる」という課題があったという。
では、手続きにかかる時間を「半日→約60分」に短縮するために、どのような工夫をしたのか？また、このサービスを利用した遺族はどのような感想を話しているのか？
三重県津市の担当者に“時間短縮の理由と利用者の感想”を聞いた。
「すべての手続きを終えるのに半日かかった」
――どのような思いがあってこのサービスを始めた？
死亡に関する手続きは多岐に渡り、遺族にとって必要となる手続きが分かりづらく、手続きごとに各担当課窓口を回ったり、多くの書類に何度も同じ情報を記入する必要があったり、時間や労力など負担が大きいと感じられていました。
ご遺族の負担を軽減すると同時に各担当課の業務効率化と窓口混雑緩和を図ることを目的としてワンストップ窓口の開設に至りました。
――このサービスが始まる前は、死亡の届出に伴う申請や手続きにどのぐらい時間がかかっていた？
それぞれの状況により異なりますが、「以前はすべての手続きを終えるのに半日かかった」「必要書類を取りに帰るため、何度も家と往復した」といったお話を聞きました。
――なぜ、そんなに時間がかかっていた？
ご遺族自身もどんな手続きが必要であるかわからないため、各担当課で亡くなった方の情報を聞き取り、手続きの有無を調べたり、職員も他課での必要な手続きがわからないため、スムーズにご案内ができなかったりしたことが挙げられます。
また、混雑時はそれぞれの窓口で番号札の発券を受け、待ち時間が発生するため、さらに時間がかかってしまっていたことが挙げられます。
「半日→約60分」を可能にした工夫
――「約60分」に時間を大幅に短縮できた理由は？
まずは死亡者情報をリスト作成し、関係各課が事前に手続きの有無をお調べして、情報共有を行っています。お電話いただいた時点で、手続きの有無や持ち物について、ご案内が可能となりました。その後、来庁予約があると、予約者情報を関係各課が確認し、事前に申請書等に死亡者情報を印字して「おくやみ手続きサポートデスク」へ提出します。
来庁当日には準備した申請書等の記入支援をおくやみコンシェルジュが行いますので、時間短縮が可能となりました。
――遺族にこのサービスがあることを、どのタイミングで伝える？
死亡届の届出時に「おくやみハンドブック」の冊子をお渡ししています。その中で各種死亡に関する手続きのご案内と、同時におくやみ手続きサポートデスクのご利用についても掲載しています。
――利用件数と利用率は？
9月19日現在で114件です。8月は45％、9月は57％で、1日7枠のうち平均3～4枠をご利用いただいています。
――利用した遺族はどのような感想を話している？
「以前は半日かかった手続きが１時間で終わって助かる」「予約の電話の時に必要な持ち物を確認できて、よかった」といった感想をいただきました。
「少しでもご負担を軽減できれば」
――「おくやみコンシェルジュ」は何人いるの？
窓口の対応は1名ですが、もう1名が電話予約や必要書類の確認など、内部事務を行います。
――担当者は、自分の仕事についてどのようなことを話している？
大切な方が亡くなられ、さみしい気持ちや不安な気持ちの中、ご遺族はたくさんの手続きが必要です。ご遺族のお気持ちに寄り添い、サポートすることで、少しでもご負担を軽減できればと思います。
遺族の負担を減らす三重県津市の「おくやみ手続きサポートデスク」。今後、多くの自治体に広がることを期待したい。
