2023年の開山期間中、富士山に登った人は約22万1000人で前年の3割増、コロナ禍前とほぼ変わらないまでに回復した。登山客の増加は周辺の市町にもビジネスチャンスをもたらしたはずだが、頑なに一日3組限定 チェックインは午後6時からというおよそ商売熱心とは思えないゲストハウスがある。その理由を探ってみたら・・・。
チェックインは午後6時から、3組限定
9月10日開山期間を終えた富士山。2023年の夏は4年ぶりに新型コロナの制限がないことから、大勢の登山客が訪れた。
登山客の増加は麓の宿泊施設にも好影響をもたらしたようだ。

影山大介さん:
は~い、ご予約のお名前は?飲み屋街や食べ物屋さんも多いので、何か困ったことや聞きたいことがあったら私になんでも聞いてください
訪れる宿泊客がリラックスできるよう気軽に声をかける影山さん。
夏山シーズン中は ほぼ満室となり、オーナーの影山大介さんは日々、対応に追われていた。
ゲストハウス「ときわ」は、1日3組限定。チェックイン開始も午後6時からだ。
なぜ、こうしたスタイルかというと、実は影山さん日中は介護福祉士として介護施設で働いているからだ。
祖母の介護をする母を見て育ち、福祉の道を志した影山さん。人の役に立ちたいと20代で介護福祉士の資格を取得、地元の施設で働きだした。

影山さん:
富士山を歌いますよ、1、2、3、はい 頭を雲の上に出し~
人を喜ばすことが好きなことから介護の現場でも得意のギターを弾いて、利用者と一緒に歌う。
こうした影山さんの働きぶりに「本当に細かいことに気を付けてくれて、気配り、心配りのできる人」と利用者からも好評だ。
義理の母の一言がきっかけ
そんな影山さんに転機が訪れたのは、介護福祉士として働き10年余り経った30代半ば。
妻の実家の処分について家族で話し合う中、義理の母から出た一言がきっかけだったと言う。

影山大介 さん:
宿泊業が合っているという話を義理の母がしてくれて、そこが大きなきっかけ、そこから始まった。介護も宿泊業も人に対するサポートが基本で、そこは介護で培ってきたので、できるなっていう自信はありました
2014年に新しいことにチャレンジしようと介護施設を退職し、妻の実家を借りる形でゲストハウスをオープン。
影山さんは「素泊まりであっても、いろんな部分で目配り、気配りというか、そういうところは介護にも通じる部分だし、大切にしています」と話す。
宿泊客とのコミュニケーションを大事にしながらリラックスできる居心地の良い空間づくりで、人気の宿泊施設となった。
コロナ禍の経営危機を乗り切るために
しかし、2019年にそれまで順調だった経営が一変。
「20年、21年は本当にほぼお客さんがいない状態、1カ月売り上げがないという時もあった」と、影山さんは当時を振り返る。
新型コロナの流行で宿泊客が激減。生活していくために2020年、ゲストハウスを続けながら、以前勤めていた施設に介護福祉士として復帰した。

影山さんは「(施設は)すぐに受け入れてくれて、『いつでもおいで』みたいな形で受け入れてくれたことは非常に感謝している」と振り返る。
2足のわらじを履いてはや3年。影山さんの仕事は宿泊客を乗せた早朝ドライブで始まる。夏山シーズンは、富士宮口2合目のバス乗り場まで送るそうだ。
そして日中は介護施設で働き、夕方の帰宅後 、洗濯物の取り込みや部屋のチェックをしてお客さんを迎える。
「二つで一つの仕事という感覚」
「本当に僕が好きな仕事をやっているので、全然疲れはない」と影山さん。なかなか休みも取れないが、これからも、2足のわらじを履き続けるそうだ。

影山大介さん:
(介護施設の)利用者、宿泊者の両方に求められている中で、どっちかを辞めるというのは考えていない。2つで1つの仕事という感覚でいるので。周りの人に感謝しながら、この宿を守って、今までお世話になった介護施設のみなさんを少しでも手助けできるようにして、人生を楽しんでいきたい
新型コロナがきっかけで始めた2つの仕事。
2つの仕事が影山さんにとってかけがえのない支えであり、人生の楽しみとなっている。
(テレビ静岡)